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初対面の人たちが集い奏でるジャズセッションの虜になった夜

会社の先輩が主催するジャズバーのセッションを聴きに行ってきた。

そう広くはないけど、お酒や茶葉の缶がオシャレに飾られた店内には、想像以上に人がたくさんいた。

入り口すぐのカウンターでドリンクを注文すると、「お姉さんは何弾くの?」と紙を見せられて慌てて両手を振った。「今日は聴きにきました!」

既にセッションは始まっていた。トロンボーン、ドラム、コンバス、ピアノ。知らない曲だけど、先輩が楽譜を見せて、この曲だよって教えてくれる。

「この本は黒本って呼ばれてて、ジャズのスタンダードなんだよ」

譜面を見ると、最低限のコードと音符しか載っていなくて、大体は1ページで収まっていた。たったこれだけの音符から、みんな自由に(でもきっとある程度のジャズのルールに則って)演奏しているのだ。

演奏者はプロからアマまで様々で、ある人は楽譜を持ち込み、ある人は楽器を持ち込んでフロアに上がっていく。主催者の3人が演奏者を回していき、集う人はほとんど初対面で会話を交わし、何小節めで入るとか、ここみんなで一斉に吹こうとか、演奏にこだわりを持って、または気楽に、思い思いの取り組み方で一曲を共にする。

隣の席に座っていた女性は歌う人だった。オーバーザレインボウを歌い上げた声がとても魅力的だったから、曲が終わって私は思わず声をかけた。

「歌、とっても素敵でした!」

照れ笑いをして女性は、今日このバーにはじめて来た事、いつもは夜時間を取れないけどたまに歌う事、持ってきた楽譜は手で書き起こしてる事、いろいろ教えてくれた。

印象的だったセッションは、バリトンサックス、トロンボーン、ドラム、ギター、コンバスのメンズ5人のナンバー。迫力のあるトロンボーン、音階を跨いで軽やかに動くサックス、リズミカルなアルペジオのギター、底をしっかり支えるコンバス、正確なリズムにソロで爆発するドラム。全部が全部かっこよかった。これぞジャズ!

今日はどうやら盛況だったらしく、お目当ての先輩は叩くことはなかったけど、初対面の人々が打ち解けていく雰囲気、音楽を通して繋がる感覚、どれも新鮮だった。

帰り際、バーのマスターと先輩に声をかける。「めちゃくちゃ楽しかったです」マスターも先輩も、にやりと笑いながら「次は演奏していってくださいね」だって。

私はちょっとおどおどしつつ、笑って帰った。

「うーん、練習してきます!」

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