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オランダで心理専門家が考える子どもの発達と教育のこと

発達障害 気づき・理解・支援へ

 発達障害とは、生まれつき脳に機能障害があることによって、発達に偏りが見られる障害です。知能的に特に問題をもつのではないにも関わらず、社会生活の中での行動に得意不得意があり、成長において様々な凸凹がみられます。就学を機会に、自分だけ、また親と自分だけの世界から、他の人や周囲との関わりが増えると、そこで期待される行動との不適合やミスマッチが起こり、生活に支障が生じてくるのです。

例えばこんな様子が見られたりします。

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しかし、このような事は実はどの子どもにも起こりうることですね。集中できない子、忘れ物が多い子、怒りやすい子、思いやる気もちはあってもうまく表現できない子、様々な子どもが、これまでも家庭や教室で試行錯誤を繰り返しながら成長をしてきました。時代は変わっても成長は変わらず、全ての子供に、また人に生じていますし、その支援も行われています。

どんな子供にもメリットのある支援を考える

クラスには、様々な子供がいます。中には部分的に発達が遅い子供も当然います。どんな子ども達にも過ごしやすい環境作りは、十分に発達している子供にとっても過ごしやすく、また更に発達を促す環境である、というのは「ユニバーサルデザイン」の理想的社会の概念です。

全ての子供や大人が同じ凸凹を持つわけではありません。だから、この凸凹は個性とも考えることができます。同じ型の子供たちを育てていく社会よりも、様々な子供たちを見守り、違いのなかで発達を相互に促す社会は持続可能な社会とも言えます。

またこれは、個人差の原理からも言えます。心と体の構造や機能に関して、全ての人が同じ時期に同じ水準に到達するわけではなく、発達の速度や仕方には個人差があります。これは遺伝や環境に影響を受けて、次第に個性となって示されます。(高橋、中川 「生涯発達心理学」2017)

人は生涯かけて発達し続ける

心理学でいう「生涯発達」とは、“人は育つなかで一生涯かけて育ち続ける”という意味を持ちます。私たちはつい発達というと、子供時代にのみ生じて、成人してしまうと出来上がってしまった人間のように捉えがちですが、いえいえ、私たちは毎日毎分、体も心も発達し続けているんです。

また、発達が幼児期を基礎にした固定的な一続きのもの、と捉えてしまいがちですが、環境によって私たちはどんどん発達し、変化し、成長しているのです。素晴らしいですね。

発達障害の子供たちも発達・成長・変化し続ける

つまり、発達障害の特性を持って、小さな頃に頻繁に見られた子供の問題となるような行動も、環境によって大きく発達・成長し、変化し続けていくのです。私は仕事柄、様々な形態(現地校、インターナショナルスクール、日本人校など)の学校に通うお子さんたちを見させていただくことが多いのですが、小学時に見られた困難が、周囲の支援により上手く対処の仕方を捉えて学び取り、のびのびと成長していく姿を見て嬉しく思うことが多々あります。

例えば、性格という言葉を心理学的に説明してみると、

先天的な性格は、遺伝的な要素を多く持ち、英語では「刻まれた」という意味を持つcharacter(キャラクター)と呼ばれます。

しかしこれが、後天的に環境によって様々な学びを得て、日々成長と発達をとげ、やがて仮面という意味を持つPersonarity (パーソナリティー)と変化していくのです。社会や周囲にあった仮面をうまくつけて、役割や立場にあった自分のあり方を身につけていくということです。

発達障害の有無に関わらず、どの子供にもその力が潜在的にあります。もちろん、そのスピードや発達の在り方は様々ですがその意味するところは、小さなうちに子供の可能性を固定として考えず、その可能性を奪わずに、ゆっくり発達をしていく姿を見守り支えてあげる大人と社会があれば、全ての子供が幸福感を持って育つことができるということです。

ではどんな風に?

ではどんな風に具体的に支援ができるのでしょうか。どの子供にとっても有益な支援の環境作りのヒントを次回からお伝えしたいと思います。


執筆 淵上美恵

オランダにて企業におけるメンタルヘルス対策、各種セミナー、駐在員とその家族のメンタルヘルスケア、カウンセリング、スクールカウンセリングを実施

組織心理コンサルタント、オランダ心理学協会認定心理士、スクールカウンセラー

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