見出し画像

江戸川Qの「独想感想文」#6

日本史を暴く -磯田道史 著|新書|中央公論新社 (chuko.co.jp)


 「歴史」と言うと学校の教育科目で「人類の事実」であり、それらの過去の事象を学ぶことの社会的有効性については疑問を持たれる方が多いのではないかと思います。
 歴史を知る事が自分の人生でどんな意味と価値を持ち得るのか?
 故に自分の人生の時間を他の遊戯時間に当てるほうが人生の「得」であるという考えを持たれるのも「歴史」と言う学問分野が持ち得る酸味の効いたアンチテーゼなのかもしれません。

 読了後の感想を述べれば、本作は歴史学者磯田道史によって様々な時代の古文書を丁寧に調べて書かれた歴史事象の考察と事実の推理であり、歴史への教育的側面は無く、唯、歴史の隙間を繋ぐ古文書によって歴史を彩らせた学者の見識と、また著者の持つエッセイ的資質を十分に発揮させた歴史文学書でもあります。
 「何故(why?)」を持つことこそが歴史への尋ねであり、訪問でもあると本作に於いて著者は述べています。
 本作の中より一文を述べれば

――信長が地球儀を持ち、家臣達に天地(宇宙)についての学習会をしていた。

 この一文を書くためにどれ程の努力があるかと想像するのですが、またこの一文でまた「何故」を探すことが次に歴史を紐解くことにもなります。
 つまり日本人は何故、当時地球が丸いことを理解し得たのか、何故そのような素地があったのか。考えれば安倍晴明の頃にも天体について日本人は学んでいた。何も西洋のみが地球を知っていたのではない。では何故安倍晴明の頃にそのような天体を調べて理解する教養があったのは何故か。

――歴史を知る事が自分の人生でどんな意味と価値を持ち得るのか?
 
 ではなく、

――歴史を知った人が自分の人生でどんな意味と価値を持ち得たのか?

 気になりませんか?
 もし、幾つかの『何故』に気になったあなた、是非この一冊を手に取って下さい。

 そんなあなたに
 この一冊を。

 もしあなたが一冊の本を読み終えたら、あなただけの「独創感想文」を。

 文:江戸川Q 

 


この記事が参加している募集

#読書感想文

188,766件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?