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【カレリア語】概要-カレリア語と方言

カレリア語とは

カレリア語は、ウラル語族のフィン・ウゴル語派、バルト・フィン諸語に属する言語の一つで、ロシア連邦共和国の西北部 (カレリア共和国、 ムルマンスク州,、レニングラード州、 ノブゴロド州,、カリーニン州) で話されおり、フィンランド語にもっとも近い言語といわれています。
また、フィンランド東部においてもカレリア語を基とする言葉が話されており、これらは「フィンランド語におけるカレリア方言」と位置づけられています。

2010年時点での母語話者数は36,000人、ユネスコが発表する世界危機言語アトラス・リスト(Atlas of the World’s Languages in Danger)においては「危険(Definitely Endangered )」とされています。

歴史

カレリア語で書かれたもっとも古い記録は、1957年にノヴゴロドで発見された白樺文書(Новгородская берестяная грамота № 292)です。13世紀半ば頃のものと考えられ、キリル文字で書かかれたオロネツ方言のテクストです。
その後、教会の指示によりロシア正教の教えをカレリア語に翻訳したカレリア語初の本が1804年に出版されています。

カレリアには豊かな口承伝統があり、詩歌、諺、まじない、泣き歌などが後に多く書き留められました。フィン・カレリアの民族叙事詩『カレワラ(Kalevala)』は、多くの口承詩歌が基となっています。

ロシア・カレリアにおいては1940年代から20世紀の終わりごろまでは日常生活で用いられる言語でしたが、1940年前後よりソ連領土内におけるロシア語の義務教育化指示のもと公的な機関での使用が強制的に停止されました。
一方で同時期に成立したカレロ=フィン・ソビエト社会主義共和国(1940~56年)ではフィンランド語が州の言語として認められ、現地でのフィンランド語教育もはじまります。カレリア語話者は自分たちの母語を使用する場を徐々に奪われていきました。

現在ロシアでは、連邦内の地域ではキリル文字のみが州の公用語として認められるため、ラテン文字を使用するカレリア語は公用語ではなく、あくまでも少数民族言語としての使用が認められているに過ぎません(そのためカレリア共和国は、ロシア連邦を構成する21共和国の中で唯一ロシア語以外の公用語をもっていません)。
しかし近年では言語の保護と教育活動が推進され、カレリア語をもちいたマスメディア(新聞、テレビ、ラジオ等)機関も存在しています。

カレリア語の文字

カレリア語は多くの方言に分けられますが、その中でも独立した言語とするか、方言とするかは研究者によって位置づけが異なることがあります。
また各方言によって表記の仕方もそれぞれでしたが、2007年にカレリア共和国政府により、すべての方言で用いる共通のアルファベットが承認されました。2014年に「C」が追加され、現在では以下のアルファベットが用いられています。

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カレリア語の方言と分類

以下は、フィンランド内国語センターKarjala/カレリア語)によるカレリア語方言の分布図に日本語を追記したもの(クリックすると拡大します)。

【カレリア語】
└ ① 本カレリア方言
 └ ①-1 北カレリア方言(ヴィエナ方言)
 └ ①-2 南カレリア方言(スヴィ方言)
└ ② オロネツ/アウヌス方言(リッヴィ方言)

① 本カレリア方言
ENG: karelian proper
RUS: собственно карельский
FIN: varsinaiskarjala

カレリア北部地方 (ヴィエナ地方)、ならびにこの地域から移住した人々の子孫が住むトヴェリ (旧カリーニン) 近郊で話されている方言です。

①-1 北カレリア方言(ヴィエナ方言)
ENG: north Karelian
RUS: северокарельский диалект
FIN: vienankarjala (viena, pohjoiskarjala)
KAR: vienankarjala

カレリア語では vienankarjala と呼ばれ、地域によってさらに13の方言に分かれます。このNote内ではカレリア語の呼び名にあわせ「ヴィエナ方言」と表記しています。

①-2 南カレリア方言(スヴィ方言)
ENG: south Karelian
RUS: южнокарельский диалект
FIN: eteläkarjala
KAR: suvikarjala

南カレリア方言は、その中でも「東部中域・境界カレリア地域の方言」と、ここから分岐した「姉妹(子孫)語」の2つに分かれ、前者は更に12の方言に、後者は更に3つの方言に分かれたうちのひとつ、トヴェリ方言が更に5つに分かれます。

② オロネツ/アウヌス方言(リッヴィ方言)
ENG: olonets Karelian
RUS: ливвиковский (олонецкий)
FIN: livvinkarjala (aunuksenkarjala)
KAR: livvinkarjala

カレリア語では livvinkarjala と呼ばれるオロネツ/アウヌス方言は、地域によって8つの方言に分かれます。カレリア共和国首都ペトロザボーツク周辺で使われていることもあり、教育言語としてはもっとも一般的です。 
このNoteではやはりカレリア語にあわせて「リッヴィ方言」と呼ぶことにします。

以前はさらに③リュード方言が(ludic language /людиковский / lyydin kieli)ありましたが、その独自性からカレリア語の方言ではなく、今では一つの言語として扱われるようになりました。
ちなみにリュード語は「カレリア語化したヴェプス語」とも言われ、ヴェプス語に現れる文法上の性質が見られることがあります。
リュード語も地域によって3つの方言に分かれます。

【フィンランド語におけるカレリア方言】
① 南東方言
② 北カレリア方言

フィンランド語のカレリア方言のうち、①南東方言はラッペーンランタ、イマトラ周域で話されています。以前は、戦後ロシアに割譲されたヴィープリ西部やソルタバラ周域までが含まれていました。

②北カレリア方言は、ヨエンス―を中心とした地域で話されている方言で、「カレリア語-① 本カレリア方言」との類似性が多く見られます。

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