マガジンのカバー画像

エッセイ・コラム

129
感じた事をいろいろ書いていきますので、読んでみてください。
運営しているクリエイター

2018年1月の記事一覧

これは多分拉致と言ってもいいはずだ

これは多分拉致と言ってもいいはずだ

真夜中。コンコンと部屋の窓を叩く音がした。
何?と声を出した瞬間、わたしはしまった!と寝ぼけた頭でもそう思ったことを覚えている。
この当時、わたしの部屋は一階にあった。窓の外に小さな木があり、丈夫な枝葉のお陰で外から部屋の中が見えることはなかった。
それが幸いして、いやむしろそのせいで、わたしの友達は玄関に回らず直接窓をよじ登って来る。
「あけて」
ほらきた。今更ばっくれることもできずに窓を開けた

もっとみる
サロン

サロン

フランスが発祥の『サロン』
文化人が談笑を楽しむために提供された社交の場。

ある日noteの中にいて、サロンを思った。
それぞれの創作物やお気に入り、持論や発見を片手に、思い思いに何かを語る情景。
それは出入り自由な場所で、その中にいても時に誰それと語り、時にひとりでもの思いにふける。盛り上がるも良し、静かに本を読むも良し。
ひとりひとりがそこに居る人達と、ひとりの時間を楽しむのも悪くない。

もっとみる
消息の気になる人がいます

消息の気になる人がいます

 達者でいるならば、もう90に手が届くと言ってもいい。
 仮に彼女のことをYoko Haginoと記載しよう。

 洋子は愛したイギリス人の夫と死別した後も、自由闊達にロンドンで暮らしていた。確かに夫は充分な遺産を残した。けれど彼女自身も日本人旅行客のガイドとして、生活に潤いを与えるための金を稼いでいた。
 洋子の故郷は関西で、その日本語は生粋の関西弁だった。気取らない性格の彼女は、若者を引き連れ

もっとみる
振り返り

振り返り

 それ程気にする必要は無いと思いながら、今回ふたつの言ってみれば連作を半ばドキドキしながら投稿した。

 『桔梗』『葵』は過去作『流れは塵と共に』の続きのような位置付けだった。
 『桔梗』の冒頭に記載したように、そもそもこの小説はその中にある種の差別を潜ませている。これは現在もタブー視されていることを考えれば、わたしにとって物語として表現することが精一杯だった。
 わたしが歴史の勉強を始めた動機も

もっとみる
故郷に実家があるということ

故郷に実家があるということ

 昨日実家へ行ってきた。
 毎年恒例、母を囲んでの身内の新年会だ。
『囲んで』と書いたが、母は囲まれてはいない。趣味の料理はオリジナルレシピがまだまだ増え続け、それを振舞うのが母の喜びだ。
 どうしてあんなに元気なんだろう。85歳になっても、これまたライフワークと位置付けたボランティアのために、全国を飛び回る。
 妹にどこか悪いところはないのか?と聞いてみた。
「入れ歯の調子が少し… 」と笑うばか

もっとみる