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ネガティブをパワーへ

自分のウォークマンを持つようになった小5の時から日常的に音楽に触れる生活をするようになった。流行りに乗っかるために最初は有名音楽番組で流れるようなものを聴いていたが、やがて邦ロック、そして洋ロックに傾倒するようになる。音楽の世界はとてつもなく広い。まだまだ聴くことができていない過去の名盤がザラにある。死ぬまでに全てを浴びたいものだ。

ロックとは何ぞや、という問いへの解答は極めて難しいが、音楽ジャンルに限らず第三者の生き様に対しても「ロック」は形容詞として用いられることもある。こういった音楽に携わってきた人間たちは良かれ悪かれ武勇伝が多い。音楽と共に彼らの伝説についてググるのもロックファンの楽しみの一つなのかもしれない。

本日は、そんなロックミュージシャンのエピソードの中から、特に僕が震えたものを紹介させていただきたい。


世界で最も有名なメタルバンドの一つである、メタリカ

80年代~90年代にかけてアメリカの音楽シーンのトップを駆け抜けていたモンスターバンドで、若年層から中年にかけて今でも根強いファンが多く存在する。

このバンドが結成されたのは81年のこと。83年にファーストアルバム『Kill'em all』がリリースされるのだが、このアルバムのリリース前に、あるギタリストがバンドから外された。

メンバーから「どんな防音装置も貫く音」と称されたほどの圧倒的ギターの腕前があったにも関わらず解雇されたのは、彼が飛び切り級のトラブルメーカーだったからだ。酒やドラッグに関する問題が重なり、やがて他メンバーからの信頼を失っていった。他メンバーがレコーディングへと向かう中、自分は無理やり荷物をまとめさせられ、解雇・・・彼にとってこの半ば強制的な解雇は、人生で最も悲しい出来事といっても過言ではないほどのショックだったそうである。


ふざけんな・・・

なんで俺がこんな目に・・・


ロサンゼルスの自宅に戻り、ただただ失望する解雇された男。


すると、


ドッッドゥードゥドゥゥドゥウドゥン!!

ドッッドゥードゥドゥゥドゥウドゥン!!

ドゥードゥドゥンドゥードゥドゥドゥーー!!!!!


どこからともなくエレキベースの轟音が聞こえる。真夜中にも関わらずだ。近所迷惑も甚だしい。アパートの下の階からのようである。


うるせぇな・・・


ネガティブな感情が、普段からピリピリしている彼の怒りを更に増幅させる。耐えられなくなりついに近くにあった植木鉢を下の階に向かって投げつけたのだった。

「誰だよこの野郎!!」

ベースを搔きむしって騒音を鳴らしていた当人が演奏をやめる。アパートの隣人だったろくでなし同士は対面してすぐに罵声を浴びせ合うこととなったが、「ウマが合う」とはこのことだろうか。似たもの同士、そして双方ミュージシャンである彼らは結託した。そうして、一つの志を抱きながらバンドを結成することとなる。


「新しいメタルバンドを作って、メタリカを超える、それこそが俺ができるあいつらへの一番の復讐だ!!!」


若干の脚色は入れたが、大筋はこんなところだ。


そしてこの二人のろくでなしこそ、デイブ・ムステインとデイビッド・エレフソン。そして彼らが後に結成するバンドこそ、ヘヴィメタファンで知らない者はいないバンド、メガデスだったのである。

日本のメディアでも有名なマーティ・フリードマンもギタリストとして所属していたこのバンド。90年代初頭には大きな波に乗り、やがてメタリカも属するスラッシュメタル四天王と呼ばれる地位に成りあがった。「メタリカを超える」というコンセプトで作られたこのメガデスだが、果たして実際に超えられたかどうか、それは定かではない。だが、メタリカに並ぶレベルのバンドを彼らは築くことができたのだ。


前置きが非常に長くなってしまった。ネガティブな感情というのは一般的に「良くない」とされている。それに流されすぎてしまえば人を傷つけたり、間違った結果を生むことが多い。だが、そういった感情もバネにすることでものすごいパワーを生み出すことができるのもまた事実だ。憎悪、嫉妬、恐怖心・・・むしろこういった「負の感情」によって動かされる人たちも一部いるのではないかと思う。


オーストラリアに来てまもない頃、日本人のコミュニティでフリーランスで稼いでいる女と出会った。こういった人たちと会話しているとどうしても仕事の話、お金の話はついて回る。その流れで、「いやぁ、僕今あんまりお金なくて」みたいなことを言うと奴にこう返された。

「えぇ、どんだけお金ないのぉ~?」

彼女のこの言葉には明らかに嘲笑的意味合いが含まれていた。2年以上前にも関わらず鮮明に覚えているのは僕が比較手に根に持つタイプだからだろう。仏の心を持っている方ならなんとも思わないのだろうが、期間を経ようがイラッとするもんはする。いいとも。その感情を努力のエネルギーに変えてやろうじゃねぇか。今に見とれよ。てめぇなんぞ追い越してやる。





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