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父と娘の珍介護道中(日記的エッセイ2010〜2022) 時々、母のこと、故郷のこと、自分のこと EP8

エピソード8
父娘による「花」の大合唱

2011-06-23

介護保険の切り替え診査に立ち合うためケアハウスへ。
審査にいらした方が、75歳以上と見受けられる女性だったので、ビックリ。
お歳を召されてから、資格をとられたんでしょうね。
本当に日本は高齢化社会なんだなぁと実感しました。

2011-06-30

午前中、東名ぶっ飛ばしーので、実家&父のケアハウスへ。
このところ暑いので、下着の替えや夏のパジャマ、タオルケットなどを届けて、
ついでに明後日行く病院の受付に必要な保険証や診察券を預かってきた。
なぜかと言うと、すごく人気の先生なので、待ち時間がハンパない。
父には相当の負担になるので、まず私が受付をして、
何時くらいに父を連れてくればいいかを看護師さんと相談してから、
父を運ぶという段取りなのです。

父の日記(家族への連絡帳みたいなもの)をのぞくと、字が力強くなっていて、文章量もけっこうある。元気に頑張ってくれているようで、一安心。

そうそう、実家方面に行くときには、大磯との境に近い平塚のだだっ広い田んぼの農道を通るのがお気に入り。
田んぼ全体の大きさは全然わからないけど、よく言うたとえでいけば、東京ドーム4個分くらいかな。
稲の丈がもうちょっと伸びてくれると、もうそこら中が緑でシャワシャワ光って、すっごくきれい。
いつまでもなくなってほしくないなぁ、農家のみなさん頑張って! と、
通るたびに思います。

2011-07-03

昨日もまた東名ぶっ飛ばしーので、父が月に1、2度行っている病院に付き添い。人気の先生で待つのが大変なので、まず私だけが受付を済ませ、次何時に来ればいいかを看護師さんに教えていただくことになっていたのだが、
なんとその日は、先生が午後から手術が入ってしまい、
外来の患者数を制限しているということで、
1時間か1時間半後には順番が来てしまうという。
もう慌てて、父を迎えに行きましたよ。

そんなときに限って、駐車場のカードが精算機を通らないという事態が発生し、
周りの車に迷惑がられてまたまた慌てまくり。
結果、ちゃんと先生に見てもらえて、無事父を療養先に送り届けることができたけど、もうアッセだくのバッタバタでした。

2011-07-11

今日、セブンイレブンは、母の祥月命日です。今年で丸三年。
ピラティスから帰ってきてふと思い立ち、
母を偲んで、母が縫ってくれた浴衣を着ることにした。
これを着るのは、いつだったか父母を連れて大磯の花火大会を見に行って以来。
すっかり着方を忘れていて、特に帯をしめるのが大変だったのですが、
一つひとつ母から教わった手順をたどり、
汗だくになりつつ、なんとか着ることができました。

母が反物を見立てて、買って来てくれた日のことを思い出します。
当時高校生だった私には、その柄がとても地味に映りましたが、
「大人になって着るにはいいわよ。それまでには縫ってあげるから」と。
その柄とつりあう大人というものになれる日が、その日から急に待ち遠しくなったのを覚えています。

手縫いの一針一針に、母の優しさを感じます。お母さん、ありがとう。

2011-07-16

毎度東名ぶっ飛ばしーので実家に寄り、父を病院に連れていく。
腰のコルセットがキツくて着脱が大変なので、業者さんに調整をお願いした。
ついでに先生が診てくれて、骨粗鬆症を改善する注射を打つ。

このところだいぶ痛みがとれてきているようだ。
常に飄々とした風情の人気先生に「骨が固まってきたんだね。うん。よかった、よかった」と言ってもらえて、だいぶ気が晴れたよう。
人間って、ホントに言葉ひとつで気持ちも変わる生き物ですよね。

病院帰りにはファミレスに寄ってランチを食べた。
こんなことができるようになろうとは! 
移動は車椅子だけど、父が積極的なので、お手伝いもラク。
お店の方もとても親切でした。

実家では大輪の花を咲かせていた百合をパチリ。
この百合の球根は、父母が信州へ旅行に行ったときに買ってきたとかで、
思い出深いのか、二人ともとても大事に育てていた。
今でも毎年母の命日の頃咲くので、これを見ると、ああ、母が帰ってきたなという気がします。

2011-07-22

今日も今日とて東名ぶっ飛ばしーので、父の病院付き添い。の、はずが、これがぶっ飛ばせなかった。

朝8時前の段階で交通情報を確認したら、東名川崎の途中から町田あたりが渋滞。こりゃいかんと、予定を大幅に繰り上げて8時半に自宅を出発。
いつもは川崎で乗るんだけど、青葉まで246で行った方が早いだろうと判断した。ところがもう、青葉の入り口がめちゃ混み。
どうやら町田あたりでの事故による渋滞らしい。

それが過ぎたらスイスイ行くだろうと思ったら、どっこい、今度は厚木の手前で、もう一つ新たな事故が発生。
台風が去って、今日から動き始めた車も多かったようで、
最悪の渋滞にハマッてしまった。

すぐに父と病院には連絡を入れたが、間に合わなかったらどうしようと父が心配しているだろうなと思うと気が気じゃなかった。
するとなんと、事情を知ったケアハウスのスタッフさんから「先に病院までお連れしましょうか?」という申し出が。
なんとありがたいことだろう! 

結局、私は3時間以上かかって直接病院に。
ちょうど診察が終わったところで、父と付き添ってくださったスタッフさんと合流できた。
いやー、スタッフさんの判断とお骨折りに、心から感謝です!「いい連携がとれた」と、父のご機嫌もすこぶるよし。

ホッとして、お昼を食べにファミレスへ。
店員さんが親切なので、車椅子でもなんの問題もありません。
父もたまに外で食べるのがうれしいようで、和風ハンバーグを「美味しいね」と頬張ってました。

移動の間、車中で流していたのは、来週取材するあるバイオリニストのニュー・アルバム。その方は、様々なアーティストとコラボし、沖縄にまつわる名曲とクラシックを融合させるという新たな音のプレゼンテーションをしています。

帰り道、父がふと「これは沖縄の音楽?」と訊いてきました。
「うん、鋭いね」と私。どうやら耳に引っかかったようです。
「近ごろの音楽は速くてよくわからないからねぇ。曲がいいわけでもないし、言葉がいいわけでもないし」などと続く。
いや、まったく、おっしゃる通りでございます(笑)。

そこへ、ちょうど聞こえてきたのが「花」。
父もなんとなく知っていたようで、「♪泣きなさ~い 笑いな~さ~い」と唄い出しました。
私もなんだかうれしくなって、大声で続きました。
かくして、車内は父娘による「花」の大合唱となったわけでございます(笑)。


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