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育児で得るスキル、育休で失うキャリア

助産師 Beniです。
助産師として働く中で、社会全体が女性の身体のことを理解できたら、
考え方や仕組みがアップデートされて、女性がもっと生きやすくなると考え、
日々考えていることや伝えたいことを綴っています。

今回は、子育て世代の就職問題についてお話しします。

先日、岸田総理が「育児休業中のリスキリング」について語った件で、いろんな意見が出ています。
「産休・育休の期間にリスキリングによって、一定のスキルを身につけたり、学位を取ったりする方々を支援できれば、子育てをしながらもキャリアの停滞を最低限にしたり、逆にキャリアアップが可能になることも考えられます。」との大家参議院議員の発言や、
「育児中など様々な状況にあっても、主体的に学び直しに取り組む方々をしっかりと後押ししてまいります。」と岸田総理の発言。
これらに対して各方面から「子育てはそんなに簡単なものではない。育休中に子育て以外のことをするのは無理。」「何のための産休・育休なのか」と反発が出ています。
岸田総理は、育休中に特化したものではなくリスキリングを希望する人に広くその後押しをする、との発言をしたと捉えると、世間の反応は切り取った部分に対してやや批判的に反発をしているようにも考えられます。
しかし、「なぜそんな反応が出たのか」を考えた時、育休・産休という言葉とリスキリングは現実的にも印象的にも相性の悪い言葉であるからだと考えられます。

育児に専念するために一旦社会から離れることは、確かにブランクはできるでしょうし、その間最前線でバリバリ仕事をしている人との差ができてしまうことは容易に想像できます。
育児休業を取得する理由は、金銭面だけでなく、その時期にしか接することのできない我が子の成長過程に寄り添いたい、家族との時間に価値を感じ家族と共有する時間を大切にしたい、など人によって様々ではあるでしょう。
決して育児休業は社会から外れるお荷物でも、スキルダウンでもないはずです。
でも、もし、女性が一度職場を離れたら、希望する業務内容に復帰できるのか、再就職先は見つかるのか。
それは容易ではないのです。

看護師時代の同僚は、出産を期に一旦退職し再就職先を探したものの、子どもが小さいことを理由にされてなかなか採用が決まらないと、と嘆いていました。
面接の際に「子どもが熱を出したらどうしますか?」と聞かれ、周囲に頼れる親や親戚もいないため返答に困ったし、明らかにそういう場合に休んじゃいけない空気を感じた、と話していた友人もいます。
そのほかにも、子どもが熱を出したときにはいつも病児保育かファミリーサポートにお願いしていたが、その日はどうしても預けるところが見つからず、やむを得ず自分が仕事を休んだ際に、給与の項目の中にある「皆勤手当」がなくなり3−4万ほどの給与が引かれていたとの話をしていた同僚もいます。
子どもを育てながら働くことが大変なことは周知の事実なのに、職場において小さいこどもを抱える母親は歓迎されていない、そんな風潮を感じます。

“産休・育休中のリスキリング”に違和感を感じるのは、産休・育休を経た女性たちの就職先が見つかりにくかったり、ポストを失ったり、給与が下がることを、子育てを望んだ本人たちのせいにしているような流れを感じるからではないでしょうか。
産休・育休中で起こる不具合はリスキリングをして自分たちで自分たちの可能性を広げてください、という考えが根底にあるのではないか、そう感じてしまいました。

でも、実際、国家資格のある看護師でも子どもが小さいことを理由に困難な状況に直面しています。
資格云々、という事柄では解決できない子育てママたちの就業問題が潜んでいると考えます。

病児保育の施設充実や子どもが病気で休んだときの給与の補填、子どもが体調不良の時に申請できる休暇の拡張、子育てママを雇っている事業所への助成金。。。
素人考えではありますが、そういった制度の充実が女性たちの就労支援につながるのではないか、と考えます。

そもそも、妊娠・出産を経て心身ともに疲弊しながら、24時間自分がお世話をしなければ命を落としかねない小さな生物を育てている状態だけでもすごいことです。
日々、家事をしながら育児をし、家族の健康を担っている女性たちのマルチタスクのこなし方は素晴らしいです。
彼女たちによりチャンスを、と思うのであれば、彼女たちが安心して家族を見つめながら就業できる環境・制度を作ることも求められていると考えます。






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