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2023年上半期 展覧会まとめ

2023年上半期に足を運んだ展覧会のまとめ。

「雲をつかむ : 原美術館/原六郎コレクション」

@原美術館ARC

展覧会タイトルである「雲をつかむ」というのが、文字通り気象に関するものではなく、慣用句の方だという時点でまず面白い。私は現代美術を通ってこなかったので、ひとつひとつキャプションボードを見ながら鑑賞。どの作品も、純粋に色使いやフォルムに魅力を感じたあと、さらに作者の意図や解説(という言葉は好きではないけど)を見たときに2度目の衝撃がある。



「クリスチャン・ディオール 夢のクチュリエ」

@東京都現代美術館

一番好きなドレス。ゴールド×ライトブルーの組み合わせのものにはいつも目を奪われている気がする。

ここ数年で最も広く話題になった気がする。煌びやかなディオールの作品が所狭しと(天井にも!)並んでいて、子供の頃に憧れた「ハンナ・モンタナ」に出てくるウォークインクローゼットに入ったかのような夢体験。展示室ごとに内装をガラッと変えていて、作品と展示室が見事に調和している。ジョン・ガリアーノがクリエイティブディレクターだったとき、あまりの奇抜さで批判する人が多かったらしいが、それに対して「センスがないより、センスが悪い方がまだマシだ」と反論したエピソードが好きすぎる。



「京都・智積院の名宝 抒情と荘厳」

@サントリー美術館

楓図のフォトスポット(!?)

日本美術で一番好きな作品は長谷川等伯の《楓図》。そもそもバロック美術の華やかさが好きな私なので、日本美術であってもやっぱり豪奢な金屏風が好き。数年前の京都旅行でも《楓図》目当てに智積院へ行った。ここまで金ピカなのに、静謐にも思える上品な佇まいと、どっしり構える大木と川の安定感が、素晴らしいバランスで同居している。ちなみにこの展覧会では他にも《金剛教》が展示されていて、こちらを目当てに来てる人も多かったようだった。私は資料系をすっ飛ばすタイプなので、こういう楽しみ方できる大人になりたいと思った。



「赤瀬川原平写真展 日常に散らばった芸術の微粒子」

@Scai the Bathhouse

赤瀬川原平の未公開写真を、現代アーティストたちがそれぞれピックアップした写真展。鈴木康広のコメントつき作品が特に面白い。視点を変えて日常を見つめることで、いつも歩いていた道も新鮮に変容する。こういう風に世界を見れたらいいなという、鑑賞対象の域を超えて自分の生き方の道標になるほどに感銘を受けた展示だった。



「YUMING MUSEUM」

@東京シティビュー

コロナ禍でのコンサート「深海の街」のセットは特に好き。

デビュー50周年のユーミン。デビュー前から現在に至るまで、いかにしてクリエイションが生まれていったのか、計り知れない天才の脳内をほんのわずかでも覗き見ることができる展示。ここで知った「Happy Birthday to You ヴィーナスの誕生」という曲がお気に入りになった◎



「ブルターニュの光と影」

@SOMPO美術館

エマニュエル・ランシエ《干潮のドゥアルヌネ湾》

ブルターニュを巡って印象派からクロワゾニスム、キュビズムまで繋がっていく。モネやゴッホがとりわけ有名な印象派だけど、まだ知らない画家がいっぱいいてその奥深さを知る。多くの画家たちを創作へと駆り立てたブルターニュの真の美しさを、私も一度は見てみたい。



「KAMO HEAD 加茂克也展」

@表参道ヒルズ スペース オー

アンリアレイジのヘッドピース

髪飾りや帽子は「被る」や「つける」ものだと思っていたけど、加茂克也の作品は「着る」だし、それらさえ超越して「身体そのもの」だった。ミラー、ジュエリー、動物の羽といった、人間の身体からは自然に生まれないものを、生命力の象徴である髪の毛と絡めあわせてしまう大胆さ。ほかにも身近にあるガラクタを集めて再構築したような小品がいくつかあり、ヤン・シュヴァンクマイエル風のそれは無邪気で残酷だった。



「David Stenbeck個展 ドリームスケープ」

@snow contemporary

夢の中の風景をフルCGIで制作した作品たち。ビジュアルの可愛さにまず惹かれたけど、昨年からシュルレアリスムに興味を持った身としては必見だった。遠くから見ると写真みたいだけど、近づいてよく見ると、光るバラの花びらや水面にうつる影が思いのほか粗いタッチで描かれている。だからこそ、実際はどんな具合でうつるんだっけ?と現実を再度見つめなおすきっかけになる。ちなみに発光やゴム素材は近くで見ても写真だと思ってしまう再現性の高さ!



「ルーヴル美術館展 愛を描く」

@国立新美術館

このコピーを思いついた人が大優勝

「Louvre」には「Love」があると気づいた人、「Dior」の名に「Dieu(神)」と「黄金(or)」があると気づいたジャン・コクトーと同じ考え方してる時点でまず凄い。ルーヴル美術館の作品のなかでも、愛にまつわるさまざまな作品を展示。サミュエル・ファン・ホーホストラーテンの《部屋履き》が異彩を放っていて忘れがたい。空間だけで背徳的な愛を描く、美術界のエルンスト・ルビッチ。




「ワールド・クラスルーム : 現代アートの国語・算数・理解・社会」

@森美術館

ヤコブ・キルケゴール《永遠の雲》

六本木アートナイトで深夜の美術館へ。現代アートを小学校の授業科目に分類して展示。現代アートビギナーにも内容が掴みやすくてとても面白かった。キルケゴール《永遠の雲》を見たのは早朝4時半。記録映像による雲と、その奥の窓から覗くリアルタイムの空が重なる。このとき眠すぎてだいぶ意識が朦朧としていたのもあるけど、自分が何処に居るのか空間認識が曖昧になるほどの浮遊感。


「マティス展」

@東京都美術館

《緑色の食器棚と静物》

マティスといえば《赤のハーモニー》(赤い部屋)が有名なのもあり、フォービスムとしての彼しか知らなかったけど、まわりの絵師たちの技法をたくさん学習して自己のスタイルを確立したという過程が分かる展示。赤をメインにした絵よりもブルー系の絵が好きだと思ったけど、いずれにしても色彩感覚がユニークで優れている。マティスの絵は輪郭線がくっきり描かれているけど、視点の歪みによって境界線がなくなり、意外にも開けた空間になっているのが面白い。



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