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☆本#479 利他「ボーイズクラブの掟」エリカ・カッツ著を読ん

著者は現役弁護士で、この作品がデビュー作。
本作は、マンハッタンの大手弁護士事務所に勤める新人弁護士のある意味成長ストーリー。

アレックスはハーバード大学のロースクールを卒業し、学友のカーメンと共に大手の中でも最大の法律事務所で働き始める。
起業家の婚約者サムは、資金繰りで奔走中。
アレックスは勤務がハードなM&A部門より自分の時間も取れそうな不動産部門を志望する。
が、実際その案件や不動産部門の弁護士と関わるうちに、自分には向いてないと気づき、M&A部門のシニア・アソシエイトのジョーダンやシニア・パートナーのマットやピーターと共に仕事をしていくうちに、M&A部門に興味を持ち始める。
仕事へのやりがいや、高額報酬、格上の世界、比較すると恋人への物足りなさ、M&Aの1つの座席をめぐる周りとの攻防(アレックスは自分を貶めるレベルには落ちない)、上司との不倫、男性弁護士とセクハラ顧客の世界(ボーイズクラブ)、「秘密保持契約」のセクハラ事件(途中のハイヤー等の伏線は後半きっちり回収)、等々さまざまな経験をしていく。


ストーリーは、冒頭に裁判のシーンがあり、本編と交互に進む。
アレックスは、アメリカ人でよくいそうなタイプ。起こる出来事も、新卒で社会に出るとこういう感じだろうと思えるもので、上司や同僚らの言葉も時に真理というか、否定のしようもないのもあって、例えば、ある人物との時間を作らないのは、忙しいからじゃなく、その時間を作りたくないから(単に自分が優先を下げてるだけ)、とか、「人間は愚かなもので、間違いを犯したあと、やっと自分のいるべき場所に気づく」とか。

アレックスがトラウマになりそうなひどい出来事に遭遇しても、それを復讐に向けず、もっと違う方向にもっていったのは新鮮で、ある意味勧善懲悪になり過ぎずリアル。というか、もしかすると、そもそも勧善懲悪的な解決は現実的に少々無理があるのかも。アメリカのMe, too問題から見ても。
ほかに、ダイバーシティという名のもと、女性と有色人種が広告塔的に扱われるのは時代的。

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