遠くへ行かなくてもできる、小さな旅~「星のや東京」に行きました
「旅」ってなんだろう。
国境や県境を越えることが難しくなってしまってから、しばしばそんなことを考えます。
「遠くへ行くこと」が旅だとしたら、私たちは当分の間、旅ができないことになってしまう。それは少し、息苦しい感じがします。
でも「いつもとは違う景色を見ること」「毎日当たり前のように繰り返している習慣を離れること」が旅だとしたら。
遠くへ行かなくても、旅はできるのかもしれないと思うのです。
「星のや東京」に行くことにしました
というわけで、少し前のことですが、「星のや東京」へ行ってきました。
大手町にある、和風温泉旅館です。
なかなか遠くには行けないけれど、温泉に入って、美味しいごはんを食べて、畳の部屋でぼーっとしたいなと思ったのです。
私は都内に住んでいるので、ふだんなら、わざわざ都内のホテルに泊まろうとは思わないのですが、こんなときだから、近い場所で冒険をしてもいいのではないかと。
遠くへ旅行に行くのと同じくらい、ワクワクしながら荷造りをしたのに、移動時間がとても短く、あっという間に目的地へ着くのは、何だか得した気分。
ほとんど人に近づくことなく滞在できる
ホテルの入り口で消毒と検温があり、エレベーターに乗り込めるのは一度に一組ずつ。チェックインの手続きはお部屋でできますし、食事は部屋に運んでもらえます。
最上階に温泉がありますが、混雑状況をスマホでチェックして、空いている時間帯を選んで入ることができます(ほかのお客さんが夕食をとっている時間帯をねらって行ったら貸切でした)。
ほとんど人に近づくことなく滞在できるので、感染が心配な人も安心だなと思いました。
館内で小さなお祭り気分
お部屋の窓の外に緑の山や青い海……は残念ながら見えません。私の部屋からは、向かいにオフィスビルが見えました。休日ですが、防犯のためかフロアライトが灯っています。温泉旅館なのに向かいが誰もいないオフィスというのはふしぎな感覚で、脳内の混乱を楽しみました 笑
通常行われているいくつかのイベントや催しは、感染予防のため中止されていましたが、館内では小さな縁日が催されていて、金魚すくいならぬ「お花すくい」をしたり、屋外に面したスペースで日本酒を楽しんだりすることができました。
今年は夏祭りも花火大会も、音楽フェスもない夏なので、少しでもお祭りの気分を味わうことができるのは嬉しい。子どもたちも楽しめそうです。
「お茶の間」でまったり
ユニークなのは、各階に設置された「お茶の間ラウンジ」。そのフロアに宿泊しているお客さんだけが利用できるラウンジで、居心地のいい椅子と、いろいろなお茶やお菓子、昔のおもちゃが用意されています。ミニライブラリーもあるので、ゆっくり本を読んで過ごしました。
それほど大勢の人が集まることもなく、PCを置いて作業できるスペースもあるので、静かに仕事をしたいときにもいいなと思います。
部屋でゆっくり食事
食事はレストランと、部屋食から選べます。レストランも1組ずつ個室なので、密になることはありません。私は夕食を部屋で、朝食はレストランでいただきました。どちらも重箱に入っていて、開けるとき遠足の日みたいにワクワクします。
せっかく温泉旅館に来たので、夕食には日本酒を。今、「鹿男あをによし」を再読しているので、奈良の「みむろ杉」というお酒をいただくことにしました。錫の酒器がとてもお洒落で、冷酒がいつまでもひんやりと呑めるのがいいなあと思いました。
期間限定のハーブ風呂も
最上階の温泉も、都会の真ん中とは思えないほど本格的なのですが、部屋にも大きなバスタブがあり、期間限定で「ハーブ風呂」のサービスがあるというのでお願いしてみました。粉末でも乾燥でもなく、生ハーブのブーケを部屋に届けてくれたのでびっくり。
ふだん、レストランなどにハーブを卸している農家から、コロナ禍で出荷できなくなってしまったハーブを提供してもらっているのだそう。ローズマリーとレモングラスが入っていたので朝風呂に利用。心と体がシャキッと目覚めました。
これも期間限定なのかもしれませんが、夜の時間帯になると、フロントにお香を焚き込めた「匂い袋」が数種類置かれていて、持ち帰ることができました。枕元に置くと、平安貴族のような気分で眠れます 笑
遠くへ行かなくても、旅はできる
せっかく畳の部屋に来たので、朝、チェックアウトの前に部屋の畳の上でヨガをしてみました。一般的な都会のホテルでは、なかなかこうはいきません。
この頃には、自分が東京の真ん中にいることを完全に忘れていて、宿を出てから、飛行機にも新幹線にも乗らずあっという間に家に着いたのが不思議でした。
今まで、生活している場所からできるだけ遠く離れることが旅だと思っていたし、もちろんそれも旅の魅力のひとつだけれど、それだけじゃないのかもしれません。
物理的に遠い場所へ行かなくても、いつもと違う場所で寝起きしてごはんを食べ、習慣から少し離れるだけで、心と体は新鮮な活力を取り戻すことができる。それもまた旅なのだなあと実感するショートトリップでした。
状況によっては、そんな小さな旅も控えて、本当に極力家の中で過ごさなければならない時期もあるかもしれませんが、情勢に合わせて上手く息抜きをしながら、日々の楽しみを見つけていきたいと思います。
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