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☆本#327-9 たくましく「情熱のシーラ」上中下 マリーア・ドゥエニヤス著を読んで

著者は本作でデビューし、本作はスペインでベストセラーとなった。
歴史ものの大河ロマン的。といっても、ロマンス部分は多くない。

主人公シーラは日本でいう明治の終り頃の生まれ。20歳になったシーラは2歳年上のイグナシオと出会い、堅実な彼と結婚しようとする。が、10歳以上年上のプレイボーイのラミーロと出会い、イグナシオとの婚約を解消し、彼と暮らし始める。シングルマザーの母から、初めて父に会わせると話があり、ふたりは貧富の差で母親が身を引いたんだけど、父親から生前遺産をもらう。それが大金だったことがきっかけで、いろいろあってモロッコへ移る。

が、結局ラミーロが彼女の資産を持ち逃げし、借金だけ残る。スペイン統治下とはいえ異国でシーラは無一文になり、流産するも、借金を返すため、張り子の仕事を家主の協力もあり、始める。

それが、うまくいって、出会いもあって、戦時下という状況下からスパイ活動に巻き込まれ、新たな恋も芽生えつつ、ってところで話は終わる。

途中、母との再会や、元婚約者との再会もあり。が、ラミーロへの復讐というのはない。
エピローグでも、彼女がどうなったのか明確に描かれていないところが、普通にはない終わり方。

最近読んだ、フランス作家よりも枚数が多い割には、内容の濃さという点ではそれほどでもない。けど、主人公がくじけないというか、くじける暇なくたくましくなっていくところが読者に共感していったのかもしれない。

戦時下といっても、戦争による悲惨な描写は少ない。ただイグナシオが話すシーラの知り合いの話は悲劇的で、現在起こっている戦争と何ら変わらない。

もう1点この小説の特徴をあげるとすると、ある意味死者が少ない。実在の人物をモデルにしてる場合むしろ長寿。
話を盛り上げるために語り手のひとりをあっさり殺したりする作家もいるけど、そういうテクは盛り込んでなくて好印象。
スペインの歴史に興味がわいた。


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