【短歌10首連作】短夜を焦がす
短夜を焦がす
白桃のごと剥きだしの吾になる麻縄でかき抱かるるとき
縄締まり声を漏らせば耳元であなたしづかに嘲り笑ふ
目隠しの闇にぼろんと三味線が響く 吊り縄きしんで鳴くも
この音に震へるようになったねと軽く木撥で頬をなぶられ
打たるれば花火が上がる ひりひりと夜空を焦がし散りゆく花火
足指の間を縄は滑りゆき解かれたあとの眩しさ 驟雨
しんと静かな林に入る心地せりあなたの黒い髪に包まれ
くちづけるふりして噛まれ、いつまでも鎖のやうな味が消えない
夏の果て 女王様てふ異名もつをんなに附いてゆけたら遠く
終電はもう疾うになく縄痕がネオンにあかく照らされてをり
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