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わたしの故郷

寝る間際
読み聞かせに飽きた子供が
私の故郷の話をして欲しいと言う

田んぼしか無いところだよ

二十歳まで暮らした家を思い出す

どこへ行くにも時間がかかり
血と土地のしがらみが頑丈で
皆と同じを求められた

夜は闇のように
長く黒く

聞こえるのは
ウシガエルの鳴き声と
バイパスを爆走するバイクの音だけ

何にも無いところだよ

『水と電気はあったの?』

訪れたことのない我が子は
田舎と未開を混同していて

私は声を立てて笑った

ここが私の育った家だよ
そういう未来があってもよかった

今になって
やさしくふるさとを想う

…………………

これは私の故郷の話。

もう訪れることはできないのだけど、

卒業記念に畑に植えた
桃と栗の木は大きくなったかな、
庭の柿の木は元気だろうか、

胸の中で話しかけます。


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