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第9回カレリア語【ヴィエナ方言】 独学記録 - 名詞の格活用と場所格

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カレリア語のうち、本カレリア方言-ヴィエナ方言を学ぶページです。
方言分類に関してはこちらの記事をご参照ください。
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Šijat / 名詞の格活用

カレリア語の名詞は活用します。
日本語で名詞に助詞をつけるのと同じように、カレリア語では格語尾とよばれるものをつけて活用させます。
辞書の見出し語になっている形は単数主格と呼ばれ、そのまま文の主語として使うことができます。

まずはどのような種類の「格」があるのか、例を見てみましょう。

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pereh(家族)、vakka(カゴ、バスケット)という語を例にあげています。

まず、辞書の見出し語となっている形を「単数主格」と呼びますが、この形はそのままで文の主語として使うことができます。つまり、例えばpereh(家族)という語の単数主格の形は「家族/家族が/家族は」という日本語に相当します。

属格は「~の」という意味で所有者を表す形です。
分格対格と合わせて「~を」という意味に相当する目的語の働きをする非常に大切な形です。その他に数詞と結びつくという特徴もあります。

内格、出格、入格、接格、奪格、向格の6つは「場所格」と呼ばれ、日本語の「家に,家から,家へ」などという表現に相当するものです。ただし、カレリア語では向格は接格と同じ形(-llA)になるため、上記のような表には記載されない場合がほとんどです。

その他、様子や状態を表す「様格」、変化を表す「変格」、不足状態を表す「欠格」、手段や方法を表す「具格」があります。また「~と一緒に」というような意味を表す「共格」は単数・複数の区別がない格です。ただし、グレイで網掛けしている格は今ではあまり使われていません(代わりに後置詞を用いて表現されます)。

Paikanšijat / 場所格

上記で説明したとおり、格の中には「場所格(Paikanšijat)」と呼ばれる格が6つあります。それでは、それぞれがどのような形かを確認しましょう。

【内部格】
Inessiivi / 内格 -ssA/ššA  kylä(村) kyläššä(村の中に)
Elatiivi / 出格 -stA/štA          kyläštä(村の中から)
Illatiivi / 入格 -h             kyläh(村の中へ)

【外部格】
Adessiivi / 接格 -llA  stola(机) stolalla(机の上に)
Ablatiivi / 奪格 -ltA         stolalta(机の上から)
Allatiivi / 向格 -llA           stolalla(机の上へ)
※同じ形のため「向格」と呼ばずに「接格」と紹介する場合もある

6つの格は、3つずつでグループを作り、それぞれを「内部格」、「外部格」と呼ばれます。大まかに言うと、内部格は「何かの中」外部格は「何かの表面」という意味をもちます。ただし、野外の広がった空間などには外部格を用い、例えば「庭(piha)」という語は、内部格ではなく、外部格を使います。

内格接格は「…で/に(いる)」という意味を表し、何かが存在していたり活動していたりする場所を表します。

出格奪格は「…から」という意味で出発点を表します。

入格向格は「…へ」という意味で目的地などを表す形です。

例:
piha(庭)
pihalla(庭に)
pihalta(庭から)
pihalla(庭へ)

国の名前は内部格を使うのが一般的です。

Šuomi(フィンランド)
Šuomešša(フィンランドに)
Šuomešta(フィンランドから)
Šuomeh(フィンランドへ)

ただし、「ロシア(Venäjä)」は外部格を使います。

Venäjä
Venäjällä
Venäjältä
-(入格形は使われない)

また、「家(koti)」という語は、基本的に内部格を用いますが、子音の交替により-tが消えることがあります。

koti(家)
koissa(家に)
koista(家から)
kotih(家へ)

子音の交替については、また別途。

さて、内格(-ssA/ššA)、出格(-stA/štA)で「s」と「š」、どちらの語尾をつけるのか迷ってしまいますね。
しかし、ルールは簡単。語尾の前にある母音(語幹の最後の母音)が -i- であれば、「s」、それ以外の母音の場合は「š」になります。
例を見てみましょう。

A:Karjala-šša
O:kirjašto-šša
U:koulu-šša
Ä:meččä-ššä
Ö:kirikkö-ššä
Y:kyly-ššä
I:pirti-ssä
E:Šuome-šša

では、それぞれの格はどうやって作れば良いのでしょうか。
まずはそれぞれの語を、「語幹(vartalo)」と呼ばれる形にし、その語幹に格語尾をつけ加えます。
単数主格=語幹となる語もいくつかあり、主にそうした語で説明をしてきました。しかし、語によっては語尾が変化するものもあります。
語幹の作り方は、次回以降で確認しましょう。

例文

「第7回 動詞のタイプと現在形」で elyä(住む)という動詞が出てきました。この動詞を使って例文を作ってみましょう。

Hiän eläy Karjalašša. 彼はカレリアに住んでいます。

こんな表現もできます。

Hiän on nyt Karjalašša. 彼は今、カレリアにいます。
Anni tanššiu huonehešša. アンニは部屋で踊っている。
Mie elän Venäjällä. 私はロシアに住んでいる。
Kišša leikkiy pihalla. 猫は庭で遊んでいる。
Stolalla on kynä. 机の上にはペンがある
Pihalla on kišša. 庭には猫がいる。

tulla(来る)männä(行く)という動詞を使ってその他の格も使ってみましょう。
※tulla, männäはタイプ③の動詞で、語幹は最後に-e-がつく形になります。詳細はまた今度。

Šie tulet koista. あなたは家から来る。
Mie mänen kotih. 私は家へ行く。
Hiän tulou Šuomešta. 彼はフィンランドから来る。
Hyö männäh pihalla. 彼らは庭へ行く。
Mie mänen koista torilla. 私は家から市場へ行く。

場所を尋ねる疑問詞 Missä(どこ), Mistä(どこから), Minne(どこへ)

疑問詞:Missä(どこ)
Missäは「どこ」を意味する疑問詞です。

「第8回 基本的な疑問詞と疑問文」で学んだ疑問詞「Mi」の内格形ということが想像つくでしょうか。

Missä šie olet? あなたはどこにいますか?
Missä hiän eläy? 彼はどこに住んでいますか?

疑問詞: Mistä(どこから)

Mistäは「どこから」という意味の疑問詞です。
疑問詞「Mi」の出格形ですね。

Mistä šie tulet? あなたはどこから来るのですか?
Mistä hiän tulou? 彼はどこから来るのですか?

疑問詞:Minne(どこへ)

Minneは「どこから」を意味する疑問詞です。
残念ながら、疑問詞「Mi」の入格/向格というわけではありません。このまま覚えましょう。

Minne šie mänet?
Minne hiän mänöy?

学習後のつぶやき

動詞の種類、活用方法、子音交替、語幹の作り方(名詞のタイプ)…まつわる文法事項の説明が追いついていないので、難しい例文がまだ作れませんね。もどかしいです。

>> カレリア語【ヴィエナ方言】 独学記録 - もくじ

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