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SS『引き継いだ翼』
有栖さんは、とても小柄で華奢な女の子で、大きな瞳がいつもキラキラ光る笑顔が素敵で、心の綺麗さが透けて見えるように美しく、しかも頭が良く控えめで、まったく、非の打ち所の無い人だった。いや、こんなに完璧な人が普通にいるわけはないし、まして、自分の一番の友達だなんて、信じられないことだった。実際、やはり僕らと同じでないことは、ようやく最近わかったのだけれど。
好きなものは恐竜と椅子だって、みんなの前で
SS『クリスマス・イブ』
クリスチャンでもないのに
クリスマス・イブに生まれた私は
名前も聖書の創世記から取ったのだと
名づけ親の父はとにかくフィクションが嫌いで、ほとんどの小説は作り物だと言って退け、せいぜい実在者の伝記か事実に基づいた歴史ものしか読まない人だった。
それなのに、何故、天地創造の話は
肯定できたのだろう。神話は別だったのか。
そもそも、何故、聖書が家に私が生まれる前から普通に本棚にあったのか、今思えば不思
SS『嫌いになれないパリ』
はじめは1週間足らず
絵葉書どおり、憧れどおり、裏切らない景色
凱旋門、シャンゼリゼ、エッフェル塔
お気に入りはサン・ジェルマン・デ・プレ
日除けのあるカフェやグラシエ、ショコラティエ、傘や香水、手袋の、とにかく専門店が
素晴らしい。ベッドリネン類を扱う店や惣菜屋ですら美しく、飾り方や見せ方を知っていて暮らしの中にアートが在る、いやアートの中に暮らしが在る。
忽然と現れては消えるメリーゴーランドや
SS『日常の非日常』
ある日、雲が遊びに来ていた。
なんか、可愛い。
人でなくたって、第一印象は大事だ。
怖さもある?それは捉え方次第、
だから、心はいつも柔軟でいたい。
何故?とか有り得ないとか騒ぎたくない。
性急に質問ぜめにしたり、
勝手に答えを出したりしたくない。
だって、素敵だから。
そっと、しておきたい。
すぐに消えてしまうのかも知れないし。
ちょっとだけでも、一緒に居てみたいから。
ほんの気まぐれで、もう、
SS『バレエダンサー』
「愛と哀しみのボレロ」という映画の中で
踊るジョルジュ・ドンを見て
いったい、この類い稀な美しい
神がかったバレエダンサーは
何者なんだろうと強烈な印象が残り
エイズで命を落とす前に一度だけ
辛うじて直に来日舞台を見ることができて
幸いだった。
そんなことだったから「ボレロ」は
後にも先にも彼にこそふさわしく、
彼のための演目だと信じ切っていて、
他のダンサーが踊るのを見ても
あまり、しっくりと
SS『バラの村ジェルブロワ』
フランスはブローニュ暮らしの日本人ご夫妻とはもう20年以上のお付き合いで、奥様にフランス語を習い続けている。長いだけで一向に上達しない。
5度目のパリは2017年の6月、その時期が日本と違ってバラの見頃だと聞いて、「フランスで最も美しいバラの村」と呼ばれているジェルブロワへ、ただ、バラを眺めるだけの日帰り旅行を計画し、バガテル公園とリニューアルされたマルメゾン城の庭園もあわせて、ひたすらバラを愛
SS『ホテルフリーク』
クラシックホテル(東京ステーションホテル、ホテルニューグランド<横浜>、日光金谷ホテル、富士屋ホテル<箱根>、万平ホテル<軽井沢>、奈良ホテル、川奈ホテルなど)も新しい外資系の高級ホテルも皆、日本にあれば日本らしさをそのインテリアや調度、備品、サービスなどに絶妙に取り入れて、ホテルという洋の中に和の趣きやオリエンタルテイストをここかしこで効かせ、トータルなデザインに融合昇華し、ロイヤルカスタマーで
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