スピンオフ小説「1/3の失恋」-2
第 3 章
「今日さ、Mと一緒に音楽室に来たのはなんで?」
N先輩がアタシに聞いた。
N先輩は、吹奏楽部の部長で、アタシの彼氏💖
去年の文化祭後にN先輩が部長になった後、告白されたんだよね。
アタシの初彼だけど、どうも周りからは、あんな男止めとけ❗って言われるの。
今のところ、別に不満もないけど…
かと言って、これが中学生のカップルのお付き合いで良いのかな?と思わないでもなくってね〜🤔
休みの日に何処か一緒に出掛ける訳じゃないし、部活後に一緒に帰るだけだし…。
不満はないけど、満足してる訳でもないんだよ。
「Mくん?同じクラスになったし、まだ入ったばかりだから、少しでも音楽室に来やすいように、暫く一緒に来てあげようかなって」
「そんなことせんでもええのに」
「えっ?」
アタシはまさかN先輩がそんなこと言うとは思わなくて、びっくりしちゃった。
きっと、Mくんが慣れるまで助けてやってくれ、とか言うと思ってたんだけど…。
「そんなことしたら、他の生徒から、お前とMが付き合ってると思われる。俺は嫌だ」
「でも…」
「大丈夫だよ。Mは去年新聞部で、俺の同期から酷い目に遭わされたのは先生からも聞いたし、俺も知ってる。だから俺もイザという時はMを守ってやるよ。だけど、一緒に部活に来るのは、ちょっと困るし、止めてほしい」
「・・・」
そんな会話から始まった今日の部活だから、アタシはなんか気が重くてね…。
親友のTちゃんが心配して、声を掛けてくれたよ。
「ねえねえケイちゃん、元気ないよ?どうしたの?」
「あっ、うん。なんでもないよ」
「なんでもないようには見えんかったよ。悩みがあるなら、アタシが相談に乗るよ。いつもケイちゃんに助けてもらってるし」
「…ありがとうね。簡単に言うと、N先輩は意外と嫉妬するタイプなのが分かった…って所かな」
Tちゃんはその言葉で全てを分かったみたい。流石、本当は私立の進学校に行ってもいいだけの頭の良さを持つ女の子だなぁ。アタシとは天と地の差だよ、トホホ。
「Mくんは、アタシもちょっと気になってたの。アタシも存在を知ってるだけだったけど、2年生から途中入部する勇気なんて、なかなかないよね。でも部活に来ても同期の男の子はいないし、まだN先輩とは打ち解けてないし、1年の男の子も自分の事で精一杯だし、サックスの先輩からは厳し目に指導されてるし。Мくん、すぐ辞めちゃうんじゃないかと思ってさ…」
「でしょ!?だからアタシ、Mくんと同じクラスになったから、せっかく吹奏楽部に入ってくれたのに、辞めたいみたいなこと言ってたから、引き止めなきゃと思って、一緒に音楽室に行こうって誘ったの。そしたらN先輩は彼氏でもないのにそんなことするな、って…」
「N先輩がそう言ったんだね。確かにケイちゃんが、他の男子と2人きりで歩いてるのを見るのは嫌かもしれないけど、同じ吹奏楽部じゃん!ケイちゃんはMくんのために気を使っただけなのにね。…実はアタシ、ちょっとN先輩が苦手なの。ケイちゃんだけにしか言わないから、2人だけの秘密だよ」
Tちゃんはそう言ってくれたよ。
アタシもN先輩に告白されて、嬉しくて付き合ったんだけど、ちょっと嫉妬深い所を見て、この先不安になっちゃった。
一つ上の先輩方も、人数が少ないのに、あまり仲が良くないし…。
でもアタシはアタシの考えがあるもん。
楽しい吹奏楽部にしたいし、Mくんも絶対に退部させないように頑張る!
第 4 章
遂に夏のコンクールを迎えたよ♪
Mくんも苦しみながら、Y先生に励まされて、1年生の男子とも仲良くなって、居場所が出来たみたいなの。
アタシもN先輩がいない時を見計らって、Mくんに声を掛けてたんだ。
あと同じクラスっていうのは大きいね!
実は5月に、修学旅行があったの。
その時の移動中、結構お話しする機会があって、Mくんの考えとか、アタシの考えとか、話せたの。
N先輩のことも、彼女として、本音はこうなんだよ…ってオブラートに包んで伝えて上げたよ。
「…だから、N先輩はMくんに凄い期待してるんだよ」
「でもさ、サックスの先輩とは仲良く喋れるようになったけど、N先輩とは仲良く喋れないし、呼ばれたら緊張するし」
「それも、『俺はどうしても叱られて頑張ってきたから、つい同じように接してしまう、だけどMしか吹奏楽部の後を託せる男はおらんから、頑張ってほしいんだ』って、この前言ってたよ。まあ彼女として考えると、言葉と態度は裏腹ね、って感じかな〜なーんてねっ!」
「じゃあ山神さんの言葉を信じて、頑張るから。見ててね、これからの俺を」
やっぱり彼氏と、同じクラスメイトには仲良くしてほしいしね。
って、2人きりで3日目のホテルのロビーで出会った時に話したんだけど、こんな光景見たらN先輩はまた嫉妬するかもね(;´∀`)
放課後一緒に音楽室に向かうのは、残念ながらN先輩の横槍で止めたけど、でもMくんはアタシがN先輩と付き合ってるのを知らなかったらしくて、それなら2人で一緒に音楽室に行くなんてしちゃあいけんよ!と言ってくれたから、良かったような…。
あとね、多分なんだけど、やっぱりMくんはウブな男の子だと思うの(*´艸`*)
理科の授業の時に、アタシの班と、Mくんの班が隣合ったことがあるの。
その時に、偶々Mくんの背中とアタシの背中がくっ付いたの(。>﹏<。)
Mくんたら、慌てて背中を仰け反らせて、
「ご、ごめん!そんなつもりじゃなくて、あの、ごめんね!」
だって(^_^;)
そんなつもりってな〜に?って、ちょっとからかったら、ますます顔を真っ赤にしてごめんね、って繰り返すから、ちょっと可哀想になったから止めたけどね(;´∀`)
Mくんとお話しすると、N先輩とは同じ男子でも、全然違うのね、って思うわ。
そんなMくん、コンクールで演奏する曲で、一小節だけなんだけど、たった一人で吹くソロの部分があるの♫
夏休みの練習中に、その部分を吹いた時に、Y先生がわざとそこで止めて、
「聴いたか、今のバリサクのソロ。とてもバリサク始めて4ヶ月とは思えんの〜。M!いつの間に上手くなったんや?」
って、わざと褒めたの。
これはY先生ならではの、作戦かな?って思ったよ🎷
その時もMくん、凄い照れてたけど、その日からやる気がそれまでとは全然違うようになったしね୧(^ 〰 ^)୨
で、夏のコンクールは、なんとゴールド金賞だったんだよ〜(☆▽☆)
Y先生も嬉しかったし、アタシ達も嬉しかったし、気になるMくんも何かよく分からんけど、って感じでハイテンションになってる(。•̀ᴗ-)✧
もうMくん、吹奏楽部を辞めたいとか、言わないよね、きっと( ꈍᴗꈍ)
第 5 章
2学期になって、体育祭の演奏が終わって、次は文化祭!って時に、ちょっとした事件が起きちゃった…。
ある日練習に向かったら、Tちゃんが泣きながら下駄箱へ走って行くのを見掛けたの。
何があったのかな?と思って音楽室に入ったら、Mくんが一人だけ。
「Mくん!Tちゃんに何かしたの?」
って、ちょっと強目に聞いちゃったんだ。
「えっ、俺も知らないよ!」
Mくんが言うには、音楽室に着く寸前に、N部長が半笑いしながら飛び出してきて、何があったんだ?と音楽室に入ったら、Tちゃんが体育座りで泣いてたんだって。
で、Mくんが声を掛けてみたけど、Tちゃんは大丈夫!とだけ言って、だけど荷物を持って泣きながら音楽室から飛び出して行った、そういう展開なんだって。
「だからさぁ、ここは親友のよしみで、今晩でもTさんに電話して、様子を聞いてみてくれない?」
「えっ、アタシが?」
「どうも状況的に、N先輩がTさんに傷付くことを言ったんじゃないかなと、思うんだよね。そんな時は、やっぱり彼女の出番でしょ?」
「えーっ、都合の良い時だけ、アタシを先輩の彼女として扱ってない?MくんがTちゃんに電話すればいいじゃん」
「…んなこと、出来ないってば!クラスが違うから、電話番号も知らないし」
「それを言ったら、アタシだってTちゃんとクラスは違うけどね〜」
「とにかく、Tさんには元気になってほしくて…。ねぇ、頼むよ!御礼するからさ」
「そこまで言われちゃ、女がすたるね、なーんてね。うん、分かったよ。今夜電話してみるよ。明日、結果を教えてあげる」
「ありがとう〜!」
「でも、そんなにTちゃんのことに、一生懸命になるのは、もしかしてMくん、Tちゃんのことが…好き?」
もうMくんは分かりやすいから、顔を途端に真っ赤にしながら、
「ちっ、違うよ!違うって!純粋に、女の子が泣いてしまうなんて、よっぼのことじゃん?だからさ、あの、その…」
…そっか、Mくん、Tちゃんのことが好きなんだね。
分かったよ、Mくん、アタシ頑張るからね。
(次回へ続く)
サポートして頂けるなんて、心からお礼申し上げます。ご支援頂けた分は、世の中のために使わせて頂きます。