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経営コンサル流の人材育成の方法論

マネジメントとは人の持つ能力を最大限に引き出し、人を動かし、成果を出すものだと私は思っている。個々の能力を最大限に引き出すためには、ベースとなる能力を高めることが必須であり、今回は我々(経営コンサル会社、㈱アバージェンス)が実践している人材育成の方法論を共有していく。我々自身も完璧にできている訳ではないし、長年若手の育成に苦しんできたけれども、ここ最近の我々の若手の目覚ましい成長を見る限り、かなり効果のある方法論だと思っている。

人材育成の枠組みの全体

我々が実践している人材育成の枠組みは、大きく8つの要素で構成されている。具体的には、a. お手本を示す、b. 知恵を与える、c. 実践する機会を与える、d. 成長目標を設定する、e. 気づきを醸成する、f. フィードバックをする、g. 教える機会を与える、h. 評価をする、である。では、一つずつ内容とポイントを共有していく。

人材育成の枠組み

a. お手本を示す

基本的な”型を教える”ことを指している。”keiko”と呼ばれる独自の社内研修があり、新入社員向けに「SHIRO(しろ)」、コンサル向けに「AKA(あか)」、マネジャークラス向けに「AO(あお)」の3種類のkeikoがある。特に「AKA」は丸1日時間(隔週開催)をとり、PJを回しているディレクターやマネジャークラスが講師役を務めている(下図参照)。ちなみ本keikoは要望に応じて社外の方の参加も受け付けている。

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このkeikoでは、まず①基本的な概念や手法を講師が示す。そして、②講師が演習問題をどう解くのかを”実演”をし、③受講生はその実演を観察しながら気づきを抽出する。そして、④受講者に演習をやってもらい、⑤講師がフィードバックをする、という組立てにしている(下図参照)。

型見せ

keikoの実施風景

忙しい合間にディレクターやマネジャークラスが時間を取っているのは、人材育成が極めて重要な経営イシューだと捉えているからである。

また、その研修日はランチを一緒にとるようにしている。社員同士の交流を深め、新しく入った社員の知人を増やすという目的も狙っている(現在はオンライン開催に切替中)。

b. 知恵を与える

過去の経験や知見を言語化し、社員であれば誰でも見られるようにして、”活きた知恵”を与える。具体的には、我々が実施したプロジェクトからの気づきや視点や方法論を切り取って、テーマ毎に登録をする"現場の知見"と呼ばれる仕組みがある(下図参照)。いわゆる、ナレッジマネジメントである。

現場の知見

ポイントは2つで、検索性を上げることと、フォーマット化することである。

①検索性を上げる

簡単に検索ができるようにテーマ毎に切り取って登録するようにしている。経営コンサルのプロジェクトに関連する資料は膨大にあり、それらの資料はプロジェクト毎のフォルダーに登録している。ただ、そこから欲しい資料を探すのは至難の業なので、重要なポイントだけを切り取って、現場の知見に登録するようにしている(命名規則を作り統一化)。

現場の知見_観察調査

②フォーマット化する

経営コンサルのプロジェクトは通常3ヶ月~半年くらいあるが、プロジェクト終了後に、どんな課題をどのようなアプローチで解決し、どんな成果を上げたのか、何が肝だったのかを1-2枚に纏めて、登録している。それぞれが別々のやり方ではなく、フォーマットを決めている。そうすると、プロジェクト経験していない人にもそのプロジェクトのポイントが分かるし、この事例集は営業ツールにも変身する(下図参照)。

PJ事例

c. 実践する機会を与える

知識や知恵をつけても実践しないと自分のモノにならないので、プロジェクトや提案活動にアサインする。入社してから3ヶ月くらいは複数のプロジェクトに見てもらい、その後は、本格的にプロジェクトにメンバーとして入ってもらい、役割を与えて、担当をもってもらい、実践・活躍できる機会を与えている。基本的には「予備診断」か、「成果創出プログラム」へのアサインである(下図参照)。

アサイン

ただ、研修で学んだことと、実践とでは大きな乖離がある。研修をどれだけ実践寄りにしても、どれだけケーススタディをやっても、研修は研修、リアルはリアルである。結局は、目の前のお客さんの課題にどれだけ向き合い、どれだけ考え、どれだけ行動をするかである。それを繰り返し反復しながら。そういう機会を与えて、実践してもらうことで、初めてようやく研修の内容の本当の理解ができる。

d. 成長目標を設定する

プロジェクトにメンバーとして加わった時に、まずプレ・エバリュエーション(通称”プレエバ”)を行う。このプロジェクトを通して、①どんな貢献をしたいか、そのために②どう自分が成長したいか、そのために③どんな行動をするのかを描いてもらう(下図参照)。その上で、ディレクターやマネジャーがフィードバックをする。論理的に繋がっているかどうか、具体的な行動に落とされているかどうか等を確認する。もちろん、目的はメンバーの成長を真摯に考えて。

プレエバ

e. 気づきを醸成する

若い社員には「日々の学び」を書いてもらっている、1,000個の気づきが生まれるまで、毎日毎日。日々の仕事や書籍や誰かとの会話などからの気づきを記録として残していく。学びが何だったのか、それをどう自分の思考や行動に活かしていくかを書きとめていく。ある意味、強制的に気づきを促す仕組みであるし、自問自答をするための仕組みである。もちろん、ディレクターやマネジャーから「日々の学び」に対してフィードバックをする(全員やっているかなどうかは分からないが・・・)。

日々の学び

f.フィードバックをする

成長目標に沿った形で、①②③がどれくらいできているのを隔週開催の成長フォローアップ面談で確認をしていく(開催頻度は個人差あり)。

目標と実際の行動には乖離があるもので、当初は勢いよく目標設定してみたものの、行動が伴っていないということは企業単位でも、組織単位でも、個人単位でもよくある話である。定期的な場を設けることで、できていることと、できていないことを整理していく。できていることは認知し、できていないことは改善行動を一緒に考える。当初の目標がクリアしていれば、目標の再設定を一緒に行う。1対1の対話の方法については別noteに纏めているので、そちらを参照頂きたい。

g. 教える機会を与える

ある程度実践をし、理解が進んで、昇級試験に受かったら、今度は教える立場(keikoの講師)になってもらう。トレーナーズガイドをベースにしながら(下図参照)、自分の経験談や自分の言葉を加えて教えることで、自分の理解がさらに深まる。教える立場になって、分かっているつもりになっていたけれども、初めて分かっていないことに気づくこともある。つまり、教える立場になることそのものが気づきを醸成し、成長を加速させるのである。

トレーナーズガイド

h. 評価をする

プロジェクト終了時点で定量的な評価と定性的な評価を行う(下図参照)。うちでは”役職毎にできるべきこと”が行動ベースで詳細化されている。そして、昇格するためには一つ上の役職の必須項目ができるようになることを条件としている。できるようになったことを認知し、褒めて、文章として残す。今後の課題も一緒に見据えて、それを乗り越えるためにルーティンとして自分に課すことを一緒に考える。

半期エバ

そして、プロジェクト単位の評価を証拠にして、半期ごとの評価が行われる。昇格や昇給の機会でもあるけども、重要なのは認知する・賞賛する・課題を認識する・改善行動を決める、である。

総括

今回は、我々流の人材育成の方法論を共有してきたけども、多くの要素がどの会社・どの組織・どの役職にも当てはまるだろうし、既に仕組みとしてはある程度整っているのではないかと思う。

重要なのは、仕組みの目的や意図を理解し、経営陣や管理職が個々人の成長を真摯に願って、個々人とちゃんと向き合い、魂を込めて、仕組みを活用・運用することではないかと思う。

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