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あの日の記録

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エッセイともコラムとも違う、日記的な、覚えていたいエピソードの記録。
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路面電車でこどもギャングと道中をともにした話。

 世で言う三連休の最終日、家から徒歩15分の距離にあるカフェでひとり満喫したあと、本屋にいきたくなって路面電車に乗った。わたしの住むまちの路面を走る電車は旧型車両と新型車両が入り混じっていて、大体5本に1本ほどのペースで新型車両に乗ることができる。屋根がかかっただけの簡易的なホームでそこそこな列の最後尾に並び、待つこと数分、運よく新型車両に乗ることができた。空いている席に腰かけて、窓の外を眺めながらのんびり鈍行する電車の心地よさに微睡んでいた。  ひと駅かふた駅くらい進んだ

わたしが可愛いと感じたものを、可愛いと言われたときのしあわせ

 お気に入りのイヤリング。赤いビーズが散りばめられててキラキラ光る。わたしの広くて厚い耳たぶでもしっかり着飾ってくれる。友達が作ってくれていくつか買わせてもらったうちの1つ。  前の会社の友達が、出会って早々、その友達と遊ぶときはまだ付けたことがなかったこのイヤリングに気づいて、「かわいい」って褒めてくれた。わたしはその日、オレンジブラウンのニットに赤いスカートを履いていて、スカートの色に合わせたかったのって伝えると、そうだと思ったって微笑んでくれた。  その日の帰り道、

2018年9月6日のやさしさの記録

 二年と少し前、大きな地震があった。  私が住む地域は幸い被害は少なかったが、それでも家は大きく揺れた。部屋のクロスと外壁のコンクリートには亀裂が走ったまま、当時の被害を物語っている。  街全体が停電し、復旧には時間がかかった。その間、私たちは電気がつかず、お湯を張れず、テレビをつけられない中、不安な気持ちで過ごした。  期間は二日間程度だった。  その中で、様々な人々の強さとやさしさにふれた小さな体験を、当時を思い出しながら、今後も忘れないように記していこうと思う。

初対面の人たちが集い奏でるジャズセッションの虜になった夜

会社の先輩が主催するジャズバーのセッションを聴きに行ってきた。 そう広くはないけど、お酒や茶葉の缶がオシャレに飾られた店内には、想像以上に人がたくさんいた。 入り口すぐのカウンターでドリンクを注文すると、「お姉さんは何弾くの?」と紙を見せられて慌てて両手を振った。「今日は聴きにきました!」 既にセッションは始まっていた。トロンボーン、ドラム、コンバス、ピアノ。知らない曲だけど、先輩が楽譜を見せて、この曲だよって教えてくれる。 「この本は黒本って呼ばれてて、ジャズのスタ

初めてプロ野球観戦をした日の話

18時1分に席を立った。 「お疲れ様です、お先に失礼します」 慌ててロッカー室に向かうも時すでに遅し、中は帰宅を急ぐ人で賑わっていた。わたしのロッカーは入り口から1番奥、下から2番目、人が出ないと開けられない。 今日は生まれてはじめて、野球観戦をする日だった。 9階の事務所から地下1階まで階段を駆け下りた。エレベーターに乗れる気配がなかった。 野球を一緒に見にいくのは入りたての会社の先輩方。私含め5人中3人がファイターズファンで、グッズを持ちファンクラブにも入ってい

自分に似合う色を見つけていく

 巷で話題のパーソナルカラー診断というのを、大学生の頃に受けたことがある。大学内の就職支援の先生がたまたま資格を持っていて、以前から興味があったので友人と受けに行ったのだ。 +++  自分に似合う色に興味を持ちだしたのは、中学生のとき。  いわゆる「差し色」というものに心惹かれて、大変下手糞ながらも色んな色の服を試して着ていた時期だった。今なら絶対に着ないようなはっきりとした赤や青、ショッキングピンク、青みの深い紫。いやどこで買ったんだよと言われるような服ばかりだったが、

素敵な人に素敵だねって言える人になりたい。

 街中を歩いている人をさりげなく観察する癖がある。高校生の頃までは、知り合いが近くを通りかかることにも気づけなかったから、大学に上がってから癖になったんだと思う。  そんなとき、すてきだな、と目を惹かれてしまうようなご婦人がいる。彼女たちは、白髪を綺麗に結い上げていたり、毛先をピンクに染めて遊ばせていたり、真っ赤なルージュをつけていたり、春色の黄色いストールを巻いていたり、ハイヒールを履いていたり、アンティークのアクセサリを身に着けたりしている。  年を重ねながらなお一層