第4回 発酵食品の安全を守る3つのポイント+α
発酵食品を安全に作るためには、科学的に根拠のある方法を守ることが大切です。
食品製造の現場で特に重視されている「安全性を確保するための基本の3つのポイント」を知っておくと、家庭でもより安心して発酵食品を楽しむことができます。3つのポイントとは、Aw(水分活性) 0.96未満、かつ、pH 4.6以下、中心温度80度達温後15分以上の加熱殺菌(殺菌温度により時間が変わります)です。これらを、2つ以上を組み合わせることで食品の安全性を大幅に向上させられます。
実は、伝統的な発酵食品には、これらの科学的なポイントが自然と取り入れられており、最新の知見から見ても非常に理にかなった方法が使われています。
安全性を確保する基本の3つのポイント
1. 水分を調整する(水分活性 Awを0.96未満に)
微生物が活動しにくい環境を作るため、自由水(微生物が利用できる水分)を減らします。例えば、食品を乾燥させることで水分そのものを減らしたり、塩や砂糖を加えて浸透圧を高め、微生物から水分を奪う方法が効果的です。
ただし、具体的なAw値を計算するのは少し複雑なので、ChatGPTさんなどのAIに計算を依頼すると便利です。
2. 酸性にする (pHを4.6以下に)
酢やクエン酸などの酸を使って、微生物の増殖を抑えます。ただし、酸の種類によっては味が変わるので、お好みに合わせて工夫してください。
液体なら、どこのご家庭にもあるpHメーターで測定できます。
3. 加熱して殺菌する (例えば、中心温度80℃以上で15分以上)
加熱することで、雑菌や有害な微生物を減らします。温度が高いほど短時間で殺菌できますが、食材の食感や風味が変わることもあるので、加減を見ながら進めてください。
これらのポイントを2つ以上組み合わせると、より安全性が高まります。
安全に作るための、その他の工夫
4. 雑菌を減らす(初発菌数の低下)
材料や容器に付着している雑菌をできるだけ減らしましょう。容器は煮沸消毒をしたり、原材料をアルコールなどで軽く拭くと安心です。
5. 温度管理
発酵や保存の際、適切な温度を保つことも重要です。例えば、冷蔵庫で4℃以下に保つと、微生物の活動を抑えられます。
伝統的な発酵食品から生ぶこと
昔から作られてきた漬物(現代の漬物ではないもの)や味噌には、安全に発酵食品を作るための知恵が詰まっています。例えば、漬物や味噌では、食塩を加えて水分活性(Aw)を下げ、乳酸発酵によってpHを低くすることで、微生物の繁殖を抑える工夫がされています。
味噌は、原料大豆を蒸煮する工程で、初発菌数も低下しています。
鰹節では、まず魚を加熱して乾燥させることで腐敗を防ぎます。その後、乾燥に強い「カツオブシカビ」を使って発酵させることで、さらに水分を減らしながら、カビの酵素がタンパク質や脂質を分解し、独特の旨味や香りを生み出しています。
このように、伝統的な発酵技術には科学的にも理にかなった工夫が多く含まれています。家庭でもこれらの知識を取り入れることで、より安全でおいしい発酵食品作りを楽しめます。
意外な雑菌汚染源
前回、生姜の雑菌リスクについてお話ししましたが、実は、唐辛子や小麦粉などの乾物にも意外と多くの雑菌が含まれています。これらを何も対策せずに発酵させると、思わぬトラブルが起こることがあります。
例えば、アルコール消毒したタッパーに小麦粉と湯冷ましの水を混ぜて作ったパン生地を放置してみると、最初の1~2日は発酵が進み、酸っぱい香りがして「良い感じかも」と思えるかもしれません。しかし、3日目くらいになると、「これ、大丈夫かな?」と不安を感じる状態になることがあります。さらに5日ほど経つと、表面がカラフルな状態になる場合もあります。これは、雑菌やカビが繁殖してしまった結果です。
(小声)米麹でも試してみるといいかもしれませんね。フタは密閉しないでね。
こうしたリスクを減らすためには、正しい知識が必要です。発酵食品を作る際は、容器や材料を適切に消毒したり、水分活性やpHを調整したりすることで、雑菌やカビの繁殖を抑えることができます。科学的な知識を活用すれば、より安全に発酵食品作りを楽しめますよ!
次回は、今回ご紹介した方法を使って、安全に自家製発酵生姜を作る実験をしてみます!(実験中のため、更新まで4,5日かかります)