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ヨーロッパのエネルギー事情の現在地(日経新聞2022.4.21朝刊参照)から、日本のエネルギーを思う

1. 今年1月時点のヨーロッパのエネルギー事情

今年の1月2日に投稿した以下の記事の中で、EUが原子力と天然ガスは「持続可能」という方針を打ち出したことを紹介しました。

その理由は、ズバリ、そう決めることがEUにとって有利だからです。

図1より、2019年時点で、EUの電源構成は再生可能エネルギー比率が既に35%となっています。

そこに原子力と天然ガスを加えると80%以上ととなり、その2つを「持続可能」とすることで、他の地域と比較して、エネルギーの環境対策で圧倒的に有利な立場になれるのです。

ちなみに日本は、再生可能エネルギー、原子力、天然ガスの合計で約60%であり、まだ約40%を石炭・石油で賄っているという状況です。

さらに、EUの主要国の事情は、以下の通りです。

【ドイツ】
再生エネルギーが約40%、天然ガスが約15%である。現在、約30%を占める石炭火力発電を2038年までに廃止する方針があり、また、約15%を占める原子力を2022年までに全廃を目指している。

【フランス】
70%以上が原子力、20%以上が再生エネルギー、10%弱が天然ガスである。

【イタリア】
天然ガスが約50%、再生エネルギーが約40%である。原子力発電は既に全廃している。

【EU27カ国全体】
EU全体では、再生エネルギー約35%、原子力約26%、そして天然ガス約20%の合計で電源の81%を占めています

EU27カ国の利益にあるところを決めて、主要国が、それに合わせてルールを決めて、世界に広めて主導権を握ろうとしていうようでした。。。。

が、ロシアのウクライナ侵攻により、事情が大きく変わりました。

ロシアから天然ガスが入って来ない。。。。

【参考、引用website】
◆Business Insider website: COP26「脱炭素」と原発推進の不都合な現実…ヨーロッパ主要国が急進する理由は「電源構成」でわかる


2.今日の日経新聞記事「欧州、発電排出4%拡大」

先程お話したように、ロシアから天然ガスが入って来ないのが、今のヨーロッパです。

そういう前提で記事を読むと「なるほど」とより今の事情が理解できるのではないでしょうか?

◆[第4の革命 カーボンゼロ] 欧州、発電排出4%拡大 危機が映す脱炭素の試練 エネルギー転換、世界秩序揺らす【日本経済新聞2022.4.21朝刊】

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この記事は、ロシアのウクライナ侵攻により、天然ガスや石油の供給不足からエネルギー安全保障の意識が高まり、化石燃料の増産が広がり、カーボンゼロの試練を迎えているという内容です。

「エネルギー安全保障」とは、社会経済活動に必要な石油や天然ガス、電気等のエネルギーを妥当な価格で安定的に確保・供給すること(日経新聞の「きょうのことば」より引用)である。

その結果、EU各国は、当面はカーボンゼロよりも安全保障に目を向けているようです。

◆きょうのことば「エネルギー安全保障」

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2月24日の侵攻後、ヨーロッパで石炭火力の発電が増えているとのこと。

侵攻前後の1カ月ずつの比較でEUの発電に占める石炭火力の比率は侵攻前から侵攻後は3%も上昇したようです。

なかでも、ドイツは、今年いっぱいで原子力発電の閉鎖を予定していましたが、ロシアからの天然ガス輸入が不安定になるため、まずは石炭火力比率が12%も上がっているようです。

さらに、原子力の稼働延長も視野に入れているようです。

EUは、2030年のCO2排出量を1990年比で55%以上削減する方針で進めていましたが、反対に4%増加に転じているとのことです。


3.コメント

EUは、各国の事情を踏まえつつ、原子力(実質CO2発生ゼロ)と天然ガス(CO2発生、石炭の1/2)にシフトしている矢先にロシアのウクライナ侵攻が起こりました。

EU主要国のエネルギー事情の違いが、対ロシアやエネルギー戦略の違いとなっていることが非常によく分かります。

2019年のデータですが、例えば
【ドイツ】
再生エネルギー約40%、天然ガス約15%、石炭約30%、原子力約15%
⇒石炭と原子力を減らして、再生エネルギーや天然ガスへのシフトを予定していたが、天然ガスシフト分をとりあえず石炭で賄う。
また、原子力の

【フランス】
原子力70%以上、再生エネルギー20%以上、天然ガス10%弱
⇒天然ガス比率が非常に小さく、原子力に依存しているので、今回、他国と比較すると影響が極めて小さいと思われます。

【イタリア】
天然ガス約50%、再生エネルギー約40%、原子力発電 既に全廃

⇒天然ガス比率が大きく、今回、影響がかなり大きいのでないかと考えられます。

エネルギー自給率を比較してみると、フランス60%、ドイツ40%、イタリア30%に対して、日本は10%しかありません。

今回、天然ガスについては、日本にも直接的、間接的な影響はもちろんある上、円安傾向にもなっています。

さらには、原子力の稼働が下がっており、今後のエネルギー政策に関して、明確な指針と具体的な施策がないと、カーボンゼロだけでなくエネルギー安全保障面でも、世界から置いて行かれそうな気がしてなりません。

何とか日本政府にこの難局を切り抜ける方策を提示して欲しいと考えているのと、民間企業のエネルギー事情を根本的に変革するような新技術の導入を強く期待しています。


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