My name is・・・

僕の名前は三島勇斗。
横浜市内に住む、高校1年生の男の子。
好きなことはサッカーと野球。
嫌いなことは、机に座って勉強をすること。
ごくごく、普通の男の子だ。
自分が人間ではなく、ロボットであるという点を除けば―

この国の少子高齢化問題を解決するため、
僕は人工的にこの世に産み落とされた。
何年も前から、この問題は大きな社会問題となっていたらしいのだけれど、
本気で解決する気のなかったお偉いさん達は、
「小型のロボットを大量に輸入して、それを子供代わりにしよう」
そう思いついたらしい。
ロボットは、人間より賢いし、簡単に倒れたりはしない。
普通の人間より、「よっぽど生産性がある」と彼(彼女)らは考えたのであろう。

「勇斗、早く早く。理沙のピアノの演奏会、始まっちゃうわよ」

遠くで母の声が聞こえる。
理沙は僕の4つ下の妹で、僕と同じ研究施設から産まれた
小型のロボットだ。

「分かった、すぐ行く」

そう大きく返事をして、母の声が聞こえた方へ向かう。


「ロボットにも感情がある」
そう言うと、とても驚かれるのだが、
僕たちロボットにも感情はある。
人の気持ちは読み取ることができるし、
心だって存在している。
人間と同じように扱われるのは当然だ。

「あ、やっと来た。もう演奏会始まっちゃってるよ~」

「勇斗はいつものんびりだなあ。まあ、そこがまた良いんだけど」

優しく微笑む母の隣で同じようにニコニコと笑みを浮かべているのは、
僕の父。怒ると怖いけれど、それはよっぽど悪いことをした時だけで、
普段は全く僕に怒ることはない。温厚な人だ。

「ごめんごめん、数学の宿題終わらせるのに時間がかかっちゃって」

ピアノを演奏する子供も、観客席でピアノを眺めている子供も、
皆ロボットばかり。
当然だ。この国には、僕と同じように研究施設で人工的に産み出された
ロボットが、100万人もいるのだから。

「これだけロボットがたくさんいるんだから、
この国の将来は安泰だな」

「人間の子供より育てるのも楽だし、
お金もかからなくて楽チンよねえ」

後ろに座っていた年配の夫婦が、
嬉しそうな表情でそう言った。
両親は僕のことを大事にしてくれているし、大好きな妹もいる。
だけど、そのような言葉を聞くたびに
なぜかひどく胸が痛む。どうして、なんだろう。

【この小説について】
今から30年後くらいの未来の日本を描きました。
AIロボットが日本に輸入されて、少子化問題を解決する
というようなことを書きたかったのですが、
上手く書けませんでした。
作中の「生産性はない」は、あの発言へのirony(皮肉)。
AIロボットのことがよく解っていないのだから
書けないのは当然ですね。関連書籍を読んで勉強します。

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