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「アルバム単位」で音楽を聴くということ

10年ほど前、洋ロックにハマり始めた頃、某レンタル屋で借りていたCDはもっぱらベスト盤だった。

CDを漁りまくって試聴コーナーで1曲目を聴く。これによって厳選された自分の好みであろうアーティストのベスト盤を借りて、一度全部聴く。そして、2回目以降は気に入った曲のみを聴く。そして、ノる。高校生の僕はベスト盤が最強、最も優れたアルバムだと思っていた。だってベストなのだから。数多くあるアーティストの曲の中で、選ばれし良曲のみ収録されているのだから。


そう、当時は「曲単位」の聴き方しかしてこなかったのである。


そして現在、26歳ワーキングホリデー真っ只中の僕。サブスクや動画サイトで気軽に音楽が楽しめるようになって以降、レンタル屋にCDを借りに行くということはほぼなくなり、Spotifyなどで音楽を楽しむようになった。大抵聴くのは、ベスト盤以外のオリジナルアルバム。ベスト盤、というものは、「一切」という言葉を出して良いほど触れなくなったし、いきなり一番好きな3曲目から聴くか!ってこともほぼなくなった。

音楽を、アルバムを通して「線」で楽しむということを心から理解できるようになったわけである。

各アーティストが工夫を凝らして配列されたアルバムの曲順には必ず何かしら意図が汲まれている。オープニングのアルバムの世界へ誘う楽曲、キラーチューンからキラーチューンへつなぐブリッジの曲、アルバムにしか収録されていないような数十秒程度のインスト・・・順番通りに聴くことで、1曲1曲の良さがより際立つ。シングルでリリースされたことがある楽曲でも、アルバムに入ることで表情を変え、更に別の楽曲とinteractionを引き起こす。まるで曲と曲に全く途切れがないような演出、気づいたら次の曲に入ってた、なんてのもアルバムならではだ。過去の記事でも紹介したが、ゆらゆら帝国のアルバム、『空洞です』の7曲目から8曲目までのつながり方なんて脳みそとろけそうになる。


ベスト盤もこれはこれで曲順も考えてリリースされているのだろうが、結局はベストの寄せ集め。1曲1曲はキャッチーかつ響くものなのだろうが、曲の流れに緩急がない、故に前述したような「線」での楽しみ方をするには足りない。

まあ今でも時々はアルバムの特定の曲だけ聴くか、ってことはないことはないけどね。ただプログレだけはそれは絶対にない。プログレをベスト盤やブツ切れで聴くのは野暮だ。ジャケットを含めたアルバム全体の流れを楽しむ、そういうジャンルである。思えばアルバムメインで聴くきっかけになったのもプログレかもしれないな、ありがとうピンク・フロイド。

ちゅーわけで、普段アルバムを通しで聴く機会のない皆さんは、ぜひ試してみてほしい。一度ハマってしまうと音楽鑑賞がより楽しくなり、新たな世界も見えてくる。

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