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☆本#254,255,256 「桜ハウス」「夫の火遊び」「ほろにがいカラダ」藤堂志津子著を読んで

シリーズものの3作品。
桜ハウスに住む(あるいは住んでいた)女性4人が出てくる短編。主人公は30代半ば過ぎ、ほかは20代がふたり、30代前半がひとりで、それぞれ5歳ずつ差がある。2冊目では主人公が40代半ばで、3冊目では50歳。それぞれのその後が描かれている。著者らしい設定があこちこみられる。

1冊目「桜ハウス」では、語り手は主人公の蝶子。独身で亡くなった叔母の遺言で彼女が所有していたアパートを引き継ぐ。10年前そこに住んでいたのが、30代前半の遠望子、20代半ば過ぎの綾音、大学生の真咲。久しぶりに会うことになって話が始まる。
10年間にいろいろあって、この中では一番若く最初に結婚した真咲は離婚していて、一番の美形の綾音は婚約者ができると浮気するひとで、二股の挙句婚約破棄を何度か繰り返していて、遠望子は酔っぱらって上司との一度の過ちで妊娠し、シングルマザーになっていて、蝶子は相変わらず市役所で働いていた。

表題「夫の火遊び」は、真咲が3人に語らない、今後も語る予定のない離婚の真相が書かれていて、ほか3つの短編では、ほかの3名が語り手。
綾音は30代半ばを過ぎて、中学の頃から自分を慕っていた相手と結婚するも、彼の兄と弟と浮気し、しかも実は夫に内縁の妻子がいることを知り、家を出る。
遠望子は相変わらずシングルで、姉夫婦の家に娘と同居している。ある日、妻を亡くした娘の生物学上の父親が訪ねてくる。でも娘には合わせたく…。
蝶子はデパ地下巡りをしているとき、ある男と出会うが、その男の周りの女たちもでてきて、イマイチ男運が悪い。

女性主人公が複数の男性と同時進行で付き合うパターンはこの著者ではよく見られるので特に驚きはないけど、真咲が勢いというか衝動的に結婚した相手の性癖が変態系だったことは新しかった。

「ほろにがいカラダ」も、それぞれが語り手の4つの短編。
蝶子は50歳の誕生日に、7年前に4か月だけ付き合った妻子のいる11歳年下の男に電話する。まだ互いに両想いだと知った二人は再び付き合い始めるけど、男が離婚しようとしたことから亀裂がはいる。この著者の女性主人公は年下男性にモテる傾向が高いがここでも。でも、別れもさらっとしている。
見た目的には一番モテないと思われる遠望子は、同い年で見た目のいい男と出会い、積極的な行動でカラダの関係を持つ。表題作品はこれ。で、男の友人とも付き合うことになる。つまり二股。けど、彼女にとって娘が第一優先なので、男に根本的には振り回されることはない。
この中で一番ハードな体験するのは、真咲。30代半ばを過ぎた彼女は、50代の妻子ある男性と不倫していた。で、彼が妻に離婚を話した途端、逆上した妻から相手に会いたいと言われ、何度か会うことになる。が、彼から連絡が途絶えたかと思ったら実はがんで余命3か月ということが判明し、別れを告げられる。結局1か月で亡くなり、その後妻もがんで亡くなる。
綾音のほうは、彼女より夫を亡くした母親の話がメイン。

幸せと不幸はセット。

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