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新規事業創出の方法論①

新型コロナの影響により、既存事業だけでは立ちゆかなくなってきている企業もあるのではないかと思う。また、企業内で何年も前から新規事業の必要性が叫ばれているけども、なかなか形になっていないという企業もあるのではないかと思う。そんな方々向けに我々なりの新規事業を創出するための方法論を数回に分けて共有していく。

1. 新規事業創出の3STEPとは?

新規事業創出には大きく3STEPがある(下図参照)。STEP1は企画・開発。いわゆる0から1生み出すステップ。ここではサービス/製品設計、ビジネスモデル、行動計画を具体化していく。STEP2は拡販の土台作り。1→10にしていく段階で、複数顧客でニーズを検証し、複数顧客への販売を展開していく。STEP3は拡販。リソースを追加投入していき、事業部化していく。今回はSTEP1に焦点を充てて、その方法論を語っていく。

新規事業創出のステップ

2. そもそもビジネスとは?

本題に入る前に、ビジネス=顧客の課題解決である。顧客の課題を解決するという嬉しさの対価として、顧客にお金をもらっている。その嬉しさの積み重ねが売上高であり、その嬉しさを提供しているのが製品・サービスである(この考え方は忘れがちなので、超重要です!)。

ちなみに、新しい製品・サービスとは、顧客の課題を新しい打ち手で解決することであり、新規事業とは、新しい製品・サービスに加えて、新しいビジネスモデルで解決することと、我々は定義している。

3. STEP1:0→1を生み出すプロセスとは?

では、どのようなプロセスで新規事業を生み出していくのか? 顧客の課題解決=ビジネスなので、①顧客の課題を発見するところから入っていく。その上で、②顧客の課題の原因を掘り下げて真因を特定し、③真因に対する打ち手を考えていく。そして、④新サービス/製品を設計し、ビジネスモデルを検討していく。最後に⑤ビジネスモデルキャンバス(BMC)に落とし込み、収益計画を立案し、具体的な行動計画へと展開していく(下図参照)。

ここで留意したいのは、うちはこんな技術や資源があるからという発想で新サービス・ビジネスモデルの設計をしないことである。なぜならば、技術を売る=ビジネスではなく、顧客の課題解決=ビジネスだからである(しつこいですが、ここは重要ですので)。

新規事業:STEP1

顧客の課題や真因や打ち手等の仮説立てを行い、顧客と一緒に協議しながら、高速で仮説検証していくことがポイントである(下図参照)。間違っていてもいいので、仮説を立てて、顧客にぶつけて、仮説を修正してというプロセスを繰り返していく。仮説の確からしさよりも、仮説の修正力の方が重要である。そもそも最初から全ての仮説があたると思う方が間違いで、間違った仮説でもいいので顧客に持っていき、「いやいや、そこじゃないんだよ。こっちが課題なんだよね。なぜかというと・・・」と引き出せれば十分である。

新規事業:STEP1-2

4. 顧客の課題の発見方法とは?

では、顧客の課題をどう発見していくのかである。いわゆる3C分析を活用するのがいい。Customer:対象顧客の市場動向や消費者の動向、Competitor:対象顧客の競合の動向、Company:対象顧客の動向を把握して、何が優先的な課題なのかを発見し、纏める(下図参照)。私の場合はササっとレポートや記事検索や中計などを見て(2-3時間)、「こんな感じかな」って仮の結論を作ってしまう。あとは詳細のFactを集めて、補強・修正をしていく。

留意したいことは詳細まで調べ尽くして、結局、何がいいたいのかが分からないような分析にしないこと。逆に自分の仮説に固執し過ぎて、都合のいいFactだけを集めてくるような分析にしないこと。情報をササっと集めて、パッと仮説を立てて、仮の結論を出し、チョコっと修正していくイメージで。【ササっと、パッと、チョコっと】で。

顧客の課題発見

例えば、ある建設会社向けの初期的な仮説がこちらである(下図参照)。調べることと情報ソースが分かっていれば、1-2時間で課題の初期仮説はできるはず。

顧客課題の抽出事例

5. 顧客の課題の原因の深掘り方法とは?

では、顧客の課題を抽出できたら、その原因を深掘りしていく。私はこれを”課題の構造化”と呼んでいる。できるだけ抜け漏れがないように、網羅的、そして深く掘り下げていく(下図参照)。解決できるかどうは一旦考えずに。MECE(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustiveの略称で、要するに漏れなく・ダブりなく)である必要性はなく、MECE感があれば十分である。

深く掘り下げれば掘り下げるほど、真因に近づき、打ち手が具体化されていく。深く掘り下げないと「シェアが低下しているから、シェアを上げろ」的な表層的な打ち手(=意味のない)になってしまうので。

このプロセスは慣れないと骨の折れる作業だけども、能力ではなく訓練である。私も最初は全然できなかった。でも繰り返し、繰り返し課題の構造化に向き合った。繰り返しやっているとできるようになるものである。スポーツでも最初できなかったことが、繰り返し練習することでできるようになるのと同じ感覚である。ちなみに、今でもほぼ毎週のようにこれを作っている。なぜならば、課題解決に絶対に必要な作業だから。

課題の深掘り

ちなみに、運営しているCLUB RIGHT HANDのプロジェクトでサロンメンバーと作った農業経営における課題の構造化がこちら(下図参照)。

課題の原因の構造化

6. 真因に対する打ち手の導出方法とは?

”課題の構造化”したものを検証し、真因を絞り込むことができたら、次は打ち手を考えていく(仮説検証の方法は別途)。

真因に対する裏返しが解決策となることが多いものの、単純な裏返しができない場合もあるので、アイデアが必要となる。その時のアプローチが4つある(下図参照)。

①アイデア発想法の活用:ブレインストーミング、類似発想法、マンダラート法、組み合わせ法など、世の中にはアイデア発想法が沢山あるので、それを活用する。また、フレームワークではないが、歩行や草むしりやシャワーとか、他作業をしている時にふとアイデアが生まれることもあるので、自分に合った方法を模索してみよう。

②自社内の経験を活用:自社内の成功・失敗事例や技術を参考にしながら、ヒントを得る。ここでようやく技術の話になる。真因に対する打ち手を考える上で技術を活用するのである。社内に検索性の高いナレッジマネジメントの仕組みがあると便利である。その仕組みがなければ、社内のアイデアマンに聞きまくるのもありだろう。

③他業界事例を活用:他業界の成功・失敗事例を参考にヒントを得る。他業界の常識や事例が、当該業界にとっては新しい発想になることがある。そのためには日頃から、面白いと感じたサービスやビジネス事例を使える形にして、ストックをしておくといい。また、事例を抽象化して、当てはめてみると打ち手のアイデアが生まれることがある。

④他人の脳を活用:従業員全員からアイデアを募集したり、所属しているコミュニティからアイデアをもらう。他人の脳を活用するのは本当にいい。私もアイデアが欲しい時は、運営しているオンラインサロン「CLUB RIGHT HAND」や参加しているオンラインバー「ゆうてんか」へ投げ込んでいる。

真因に対する打ち手

ちなみに、CLUB RIGHT HANDのサロンメンバーで、農業経営の課題に対する真因の打ち手を知恵を出しあい、要約したものがこちらである(下図参照)。

打ち手の例示

7. 打ち手から新サービスの設計方法とは?

打ち手を導出することができたら、幾つかの打ち手を組み合わせて、新しいサービスを考えていく。そのサービスのイメージ図を作っていく。解決したい課題は何で、真因は何で、解決策は何で、解決策のサービスイメージ、顧客が他サービス/製品ではなく、本サービスを選ぶ理由は何かを明確にしておく。

サービス・製品設計に必要な要素

例えば、 スタディサプリの場合を上記フォーマットにあてはめてみると、こういう形になる(下図参照)。スタディサプリが解決したかったのは、塾に通えないことによる”教育格差”。その真因は①家庭の経済格差、②地域格差、③親の放任主義(なぜなぜとして整理したかどうかは不明)。その解決策としては、どの学生にも利用可能な授業動画配信サービスである。一流講師の動画を低額で配信するというもの。顧客(生徒)が選ぶ理由は、低額で一流講師の授業を誰でも受けられるから。

サービスイメージ

8. 総括

今回は新規事業創出の方法論の一部を共有してきた。既に気づいている方もいると思うが、この前半の課題を発見し、真因を特定し、打ち手を考えるというのは、どんな課題の解決にも適用できる方法論である。その延長線上にあるのが、新サービス・製品の設計であり、新しいビジネスモデルの設計であると考えた方が私はいいと思う。

次回はビジネスモデルの設計方法や収益計画の立案方法について共有していく。

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