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流れが変われば子どもが増える

助産師 Beniです。
助産師として働く中で、社会全体が女性の身体のことを理解できたら、
考え方や仕組みがアップデートされて、女性がもっと生きやすくなると考え、
日々考えていることや伝えたいことを綴っています。

今日は、流れを変える少子化対策について考えていこうと思います。

2023年4月現在、少子化対策について様々な案が出されています。
例としては、子ども手当の所得制限撤廃や分娩費用の保険適応、育児休業中の給料の実質全額保証などが挙げられます。
政府の考えとしては“これからの6ー7年が少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンス”だそうです。

少子化問題は世界各国でも課題となっていますが、ここでは「成功例」の外国の例に注目したいと思います。

ハンガリー
2011年から2020年の間で合計特殊出生率1.23から1.56に改善。
・3人目出産でローン返済免除(9年間で3人出産すると約350万円。ハンガリーの平均年収の2.5倍)
・3人目出産で不動産購入に補助あり(平均年収の約3倍)
・4人目出産で所得税が0になる
・体外受精は全額補助対象(第一子は5回、第二子以降4回まで)
・3年間の有休育児休暇(祖父母にも育児手当がでる)
・学生ローン減免(出産人数によって減免額が増額。3人出産で全額減免。)
・子ども3人以上の家庭の新車購入費補助あり
※GDPの約4.7%を少子化対策に充てている。(日本は約0.8%)

ドイツ
1900年台1.2まで落ち込んだ合計特殊出生率が、2015年以降1.5以上に上昇。
2021年度1.58。

・両親手当(出産後最大14ヶ月まで取得可能。ただし、うち2ヶ月分をもう片方の親が取らないと権利がなくなる)
・両親手当を受けながら時短勤務で働く場合、給料の満額を保証。

イスラエル
2021年度の合計特殊出生率3.01。
・18−45歳の女性は、子ども2人までの生殖医療費が無料。
(卵子提供の場合54歳まで可能。)

フランス
1993年度の合計特殊出生率1.66から2019年度2.02。2019年度1.87。
EUの中でも最も高い。

・子育て世代(特に3人以上の子どもがいる世帯)の所得税減税(N分N乗方式、つまり子どもが多いほど減税となる)
・家族手当(第3子から支給、所得制限有だが大半の世帯が支給対象)
・子どもを3人養育すると年金が10%加算
・就労自由選択補足制度(子育てに際しどう働くか選べる、全休・半日・週3−4勤務など)
・保育方法自由選択補足制度(保育ママに預ける選択をした場合の補助金)
・妊娠出産から産後リハビリテーションまで全面無料(出生前診断含む)
・育休をとる父親の賃金を母親同様の有給扱いとし、80%保障
・不妊治療公費化(43歳まで)
・高校までの授業料無料(大学は少量の登録料のみ)返済不要の奨学金制度
・認定保育ママ(3歳まで預けるところ)・学童保育無料
・事実婚の社会保障対象へ、非摘出児という言葉を民放から削除
(参考:東洋経済新聞2023年1月23日「日本人が知らないフランス「少子化対策」の真の凄さ)

各国の文化や宗教観、政治の在り方など日本と異なることも多いため、丸々真似することがいいとは思いません。
けれど、これまで「女性の社会進出が進むと少子化になる」と考えられてきましたが、近年の各国の傾向から「男女間の不平等が広がると少子化が広がる」ことがわかってきているそうです。
そして、「男性の育児参加が進むほど出生数が増加する」ことも明らかとなってきているようです。
そう考えると、ある大臣が言っていた「日本の少子化は晩婚化のせい」という発言は、あまりにも浅い分析なのではないかと思ってしまいます。

潤沢に財源があるわけではない日本の状況において、とりあえず実現できそうで人気の出そうな政策を打ち出すのではなく、各国の成功例やエビデンスをもとに、多少地味であっても実績や費用対効果の高い政策を打ち出していくことが必要なのではないでしょうか。
そして、その施策については、国民に対して政策の理由や期待される効果を説明すること。
これが子育て世代以外にも少子化対策に参加してもらう一助となると考えます。

「制度はあっても現場の雰囲気や理解度が追いつかないから利用できない」という声もあるでしょう。
でも、制度すらなければ、人の価値観に変化をもたらすことや社会の風潮を変えることは難しいように思います。
まず制度を作る、そして実際に行う人が増えていく。
それにより、今は少数派の考えが主流になっていくのだと考えます。
一見、それは途方もない道のりに感じられますが、人の行動は意外と施策次第で動かせるものだということを最近ニュースを見ていて感じました。
例えば、GO TO トラベル。感染を恐れ、マスクを手放さず人混みを避けて感染対策に迫られる一方で、GO  TOトラベルで多くの人が旅行に繰り出しました。
そして、マイナカード申請。マイナポイント計2万ポイント付与、というキャンペーンが老若男女に関わらず多くの人に申請を促しました。
また、日本人は“みんながやるなら”という周りと足並みを揃える特徴のある集団でもあります。一旦ムーブメントを作ることができれば、流れは大きく変わっていくのではないか、とも期待できます。

現在子どもが増加傾向となっている国々も、一旦は出生率が落ち込み、そこにテコ入れをしてきた経緯があります。
そして、そのテコ入れの結果、政策と共に定着したのは、男性の育児への参加率の向上や子育てと育児を両立しやすい働き方の仕組み、そして社会がそれを受け入れる思考の転換であったと考えます。
子育ては1人2人では不可能です。
子育て世代だけが背負うものでもないと思います。
施策により世の中の流れが変わり、子どもが増える。
どんな政策が打ち出されるかとても重要です。(だからこそ、国会で座っているおじさんたちや仕事人間で生きている人たちの頭だけで考えるのではなく、もっと子育ての当事者からの意見が汲み上げられてる実感が欲しいな、という希望もあります。)
政府の考えるこの6−7年のラストチャンスは文字通り踏ん張りどころと言えるでしょう。
少子化改善。今度は日本の番だと期待し、今後の政策に注目していきたいと思います。



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