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落下する夕方


「木端微塵だよ。もう、言われる言われる。『期待されるのは大嫌い!』とかさ」
健吾は華子の口調を真似た。
「期待?」
「『好意を注ぐのは勝手だけれど、そちらの都合で注いでおいて、植木の水やりみたいに期待されても困るの』」
私は相槌に困った。
「容赦ないのね」
まったくな、と言った健吾の声は、座礁した船の船底みたいにいたいたしい。

落下する夕方 / 江國香織


ひとに絶望すると、条件反射的に思い出す一節。

自分自身を納得させるために。



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