人が好きだから、一人が好き
一人旅の途中、一人になるのが嫌で泣いたことがある。これまで一人旅をしていても、1日中一人でいることが少なかった。そうなるように仕向けていた。
けれどヨルダン旅行中、ゲストハウスやユースホステルのドミトリーに泊まったのに、誰とも一緒にならなかったのだ。明日一人だ……と思ったらさびしくなって、日本にいる友達に電話をかけた。
ワディラム砂漠の星が綺麗だったとか、タクシーに追いかけまわされて道端に座ってるおじいちゃんに慰めてもらったとか、これまでの旅の話をマシンガントークしていたら、とつぜん、言葉を遮るように友達が話し始めた。
「帰ったら話聞くからさ、今はその場を楽しんでおいでよ」
そこから糸が切れたようにポロポロ涙が出はじめた。ドミトリーにだれもいないこと、宿のロビーで座ってたけど一人も会えなかったこと、明日から一人になってしまうことをぎゃーぎゃー話したあと、友達からは「受付の人は? 話しかけた? 誰か来たら教えてもらいなよ」とアドバイスをもらってしぶしぶ電話を切り、受付の男の子と話しに行ったのだった。
「友達ができなくて寂しい」と相談したその日の夜、受付の子が温かいレモンティーを入れてくれて、言葉の全く分からないニュース番組を一緒に見て、シリアに住んでいる彼の家族の話を聞いた。みんなにお金を送らなきゃいけないから、自分はヨルダンに出稼ぎにきているのだという。
次の日は結局一人だったけれど、前日夜のことを思い出すと、今も懐かしい気持ちになる。
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一人旅を始めたきっかけが、「誰も一緒に行ってくれる人がいなかったから」で始まっている私は、旅先でひとりぼっちになることがすごく怖かった。日中はまだ頑張れる。しかし夜になって宿に帰って、誰とも話すことなく眠ってしまうのがたまらなく嫌だった。
友達の助言のおかげで、「受付の人と話す」スキルを身に着け、”ひとり”に過度な不安を覚えずに旅ができるようになった。
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今は、一人旅が結構好きだ。ノートを海辺に持って行って、1日中とりとめもないことを書いたり、公園でハーモニカを吹いたり、市場の野菜ゾーンを回ったり。
長距離バスの一人旅はすごくワクワクする。曲を聴いたり、景色を見ながら頭の中で今までのことやこれからのことを、もやもやぐるぐる考えるのだ。そんな時間がもてる一人、全然悪くない。
けれど、「悪くないな」と思えるようになったのはやっぱり、バスを降りた後に話ができる宿の人がいたり、のんびりしてると近づいてきてくれるナンパ師や、観光の途中で話しかけてくれる人がいるから。
一人の時間と、時々起こる新しい出会いのバランスが好きだからこそ、また一人旅に出たいなぁと思う。そして“時々起こる新しい出会い”の中に、心がふるえるほどの経験があるから、どうしてもやめられない。やめたくないな、と思ってしまう。
人が好きだからこそ、一人が好き。
矛盾しているかもしれないけれど、私はそんなタイプです。
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