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入院・手術前に心がけたこと〜前編〜〔卵巣腫瘍+開腹手術 道々の記⑰〕

この「入院・手術前に心がけたこと〜前・後編〜」は、私自身の備忘録のような色合いが濃い内容ですので、ご興味ない方は、スキップなさってください!

卵巣腫瘍の発覚から、がん専門病院での初診を経て、どうやら入院・手術を避けられないようだ…ということで、事前に心がけたことといえば。もちろん、必要なものを揃えたり、体調管理や、周囲の人に知らせておくこと等は当然のこととして… やはり、少なく見積もっても術後3ヶ月くらいは、体を自由に動かしたり遠出したりすることが難しくなるだろう、と想像し、ならば新型コロナの感染状況も落ち着いている今のうちに(2021年11月〜12月)
できるだけ行きたいところに行って、やりたいことをやっておこう!ということでした。(大きな卵巣腫瘍とはいえ、自覚症状が全くない、それ以外の健康面であまり問題ない状態だったからこそ考えられることですね)

…とはいえ、年内の仕事は普段通りにこなしつつ…手術に備えて体調を整えておくことは大切なので、優先順位をよく考え、無理しすぎないように、どうしても行っておきたい・やっておきたいことに絞りました。

今回の入院・手術は、私にとっての大きな出来事ですが、夫にとっても一大事。相当に心配しながらも理性的に対応してくれています。そんな夫への感謝も込めて、二人で行けるところには一緒に行こう、と計画しました。

1st step:『ロニ・ホーン:水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?』を観に、箱根のポーラ美術館へ

写真作家ではないけれど、写真を主要なメディアとして活用する、アメリカの現代美術を代表するアーティスト、ロニ・ホーンの展覧会が、ちょうどその頃、箱根のポーラ美術館でおよそ半年にわたる会期で開催されていたのですが、会期の長い展覧会に限って、そのうち行こうと思っているうちに行きそびれてしまうのはままあること。こんな時こそ、夫と二人のドライブの思い出にもなるし!と、仕事や病院の診察・検査の合間を縫って、11月下旬、紅葉に染まる晩秋の箱根に足を伸ばしました。

その日は秋晴れの気持ちのよい天気に恵まれ、小田原から芦ノ湖スカイラインをぐるっと廻るコースで箱根に入っていった私たちは、途中の見晴らしのよい展望台から、裾野まで遮られることなく雄大な富士山を拝することもでき、とても清々しい気持ちになりました。(このときの写真はこちら

富士山と芦ノ湖を両側に眺めながらのドライブの先に辿り着いた、箱根の仙石原の自然にとけこむように建っているポーラ美術館。館内の展示室と庭園とにしつらえられた、ロニ・ホーンの、深い思索と、削ぎ落とされ研ぎ澄まされたシンプルな作品は、晩秋の、箱根の森の、香しくひんやり澄み渡る空気や光と美事に響き合い、この先、予測のつかない体験に足を踏み入れようとしている私の心の中の水面に、静かに、そして大きな波紋を拡げてくれたかのようでした。夫とともに、紅葉の落ち葉を踏みしめ…今この時の平穏なひとときのありがたさを、しみじみと感受しました。

2nd step:南足柄の山の麓へ、金色姫こんじきひめの像に会いに

今後の私の作品のテーマの一つとして、蚕と、養蚕にまつわる信仰や民俗に興味を抱いていて、シルク民俗研究会カイコローグという自由参加の同好会に、ゆるやかに参加してるのですが… 明治〜大正時代に横浜で製糸場を営んでいた盛進社持田初治郎が寄贈した金色姫(養蚕の神様)の像が、南足柄市の矢倉沢で見つかった、ということで、12月初旬の見学会にお誘いいただきました。訪問先は、私が20年くらい前に、縁あって足柄山に窯を築いた知人の陶芸家を訪ねに通っていた大雄山線エリアだという懐かしさと、しばらくカイコローグの活動に参加できていなくて残念だったこともあって、この機会にぜひ参加したい!と、久しぶりのフィールドワークに出かけました。

あまり予備知識もなく出かけて行ったのですが、現地で見せていただいた、今からおよそ100年前の大正11年ごろにこの辺りの養蚕組合に配布されたという金色姫像は、掌に載るほどの愛らしさ。かなり保存状態がよくて、100年の歳月を経たとは思えないほど美しかった!!このときには、金色姫が祀られている祠も新しく再建されていましたが、もともとの旧い祠を恐る恐る開帳してこの像を発見された方たちは、さぞかし驚かれたことだろう…と、思わず想像をたくましくしてしまいました。
案内してくださった地元の郷土史研究家の方は、このとき見学に参加した各々おのおのに、手にとったり写真を撮ったりすることを許してくださったので、みんな大興奮状態。本当にラッキーでした。(後編につづく…)

たなごころに載せると、愛おしくなってしまう。
このときは気がつかなかったのですが、いよいよクリスマス・イブの手術を迎える段になったら、ふと、この金色姫様のあまりの愛らしさと黄金色の輝きを思い出し、まるで、観音様かマリア様が舞い降りて微笑んでくださったようだったなぁ…と、しみじみ有り難く、心に沁みいりました。








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