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降りみ降らずみ、雨のおと

週末、雨の音を聴きながら寝る朝の時間が好き。
浅い夢から現実に誘われる時間、外でザァザァと雨の降る音が聞こえる。
この音が聞こえたら、「さぁ、もうちょっと寝ていて良いですよ。今日は休みだから」という天の許しを得たような気がする。
そうすると、私はまた眠気に引き込まれながら雨の音を聴き、少しずつその音も遠のいていく。

私、初めて雑誌の定期購読を始めました。
アラフォーにして、自慢気に言うことでもないけれど、ちょっと大人の嗜みのような気がして嬉しい。
それは、女性が読むファッション誌とは少し趣が違う、旅の雑誌「ひととき」だ。私はいつか旅作家になるのが夢で、この静かな佇まいの雑誌を選んだ。
それも、出会いは、noteでひととき編集部の記事を見つけたからだ。

ちなみに、ANAに乗ったら必ず手にする「翼の王国」も好き。

1月号が届いて、ワクワクとページをめくる。
千の宗家と小山薫堂さんと細見良行さんによる上質な大人たちの京都さんぽが特集だった。

そこで、この言葉に目を止めた。

「降りみ降らずみ時雨が絶えない」

降りみ、降らずみ・・・?
聞きなれない言葉に、先日実家から持って帰ってきた古語辞典を受験生以来に使う。

「降ったり降らなかったり。
 降ったり止んだり。」

と解答を得た。
恥ずかしながら、知らなかった言葉に出会えて、この雑誌を買ってよかったなと一人微笑んだ。サラッと綺麗な日本語と出会える雑誌が嬉しい。

日本には昔から、雨にまつわる言葉がたくさんある。
私が、中でも一番好きなのは、
「時雨ごこち」だ。

私が、この古語辞典を使っていた、大学受験の時に出会った。
確か古文の参考書で見つけて、

「降ったりやんだりする雨のように、訳もなくシクシクと泣きたい気分」

というような意味が書いてあったと思う。
高校生の時の私に、その言葉はえらく心に響いた。

訳もなく泣きたい気分の時、ある!
それを同じように感じている昔の人がいた!
そして、その感情がこんなにも美しく表現されている...日本語、きれい...

十二単を着ながら、美しい女性が訳もなく悲しい気分になっている姿が思い浮かんだ。

降りみ降らずみ、という言葉を見つけた時に、時雨ごこちのことを思い出した。

幼い頃は雨だというだけでげんなりする気分だったのに、大人になったら、昔ほど雨の日が憂鬱ではなくなった。
少し、悲しくなる気分に浸るという余裕もできたのかもしれない。
晴れがましい気分ではないけれど、雨には雨の風情がある。
次の週末は雨予報。降りみ降らずみの雨の音を聞いて、雑誌を読むような休日のひとときを過ごすのも楽しみだ。

写真:雨の日の2人(金沢 鈴木大拙館にて)

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