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新規事業創出の方法論③

前回迄は新規事業創出の全体像や課題発見方法、新サービスの設計方法、仮説の検証方法やビジネスモデルの設計の仕方について解説してきたが、今回は収益計画の立て方や新規事業創出の肝について共有していきたい。前回までのnoteを読んでいない方は前noteを参照頂きたい。

収益計画の立て方

ビジネスモデルの設計やビジネスモデルキャンバスを立案したら、そのビジネスがどれだけ収益性があるのかのシミュレーションをする。その時のポイントは大きく5つ。

①売上高・コストを因数分解しておくこと。例えば、売上高=顧客数×利用頻度×利用単価、売上高=市場規模×セグメントシェア×自社シェアなど。コストは変動費と固定費に分けて、更に細かくしておく。

②前提を可変可能な構造にしておくこと。最初は一定の前提の下で、顧客数や利用頻度などの数字を仮置きしておくが、あくまで前提なので、あとで数字を変更できるようなExcel構造にしておくといい。

③前提となる根拠も記載しておく。最初は他サービスなどから根拠となる数字を引用することになるが、シミュレーションは何度も行うので、何をもとにして数字を作ったのかが分かるようにしておく。

④厳しめに見積もる。希望的観測で甘めに見積るのではなく、厳しめに見積もっておく。

⑤限界利益率を見ておく。売上高 - 変動費 = 限界利益であるが、限界利益が示す意味合いは、商品やサービスを販売したときに得られる直接的な利益である。そこから固定費を差し引いたのが営業利益であるが、事業を立ち上げ当初から固定費を大きく下げられないので、そのビジネスの儲かり度合いを見るには限界利益率の水準(50%以上が望ましい)を見ておくのがいい。

具体的には下図のような収益計画を立案する。費目を因数分解しておき、因数分解した数字の前提条件を示しておく。構造が固まれば、あとは数字を根拠や想いを含めて、何度も何度も修正をしておく。言うまでもないが、間違っても最初に作ったらそれでおしまいではない。もちろん、仮説検証をしていくうちに、サービス設計やビジネスモデル設計が変更となれば、当然、ビジネスモデルキャンバスも変わるし、収益計画も変わることになるので、セットで修正していく。

収益計画

新規事業創出の肝

再度おさらいではあるが、今回共有している新規事業創出プロセスは、顧客やユーザーの課題を発見し、顧客の課題の原因を掘り下げて、真因に対する打ち手を考えて、打ち手を組み合わせて、新サービスやビジネスモデルを設計し、収益計画やBMCを作成し、具体的な行動計画へと落とし込んでいくものである(下図参照)。

新規事業創出プロセス

ちなみに、解決したい課題が社会課題の場合は、社会課題の選定・定義をし、社会課題の原因を掘り下げていくことになる(下図参照)。また、仮説検証の対象は社会課題の体験者や関係者となる。

社会課題の解決ステップ

解決する課題が、顧客の課題でも社会課題でも、類似プロセスを高速で回していくことになるが、新規事業を創出する上での肝となるポイントを4つ共有しておきたい。

①顧客(ユーザー)の課題を解決するサービスであること(=打ち手の有効性)

原因・真因を見誤ると打ち手が正しくなくなる。そうすると、顧客やユーザーの課題解決に繋がらないので、本当に課題を解決するためのサービスになっているのかを常に確認すること。原因を掘り下げているうちにあさっての方向にいかないように。

②顧客(ユーザー)の選択する理由が明確であること(=サービスの独自性)。  

顧客がサービスを選定する理由が弱ければ、そのサービスが継続的に使われることはない。全ての要素で差異化する必要はないが、特に顧客が重視する要素(Key Buying Factor)の中で何かが尖っていないと選ばれにくい。既存製品・サービスとの差異化を考える上では11の観点(下図)を参照頂きたい。

差異化の観点

ちなみに、スタディサプリは一流講師の授業を低価格で提供するという位置取りをし(品質・価格)、生徒が選択する理由をはっきりさせている(下図参照)。ポジショニング・マップをつくる上では何を軸にするのかがポイントであり、顧客が重視する要素を含めておくといい。

差異化(スタディサプリ)

③圧倒的な熱量があること(=チームの情熱性)

新規事業を立ち上げるプロセスは困難を伴う。それを乗り越えるには間違いなく圧倒的な熱量が必要である。つまり、「何としてでも顧客(ユーザー)の課題を自分が解決してあげたい」とか、「解決した後にこういう世界を創りたい」とか、そういう想いである。最初から熱量はある方が望ましいが、不足しているのであれば、熱量を醸成する仕掛けが必要である。

1. 原体験(又は疑似原体験)を獲得する:困っている人と一緒に行動する(生活する)とか、困っている人にヒアリングを重ねる(→これはマスト)。

2. 成功体験を積む:小さくてもいいので、「良かった」と思える体験を早く積むこと。

3. 小さな成功を褒める:多くの人は承認欲求が強い。ちょっとしたことでも挑戦したのであれば、リーダーや周囲が褒めること。

4. 大義を考える:何を目的として、このサービス・ビジネスをやろうとしているのかを問いかける。そして、なぜ自分がそれをやりたいのかを(Why meの明確化)。

5. 伴走者を置く:熱量を高められる人をチームに置くのも一つのやり方。自組織にいないのであれば、外部を活用するのも有効である。

④十分な収益があること(=拡大性×収益性)

継続的なサービスを提供し、顧客の課題を解決し続けるためには、事業としての収益性があり、そして事業として成り立つ規模感があること。

総括

3回に亘って、我々なりの新規事業創出の方法論を解説してきた。特に今回は収益シミュレーションの仕方や新規事業創出の肝について共有してきた。方法論は今回共有した以外にも世の中には様々ある。でも、一番重要なのは圧倒的な熱量である。もし自分にその熱量が不足しているのであれば、熱量を醸成する仕掛けを施すことである。新規事業は既存事業と違って、明らかに成功確率が低い。それは様々な乗り越えないといけない課題や経験したことがない課題に直面するからである。その課題を乗り越えていけるかどうかは、諦めずに立ち向かうことであり、それを支えるのは誰かの熱量ではなく、自分の圧倒的な熱量である。圧倒的な熱量を持つには課題解決の当事者になれるかどうかであると私は思う。

今回のような新規事業創出の方法論の詳細や実体験に興味がある方は、私の運営しているオンラインサロン「CLUB RIGHT HAND」を覗いてみてください。

また、1回目・2回目の記事はこちらです。


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