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優しさを受け取って、悔しさを積み重ねる
重い週明けの予定を終えた火曜日、朝ドアを開けたら太陽の光が家中を鋭く照らした。暑くなりそう。
「忙しくて遅くなると思うから夕飯は会社で済ましてくるね」と夫が言う。夜ごはんを作らなくていい喜びと夜の育児をひとりで担う辛さが天秤にかけられる。
昨日は気力も体力も奪われた一日だったので、今日はのんびりすると決めていた。
いつも通り長男をスクールに送っていく。先生と少しだけ立ち話して、切らしていた卵とバナナを買いに一番近くのスーパーまで車を走らせた。
ここにはコーヒーショップが併設されている。
まだ9時半だというのに、すでに気温は20度を超えていた。冷たいラテが飲みたい。
コーヒーは熱いのだって冷たいのだって家でも淹れることができる。だから買うときはいつも自分で自分に言い訳をする。
今晩はワンオペだから、公園でたくさん遊んだから、ブログを1本書いたから、なんだか気分が晴れないから…。
買い物した荷物をいったん車に置いて再び店へ戻った。いつも空いている小さなコーヒースペースは、珍しく人で溢れていた。新聞らしきものを読みながら優雅に過ごす初老の男性二人と、作業着姿で頭にタオルを巻いた若い男性たち。
そういえば、来る途中に道路工事をやっていたっけ。
「ごめんね、あなたのコーヒーちょっと時間がかかるわ」とベビーカーの中にいる次男をちらっと見ながらレジのお姉さんが言う。
窓際の席に座り、パペットで次男と遊んでいると「Did you make that? or buy?」とおじいさんが話しかけてくれた。もう一人のおじいさんも微笑みを浮かべてこちらを見ているのに気付き、軽く笑みを返す。
10分ほど待ったら次男が飽きてきた。そういえば車におやつ置いてたな。よいしょ、と喉の奥のほうで呟いて駐車場へ向かう。
ものの2分ほどで戻ると、作業着のお兄ちゃんたちが満面の笑みで「Your coffee is ready!」と教えてくれた。
「待ちきれなくて帰ったのかと思ったぜ!いてよかった!」その場にいた4人の男性とレジのお姉さんがあははと笑う。
Thank you の後に子どものおやつを取りに行っていたことを説明しようと試みたけれど、とくに面白くもない理由なのでやめた。
みんなが「The cutest customer is here」と、おやつの袋を持ってご機嫌な息子に笑顔を向けてくれる。
この国は、子どもと母親にとても優しい。
とても温かく接してもらったのに、気の利いた言葉が出てこなかった。もっと、感情をうまく伝えられるようになりたい。
毎日、小さな悔しさを積み重ねている。うまくなりたいと思うものは、決して近道をさせてくれない。だから訓練を続けるしかない。
外の日差しは強さを増していた。ミルクたっぷりのアイスラテが体にすーっと溶け込んでいく。改めて一日を始めるための、ちょっとだけ贅沢な時間。
最後まで読んでいただいてありがとうございます。これからも仲良くしてもらえると嬉しいです。