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父と娘の珍介護道中(日記的エッセイ2010~2022) 時々、母のこと、故郷のこと、自分のこと EP7

エピソード7
魔法の注射があればいいのに

2011-05-08

父にかいぃかいぃができてたので、皮膚科の先生に往診をお願いし、今日はその立ち合い。

早めに着いたので、父が毎日書いている日記を読む。
日記を書いてるってことはそれだけ気力があるってこと。
うれしく思いつつ、読み進めると、数日前の記述にギョッとする字があった。
「苦悶式に誘われた」と。

父が今いるところではデイ・サービスもやっていて、「公文式」の計算などの会もあって、それに誘われたらしい。
それが、なんで、よりによって、苦しい、悶える、式なの?と、
もうツボにハマッて大爆笑。しばらく涙が出るくらい笑ってしまった。

父も「そっかぁ。そんな字を書いてた?」と、バカ笑いする私につられて、大笑い。本当に久しぶりに、心から父が笑っている姿を見て、うれしくなってまた大笑いしました。
笑うって大事だね。

夕方、馴染の皮膚科のお医者様が診に来てくれた。
父の話をよく聞いてくれて、あくまでも優しい素敵な先生です。
で、病名は、貨幣状湿疹。

人間の体は油分とアカで守られているのだけど、洗い過ぎると(特にお年寄りはもう油分が少ないので)、皮膚がむき出しになっていまい、
そこに雑菌が入って、かゆみの原因になり、なかなか治らないのだそう。
そういう箇所が、まさに小判型になって現れるのが、名前の由来だそうです。

「だからね、お風呂に入るときは、脇の下とかに石鹸の泡をつけてね、洗い流すだけでいいんですよ。一番よくないのは、石鹸もつけないで、擦り洗いすること。お風呂に入れないホームレスの人とかは、絶対ならない病気なんですよ」と、先生はおっしゃり、父も納得。
知ってる先生に診ていただいたという安心感もあって、
再びいい笑顔を見せていました。

こういった貨幣状湿疹は、ヘンな市販の薬とかをつけても治らないのだそう。
専門の先生とのコミュニケーションは、とても大事だなと痛感しました。

2011-05-21

父はまた右足の痛みがヒドくなっているようだが、気持ちは元気のよう。
日記の分量がだいぶ増えていた。
ベッドから歩行器までの短い距離も、以前は車椅子を使っていたが、
昨日はなんと、しっかり手を振って歩いて到達。
たった数歩のことだけど、まったく歩行不能になっていたお正月の頃に比べたら、劇的な進歩。
思わず、「お父さん、スゴいね。よくなったね。涙が出ちゃうよ」と口にしておりました。安心して夕方帰宅。

2011-06-12

昨日は父を1カ月に一度通っている病院へ。
二度目の圧迫骨折で、昨年暮れから一時歩けなかったけど、
積極的にリハビリに取り組んでいることもあって今ではだいぶ回復し、
歩行器で少し歩いたり、トイレでのズボンの上げ下ろしを手すりを使わずに自立してやることが可能になっている(昨日これには感動しました)。
でも、痛みがなかなかとれずに本人ひどく悩んでいる。

痛いと気持ちが落ち込むので、なんとかしたくて、
月に一度、仙骨ブロック注射というのものを打ちに行っている。
でも、これも徐々に効果が薄れてしまうよう。

前回は弟が付き添ったので私は直接耳にしてないのだけど、
「別の注射がある」というようなことを先生が言った、と、父は言う。
私も少し期待して来たのだけど、父が先生に注射がもうあまり効かない話をし、「何か別の方法があればお願いしたい」と言ったところ、
「痛いのは注射では治らないんだよね。もう一度レントゲン撮ってみようか」と、すげない返事。

結果、「圧迫骨折を起こしたところがさらにつぶれてきて痛みが出てるんだろうね。でも、痛いのは注射じゃ治らないよ。ブロック注射は続けてると、骨がもろくなっちゃうしね」と、毎度のお話が繰り返されるだけでした。
結局「別の注射」というのは、骨粗鬆症を改善するための注射ということだったらしい。なので、それを打ってもらうことに。

すぐに痛みに効果が出る注射を期待していた父は本当にガッカリです。
「痛みがなくなる魔法の注射みたいなのがあればいいのにねぇ」と、私が慰めにもならないことを言うと、
「ないんだねぇ。痛いのとはつきあっていくしかないのかねぇ」と、父はため息。

ケアハウスに戻ると、ドッと疲れが出たようでした。
病院に行って具合が悪くなるとはよく聞くけど、高齢者は特にそうだと思う。
でも、やはりお医者様にはすがりたいんですよね。
ベッドで少し休みながら、父は気持ちを少し切り替えたようで、
「まぁでも、痛み止めもあまり飲まないようにして、お父さん、頑張るよ」と言ってくれた。

本人は自分がずっとずっと、いつまでも具合が悪いように感じているようです。
なので、今年のお正月の歩けない状態からの驚異的な回復ぶりを時間軸でたどり、「自分では気づかないかもしれないけど、1週間ぶり、一カ月ぶりに会うと、またよくなった、またよくなったって、みんなビックリしてるんだよ。日柄のものだから焦らないで、自分の治癒力を信じて頑張ってね」と励ましてきました。

お父さん、ファイト〜〜!!

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