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2023年下半期 展覧会まとめ

2023年下半期の展覧会まとめ。

※上半期はこちら👉



「A=Z」

@スパイラルガーデン

フォトクロミック技術(紫外線を浴びることで着色)を用いたコレクション。

アンリアレイジがコロナ禍の2020〜2023年に発表したコレクションを展示。いつかは行ってみたいパリのファッションウィークを無料で疑似体験して大興奮。デザイナーの森永邦彦の言葉も壁面パネルに掲げられていた。

「周りが右に進もうとするとき、あえて左に行く。逆にみんなが左に向かおうとするとき、我慢して右へ進む。ファッションにおけるパンクは、かたちではなく姿勢、つまり精神そのものだと言っていい。」

世界的デザイナーになるためには、進んで孤独になるほどの強い意志が必要なのだろう。




「ソール・ライターの原点 ニューヨークの色」

@ヒカリエホール

ストリートスナップからファッション誌まで手広く活動していた写真家ソール・ライター。どの写真にも根底にあるのは、1枚の写真からドラマを展開させていく力。写真に収められた世界から、そこに写っていないまわりの背景や人物まで見えてくる。



「海展」

@国立科学博物館

7月の最も暑い日に行った。まるで海の世界に入り込んだような博物館で、海の歴史や未来を知る。これだけ科学が進歩してもなお未知に包まれている魅惑の世界。



「シネマ・インフェルノ」

@パークウェースクエア2

ジョン・ガリアーノによる、マルジェラのコレクションにあわせて構想されたショートムービー「シネマ・インフェルノ」。そのコレクションを間近で見れるとともに、物語に没入できるインスタレーションが渋谷で開催された。会期は2週間強と短いのに、会場の作り込みが半端ない。不穏で退廃的な逃避行を、チュールやサテン、ピンクに赤といったガーリーパンクなファッションが彩る。照明、美術ともに申し分ないほど素晴らしく、2023年ベスト級。




「大巻伸嗣—地平線のゆくえ」

@弘前れんが倉庫美術館

《KODAMA》

現代アーティスト・大巻伸嗣のインスタレーション。生命の循環を弘前市の自然や伝説と絡めて表現した作品は、どこかホラーチックだけど吸い込まれるほどに惹きつけられる魔力がある。目が慣れるまではよく前が見えないほど真っ暗の空間にぼんやり光る物体。地方美術館がどこよりも攻めの姿勢…!



「テート美術館 光」

@国立新美術館

ジョセフ・ライト・オブ・ダービー《トスカーナの海岸の灯台と月光》

18世紀の作品と20世紀の作品を、光というテーマで繋いでいく。月光、陽光、炎、電球、プロジェクターなど光源は様々。個人的には月光の作品が好き。月は昼間でも、真夜中でも、雲に隠れ気味でも、どの大きさでも美しいと思う。カメラフォルダには月の写真がいっぱいある。月光はおそらく唯一直視しても目が痛くならない、癒しの光源。




「unpeople展」

@POST

音楽家・蓮沼執太による新作アルバム「unpeople」のリリースを記念した、写真家・池谷陸、グラフィックデザイナー・田中せりとの三者による共同展覧会。人のいない窓の写真が展示されていて、1日限定で蓮沼さんのライブも開催。20人くらいしか入らないこじんまりとしたスペースで、まるで屋根裏部屋のようなギャラリー。ライブスタート時はまだ夕方だったけど、終わるころには外が真っ暗になっているのが窓から分かる。そういう時間の変化を、自分にとって特別な人と過ごすのって本当にかけがえない。蓮沼さんが突然「聞こえますか🤫────」と言って、みんなで虫の音を聞いたのも忘れられない時間。その虫の音は蓮沼さんが流していたのか、外から聞こえるリアルな音だったのかは分からないけど、みんなで耳を澄ましていた時間が美しかった。これからも世界に耳を澄まして生きていきたい。



「イヴ・サンローラン展」

@国立新美術館

マルジェラの「シネマ・インフェルノ」と並んで2023年ベスト展覧会はこちら。男性のものとされていた服や素材を次から次へと女性向けに作り上げていったイヴ・サンローラン。その服のなんとパワフルなことか。ハイブランドをステータスとして身につける人もいるけど、そんな虚勢とは比べものにならないくらい、デザイナーとそれを実現する職人の魂がひとつひとつに込められている。奇抜なファッションを見ると、ああなんて自由なんだろう…と泣けてくる。ディオール展ほど内装に気合を入れている感じではないけど、これくらいシンプルな方がむしろ服だけに圧倒されて良いのかもと思った。




「永遠の都ローマ展」

@東京都美術館

《モエシアの艦隊》

個人的にはローマといえばバロック、バロックといえばベルニーニだけど、本展は古代ローマにフォーカス。バロックについてはカラヴァッジョについて少し触れる程度だったけど、ローマの歴史はあまりに長いので致し方ない。ローマがローマである所以をこの展示で初めて知ったのは嬉しい収穫。




「大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ」

@国立新美術館

盛り上がりを見せるイヴ・サンローラン展の真横でひっそりと(しかし強烈に)開催された大巻伸嗣展。私は目に見えるものだけを信じているし、夢を叶えるにも“努力たっぷり、運もちょっぴり”の精神で生きているけど、大巻さんの作品は目に見えないものを見ようとする行為の重要性を思い出させてくれる。2023年のベスト美術館は国立新美術館に決まりだ。




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