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みんないろいろあるのである

美大受験予定のbabyちゃん(17歳娘)が、
初めてヌードデッサンをした、と
見せてくれた。
絵を見る限り、わりと歳がいった女性で、
おそらく経産婦かな、という印象。

ヌードデッサン、わたしはほとんど、
したことがないが、夫は学生時代は
毎日描いていたと思う。

「モデルさんは、月1で大阪からくる」

とbabyちゃんが言うので、
まあこの田舎ではヌードモデルはなかなか
居ないだろうな、
とわたしが言うと、boy(14歳息子)が、

「そんなん、全国探しても、何人かしか
居ないだろ」

と言った。
boyにとっては、人が絵を描くために
全裸になる仕事がある、というのが
ちょっと信じられないようだった。

「そんなことないよ、普通にいっぱい居るよ」

と言うと、目を丸くした。 

「ちなみにお父さんもやってましたが」

と言うと、

「まじかよ」

とboy&babyちゃん。
お母さんがやっていた、ならちょっとショック
かもしれないが、お父さんならまあいいか。

夫は、わたしと出会ったばかりの
学生時代、ある彫刻家専属の、
ヌードモデルのアルバイトをしていた。
マンツーマンの依頼だったので、
できたのだろうが、普通は360度、ぐるりと
絵を描く人に囲まれて、全裸でポーズを
とる仕事だ。
誰でもやれる仕事ではないよな、と思う。

自分のカミングアウトを勝手にされながら、
飯を食べていた夫は、

「あれは割のいいバイトやった」

とだけ、言った。
たぶん、お金が良かったからやっただけで、
それ以上でも以下でもなかったのだろう。
たのしい、面白い、勉強になる、とかは
聞いたことがなかった。

わたしの友人(女)は、昔、ヌードモデルを
やっていた。
ちゃんと正職でお堅い仕事をしていて、
ヌードモデルはアルバイトでたまにしていた
程度だったが、

「すごくたのしい。天職だと思う」

と言っていた。
どんなところにたのしさを感じるのか、
という事は聞かなかったし、友人も
言わなかった。
お互いに、聞いた(言った)ところで、
理解できない、と思ったのだ。

世の中には、その仕事なり、
立場なりを、経験したことののある人にしか
わからない境地、というのがあると思う。

だいたいの仕事は、どんなところが楽しくて
どんなところが苦労なのか、と少しは
想像できるが、
ヌードモデルのような、ちょっと特殊な
仕事については、経験してみないと、
わからない。想像もつかない。

経験してみないとわからない、という
点で言えば、

介護をする
介護をされる
肉親の死に向き合う
事故にあう
障がいを負う
子供が障がいを持って生まれる
子供が不登校になる
親がボケる

とか。他にもたくさんあると思う。
これらには、経験してみた人にしか、
わからない境地があるのではないか、
と思ってしまう。

たまに、この、
経験してみた人にしかわからない境地
を無視して、すべてのことを
自分のものさしで、測ろうとする人がいる。

だいたいの「けんか」とか、
「人間関係のしんどさ」は、
この困ったちゃんから、派生していくのかも、と思う。

例えば、この友人。
ヌードモデル
と言う仕事。彼女は誇りを持って、天職、
と思ってたのしくやっているのに、

人前で服を脱ぐなんて、よほどお金に
困っているのかしら

みたいな、自分のものさしを押し付けに
くる人達がいて、やるせ無い気持ちに
させられることがあったたかもしれない。
服を脱いで行う仕事全般に対する偏見。

例えばわたし。
ナルコレプシーという睡眠障がいがあり、
運転をしないのだが、
見た目が普通にみえるので、

子供もいるのに車を運転できないなんて。
早く免許とったほうがいい!

と言われたことは一度や二度ではない。
大人はみんな運転ができるもの、という
思い込みでぐいぐいくる。
もう説明するのもめんどくさくなり、

「ですよねー」

と笑顔で応える。
思うだけならいい。
でも、人に自分の考えを、口に出して
伝えるときには、

いろんな人がいるぞ。
なにかこの人には事情があるのではないか。

という思考を、一瞬、挟んで欲しいなと思う。
みんないろいろあるのであり、
経験しないとわからない境地を、
ずかずかと簡単にふみこえてはいけない。

わたしが、だれかに
〜しないほうがよい 〜したほうがよい
ということがあるとすれば、

自分で死なないほうがよい

ということだけだ。

しかし、かく言うわたしも、こどもたちに
対しては、だいぶ、
「ジャッジマン」
をやってきたな、という自覚がある。

それはダメだろ
それはいいね
違うんじゃない?
そっちにしときなよ

親は、こどもに安心安全な道を選んで
欲しいがために、よくジャッジマンになり、
先回りしていろいろ言ってしまう。
これ。
ほんまにいいことありませんから。

小さい頃は子供たちも素直に聞いていたが、
今に至っては、babyちゃんは、

「あーはいはいはいはいはいはい」

と目を合わせずに言う。
boyは、

「それって、あなたの感想ですよね?」

と、やんわりと笑いを含んでの反論。
ユーチューバーのひろゆきのマネかな。
さすが、繊細さんの彼は、誰も傷つけない
すべを知っている。例え親であっても、
傷つけたくないのである。

でも、ホッとしている。
それで、いい。
親なんか、論破してまったらいいんだ。

おじいちゃんさま
イラスト使わせていただきました。
ありがとうございました!






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