Kieli

自分の基盤であるフィンランド,憧れやまないカレリア。多くの伝統を共有しながらも,その伝…

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自分の基盤であるフィンランド,憧れやまないカレリア。多くの伝統を共有しながらも,その伝統が異なる方向へと新たに「創造」されていく双方文化から目が離せません。しばらくは主にカレリア語独学記録,カレリア民話の和訳、ときどき伝統楽器カンテレやカレリアの音楽について綴っていきます。

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自己紹介:フィンランド&カレリアと3つの kieli

自己紹介私はフィンランド企業に勤めるオフィスレディです もう四半世紀近くのあいだ フィンランドという国に触れて暮らしてきましたから どちらかと言うと無言を好みます 私は甘いものが嫌いではありません また言葉が文法も含めて大好きですが 会話や, 単語を覚えるのは苦手です 私は自分の名が表にでることにあまり関心がなく 名声欲というものに反感をもっています 生真面目な楽観主義者で、現実的な夢想家で、努力家ときどき怠け者です お財布にはたいした銭も札もありませんが 室内に大きな本

    • 【記事邦訳】『Dorogu(道)』.ときに別の視点からの方が、自分をより良く眺めることができる

      カレリア振興協会(KSS:Karjalan Sivistys Seura)のWEBサイトにあるニュースコーナー(Uutisčuppu – Uudisčuppu)では、カレリア語で発信されたニュース記事の用語説明や、会報掲載記事の紹介の他、カレリア語母語話者による記事が積極的に発信されています。 その中で「オルガのコーナー(Olgan čuppuni)」を担当しているのは、東フィンランド大学の講師をつとめるオルガ・カルロヴァ(Olga Karlova)。ヴィエナ方言母語話者で

      • キンナス村の人々(KINDAHAN RAHVAS)

        キンナス村の人々むかし、そこにあったんだか、なかったんだか。はるかむかしに古い人々が、とにかく相当むかしにね、ひどくヘンテコな人々がキンナス村に住んでいたんだってさ。平和に暮らしていたそうだよ。畑を耕したり、サウナに入ったり、穀物を育てたり、家を建てたり、魚漁りに行ったり、森で猟をしたりと、自分たちの仕事をして、ちゃんと自分たちで暮らしていたんだ。だけど、誰も、いつ何の仕事をすべきかを知らなかったんだってよ。 村からプリアジャ(※1)の町まで12ヴィルスタ(※2)でね。

        • カンテレ奏者ハンナ・リューナネンとさまざまなカンテレ楽器

          すっかり更新が止まってしまっている間に、LAPUAN KANKURITさんのnoteでカンテレ奏者ハンナ・リューナネン(Hanna Ryynänen)のインタビュー記事が掲載されていたので、こちらをご紹介。 今年6~7月にかけて訪れたフィンランドの民俗音楽祭では、ハンナからスティックを用いて演奏するサーリヤルヴィ・スタイルの奏法を教えて頂いたばかり。新たなカンテレの楽しみ方が広がりました。 ちなみに本記事のトップ画像に写っているのは、まさにハンナのサーリヤルヴィ・カンテレで

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        マガジン

        • カレリア語映画プロジェクト
          5本
        • カレリア民話
          45本
        • クロマティックカンテレ演奏動画
          7本
        • カレリアの口承伝統あれこれ
          11本
        • カレリア語【ヴィエナ方言】 独学記録
          47本
        • カレリア語【リッヴィ方言】独学記録
          9本

        記事

          [カレリア民話] 9人兄弟の妹(YHEKŠÄN VELLEN ČlKKO)

          9人兄弟の妹むかし、夫と妻がいました。夫婦には9人の息子がいました。息子たちは朝、枝を刈りに出かけます。母親は身ごもっていました。息子たちは言いました。 ―もしまた男の子を授かったのなら、僕たちはもう家には戻ってきません。だけどもし女の子を授かったのなら、戻ってきます。女の子が生まれたら扉の上に糸紡ぎ(※1)を置いてください。男の子だったなら、氷穴棒(※2)を置いてください。 さてさて。シュオヤタル(※3)がこれを聞いていました。女の子を授かると、母親は糸紡ぎを扉の上に置き

          [カレリア民話] 9人兄弟の妹(YHEKŠÄN VELLEN ČlKKO)

          【カンテレ演奏動画】『水鏡の像(Отражения в воде/Kuvastus vies)』

          カレリアの近現代の作曲家たちによるクロマティックカンテレのための楽曲を集めた楽譜集『麗しきカレリア(Дивная Карелия/Kaunis Karjala)』が、カレリア作曲家連合85周年を記念して2022年に出版されました。 今回はその中に収められた1曲、カレリア共和国 作曲家連合の会長も務めるアナスタシア・サロ(Анастасия Сало/Anastasia Salo)による『水鏡の像(Отражения в воде/Kuvastus vies)』をご紹介します

          【カンテレ演奏動画】『水鏡の像(Отражения в воде/Kuvastus vies)』

          [カレリア民話] カモメ(KAJAI)

          カモメ老ヴァイノにはカテリーナという美しい娘がいました。彼らは9つの海と、10番目の海を半分越えたところに住んでいました。鍛冶屋のイルモイッリネンが、老ヴァイノの娘へ求婚に出かけました。しかし、敬虔なる太陽もすでにカテリーナに結婚を申し込んでおり、他の誰にも見向きもしないほど彼女を見つめていました。 2人はこんなことを言われました:敬虔なる太陽は、カテリーナただ一人だけではなく、あらゆる人々を見なければならない。そして鍛冶屋イルモイッリネンも、敬虔なる太陽のようにすべての人

          [カレリア民話] カモメ(KAJAI)

          [カレリアの口承伝統] ことわざ:おとぎ話が言葉を語りつくすことはない(Šuarnat ei šanuon lopu)

          以前、「仕事」にまつわることわざを紹介した際に書いた通り、カレリアには膨大な数のことわざが言い伝えられてきました。 今回ご紹介するのは「言語, 言葉」にまつわることわざです。 カレリアの口承伝統が豊富なのは、人々が言葉の力を信じていたから。 「言葉の力」ですべてを制すと考えられていたカレリアにおいて、日々の習慣や戒めを示すことわざにも、やはり「言葉の力」がこめられています。 ことわざKIELI/PAGIN(リッヴィ方言) KIELI/PAKINA(ヴィエナ方言) 言語/

          [カレリアの口承伝統] ことわざ:おとぎ話が言葉を語りつくすことはない(Šuarnat ei šanuon lopu)

          Laulettu Kalevala: 吟じられたカレワラ(1-10章)

          Hyvää Kalevalan päivää! 本日2月28日は「『カレワラ』の日」です。 50章から成る『カレワラ』を、現代を代表する伝統詩歌の吟詠家たちによる朗唱で楽しむことができます。 吟じるのは Iki-Turso のグループ名で活動するメンバーのうち Heikki Laitinen、Eila Hartikainen、Taito Hoffrén、Maari Kallberg、Ilona Korhonen、Anna-Kaisa Liedes。 メンバーそれぞれが民

          Laulettu Kalevala: 吟じられたカレワラ(1-10章)

          [カレリア民話] 皇帝の宴(ČAARIN BAALU)

          皇帝の宴皇帝のもとでは宴が予定されています。あらゆる人々が宴に招待されました。そして、ある男が宴へと出かけました。彼はひと壺のキーセリ(※1)を持っていきました。ひと壺のキーセリを持っていくと、1カッパ升(※2)の金を(報酬として)もらいました。男は上機嫌で帰路につきました。馬の背に乗った男が、向かいからやって来ました。 ーじいさん、どこからやって来たんだい? ー皇帝の宴にいたんだ、ひと壺のキーセリを持って行ってね、そしたら金を賜ったんだ。今は家に帰るところさ、今や何でも買え

          [カレリア民話] 皇帝の宴(ČAARIN BAALU)

          第36回カレリア語【ヴィエナ方言】 独学記録 - 基数の格変化(単数)

          --- カレリア語のうち、本カレリア方言-ヴィエナ方言を学ぶページです。 方言分類に関してはこちらの記事をご参照ください。 --- 第10回で数詞(基数)を学びました。 今回は、この基数の格変化(単数形)について学びます。 基数の格変化(単数)各基数の語幹をまとめたのがこちら。 それぞれの語幹の作り方を確認していきます。 比較にあげる名詞のタイプに関しては第12回を復習してください。 1)yksi, kakši -si/-ši で終わっている数詞で、基本的には名詞

          第36回カレリア語【ヴィエナ方言】 独学記録 - 基数の格変化(単数)

          第35回カレリア語【ヴィエナ方言】 独学記録 - 序数

          --- カレリア語のうち、本カレリア方言-ヴィエナ方言を学ぶページです。 方言分類に関してはこちらの記事をご参照ください。 --- 久方ぶりのカレリア語独学記録は序数のお話です。 数量をかぞえる際に用いる 1,2,3... のような数詞を「基数」と呼びます。 以前、第10回に「個数詞」として学びましたね。 それに対し、今回学習する「序数」は 1番目の, 2番目の... というように順番を表現するための数詞です。 基数と似ているものが多いですが、まったく異なるものもあるた

          第35回カレリア語【ヴィエナ方言】 独学記録 - 序数

          [カレリア民話] 主夫のじいさん(UKKO KOTIMIEHENÄ)

          主夫のじいさんむかし、おじいさんとおばあさんが住んでいました。彼らにはまだ小さな1人息子がいました。おじさんは森から帰るといつもおばあさんに「ワシが森で働いているというのに、お前はいつも家でぐうだらして」と冷たい態度でした。(ある日)ばあさんが言いました。 ―それじゃあ、こんな風にしましょう、私が森へ行くから、お前さんは家に残りなさいな。もちろん私は森で働くから、お前さんは私がしているようにただ家の面倒をみれば良いさ。 ―じゃあ、ワシは今日1日、家にいるとするか。お前は森へ行

          [カレリア民話] 主夫のじいさん(UKKO KOTIMIEHENÄ)

          [カレリア民話] カブ畑のじいさんと悪魔(UKKO TA PIESSA NAKRISMUALLA)

          カブ畑のじいさんと悪魔 むかし、おじいさんとおばあさんがいました。彼らはとても大きな畑にカブを植えました。彼らのもとでカブはどんどん成長し、ごろごろどっさり育ちました。 じいさんとばあさんのところから、毎晩のカブが盗まれるようになりました。すでにカブ畑の半分が盗まれてしまいましたが、誰がやって(盗みに)来るのか一向に分かりません。 ―じいさん、あんた夜中に見張りに行きなさいよ、泥棒を捕まえないつもりかい。 じいさんは夜中に見張りに行き、畑の端っこに座りました。そこへ恐ろしい男

          [カレリア民話] カブ畑のじいさんと悪魔(UKKO TA PIESSA NAKRISMUALLA)

          Kantele Advent Calendar 2022 : フィンランド&カレリア民話「ごきげんマッティ」

          昨年に続き、カンテレ奏者はざた雅子先生のHPでカンテレ・アドヴェント・カレンダーが始まっています。 今年はフィンランド&カレリア民話の『ごきんげんマッティ(Matti Veitikka)』を、簡単なアニメーションと素朴な5弦カンテレの音色でお届けしています。毎日1分弱、少しずつ物語をお楽しみ下さい。 --- Finnish & Karelian folk tale “Matti Veitikka(Jolly Matti)" Finnish retelling by TER

          Kantele Advent Calendar 2022 : フィンランド&カレリア民話「ごきげんマッティ」

          [カレリア民話] 小鳥たちの予言(LINTUSIEN ENNUŠŠUŠ)

          小鳥たちの予言  むかし、じいさんとばあさんがいました。じいさんとばあさんには息子がいました。息子は小学生になるまで、いつでも一番賢い子でした。学校に通うことになりました。彼はあっという間に学び、習得しました。ところが彼は先生にこう言いました。 ―父さんと母さんには、僕の出来は悪くて、読み書きもよく出来るようにはならないと言って下さい。  そうして、母親にそう伝えられました。彼女はがっかりして、仕立屋のもとに学びに出そうとじいさんに言いました。息子は仕立屋のもとに出されました

          [カレリア民話] 小鳥たちの予言(LINTUSIEN ENNUŠŠUŠ)