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第27回カレリア語【ヴィエナ方言】 独学記録 - 格の基本的な用法(内格、出格、入格、接格、奪格)

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カレリア語のうち、本カレリア方言-ヴィエナ方言を学ぶページです。
方言分類に関してはこちらの記事をご参照ください。
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第9回で場所格について触れましたが、場所を表す意味以外の働きも持っています。ここではそれぞれの格がもっている基本的な用法を確認します。

1)Inessiivi / 内格 [-ssA/ššA]

①場所に関する場合:「~(の中)に/で」
 Myö elämmä Japanissa.
 私たちは日本に住んでいる
②時に関して使う場合:「~の間に」
 Otamma ruokua kolme kertua päiväššä.
 私たちは1日(の間)に3回食事をとる
③時に関して使う場合:所要時間「~で」
 Juna tulou Helsinkih tunnissa.
 列車は1時間でヘルシンキに到着する
④時に関して使う場合:月「~月に」
 Hiän tulou kešäkuušša.
 彼は6月に来る
⑤動詞 käyvä「行ってくる、訪れる」は入格や向格の「~へ」の格ではなく、内格か接格を使います。
 Käyn Petroskoissa.
 私はペトロザボーツクに行ってくる

2)Elatiivi /出格 [-stA/štA]

①場所に関する場合:「~(の中)から」
 Hyö tullah kyläšta.
 彼らは村から来る
②時に関して使う場合:「~から」
 Olen töissä huomenekšešta.
 私は朝から仕事だ
③「~のうちで、~の中で」
 Vain yksi meistä voi šyyvvä jiätelyö.
 私たちのうち一人だけがアイスを食べられる
④「~に関して、~について」
 Tahon tietyä Karjalašta.
 私はカレリアについて知りたい
⑤「~の意見では、~の考えでは」
 Miušta kiššakontie on šulo.
 私の考えでは、パンダはかわいい

3)Illatiivi /入格 [-h]

①場所に関する場合:「~へ、~まで」
 Matkuan Japanista Šuomeh.
 私は日本からフィンランドへ旅する
②時に関して使う場合:「~まで」
 Hiän on tiälä enši piätinččäh.
 彼は今度の金曜までここにいる
③以下のような動詞は入格を共に使います。
・tutuštuo(触れる, 新たに知る)
 Olen tutuštun täh kirjah.
 私はこの本を新たに知った

 ただし、「(人と)知り合いになる」の意味では、知り合いになる対象は後置詞 kera(一緒に)を用いて表します。
 Mie tutuštuin Leenan kera.
 私はレーナと知り合いになった

・loppuo(終わる)
 Romani loppuu onnelliseh.
 小説は幸せに終わった

・uškuo(存在を信じる)
 Tyttö uskou pakkaisukkoh.
 少女はサンタクロース(の存在)を信じている

・ruveta(始める)
 Muamo rupieu heti kotiruatoh.
 母はすぐに家事を始める

 同様に動詞の第3不定詞入格も多く伴います。
 Mie rupien syömäh.
 私は食べ始める

・kuuluo(属する)
 Pekka kuuluu Karjalan liittoh.
 ペッカはカレリア協会に所属している

・jiähä(残る, 留まる)
 Hiän jiäy kotih koko päiväkši.
 彼は一日中家に留まる

・jättyä(残す)
 Vanhemmat jätetäh lapšet kotih.
 両親は子供たちを家に残していく

4)Adessiivi /接格(向格) [-llA]

第9回でちらりと触れているように、本来は別の格であった向格(Allatiivi)がカレリア語では接格と同じ形となります。そのため接格には、もともとの接格としての働きと、向格としての働きの両方が備わっています。

【純粋な接格としての用法】

①場所に関する場合:「~(の上、表面)に/で」
 Hiän vuottau ašemalla.
 彼女は駅で待っている
②時に関して使う場合:「~に」
・一日のめぐり
 朝  huomeneš 朝に huomenekšella
 昼  päivä    昼に päivällä
 晩  ilta     晩に illalla
 夜中 yö      夜中に yöllä
・週
 週  netäli   週に netälillä
・季節
 冬  talvi     冬に talvella
 春  kevät   春に kevyällä
 夏  kešä    夏に kešällä
 秋  šykšy   秋に šykšyllä

 Mie nouššen kello 8 huomenekšella.
 私は朝8時に起きる
 Miula on tentti enši netälilla.
 私は来週テストがある
 Šienet kašvetaht šykšyllä.
 キノコは秋に成長する 
④乗り物の手段:「~で」
 Mie mänen töih omalla autolla.
 私は仕事に自分の車で行く
 Mie piäšen Moskovah junalla.
 私はモスクワに電車で行く
 Myö matkuamma lentokonehella.
 私たちは飛行機で旅行する
 Millä šie tulet meilä?
 あなたは私たちの元に何で来ますか?
⑤所有の表現:「~には…がある、~は…を持っている」
 Miula on lämmin takki.
 私は暖かいコートを持っている
 Miula ei ole nyt rahua.
 私は今お金がない
なお、所有の表現の詳細は第20回をご確認ください。 
 また年齢を表す際も所有の表現を用います。
 Miula on 13 vuotta.
 Miun tuatolla on 42 vuotta.
⑥動詞 käyvä「行ってくる、訪れる」入格や向格の「~へ」の格ではなく、内格か接格を取ります。
 Käyn Venäjällä.
 私はロシアに行ってくる

【向格としての用法】

①場所に関する場合:「~(の上、表面)へ」
 Muamo panou lattiella tavarat.
 母は床に荷物を置く
②人に関して使う場合:「~へ、~のために」
 Oššan tuatolla lahjan.
 私は父にプレゼントを買う

5)Ablatiivi /奪格 [-ltA]

①場所に関する場合:「~(の上、表面)から」
 Otan kirjan stolalta.
 私は机の上から本を取る
②時に関して使う場合:「~時に」
 Konsertti alkau kolmelta.
 コンサートは3時に始まる
③人に関して使う場合:「~から」
 Lahja on Pekalta.
 プレゼントはペッカからです
④kyšyö「尋ねる、求める」
 Kyšyn tuatolta.
 私は父に聞く
⑤以下のような感覚に関わるような動詞は奪格を共に使います。
・maistuo(~の味がする)
 Še maistuu makielta.
 それは美味しい味がする
・näyttyä(~のように見える, ~のように感じられる)
 Še näyttäy miušta helpolta.
 私の考えでは、それは簡単そうに見える
・tuntuo(~のように感じられる)
 Hän tuntuu mukavalta.
 彼は良さそうな人だ

学習後のつぶやき

すっかり書くのを忘れていました。基本的な用法のみですが、紹介しておきます。動詞の格支配に関しては確認が必要なので、最低限のみ。

>> カレリア語【ヴィエナ方言】 独学記録 - もくじ

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