第15回カレリア語【ヴィエナ方言】 独学記録 - タイプ②~⑥の動詞の現在形
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カレリア語のうち、本カレリア方言-ヴィエナ方言を学ぶページです。
方言分類に関してはこちらの記事をご参照ください。
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第7回でカレリア語の動詞には6つのタイプがあることを確認し、タイプ①の動詞の人称変化まで学びました。今回は残りのタイプ②~⑥の人称変化をみていきましょう。
タイプ②の動詞と語幹の作り方
タイプ②の動詞:
不定詞の最後が -ja/jä, -va/vä, -ha/hä, -ija/ijäで終わっている動詞
語幹の作り方:
このタイプの動詞は基本的に2音節の語で、[長母音/二重母音] + -ja/jä, -(v)va/(v)vä, -ha/hä という構造になっています。
[長母音/二重母音]より後ろの音を取り除くことで語幹をつくることができます。
ただし語の中に含まれているのが長母音の場合、語幹で音韻変化が生じるため、変化前後の組み合わせを覚える必要があります。
変化前 変化後
-uu- > -uo-
-yy- > -yö-
-ii- > -ie-
二重母音の場合は変化はありません。
つまり、次のような手順で語幹をつくることができます。
できる(状況的に): voija > voi- > voi-
持っていく: viijä > vii- >vie-
飲む: juuvva > juu- > juo-
持ってくる: tuuvva > tuu- > tuo-
受ける : šuaha > šua- > šua-
ただし、不定詞が3音節以上あり、最後が -ija/ijä で終わっている動詞は上記とは異なる語幹の作り方になります。
最後の -ja/jä を取り除いて、代わりに -če という音を付け加えます。
寂しがる, 恋しがる :ikävöijä > ikävöi- > ikävöiče-
タイプ③の動詞と語幹の作り方
タイプ③の動詞:
不定詞の最後が -na/nä, -la/lä, -ra/rä, -sa/sä, -ša/šä で終わっている動詞
語幹の作り方:
最後の2文字を取り除き、 -e- という音を付け加えると語幹ができます
行く : männä > män- + e- > mäne-
来る : tulla > tul- + e- > tule-
噛む : purra > pur- + e- > pure-
起き上がる :noušša > nouš- + e- > nouše-
すでに学んだ olla (いる, ある)という動詞もこのタイプ③に属します。
タイプ④の動詞と語幹の作り方
タイプ④の動詞:
不定詞の最後が -ata/ätä, -ota, -uta, -eta, -ita で終わっている動詞
語幹の作り方:
不定詞の最後の形にあわせて次のような変化をさせます。
-ata/ätä > -ua/yä-
-rata/rätä > -raja/räjä- (-ta/tä を -ja/jä-におきかえる)
-ota/uta > -uo-
-eta/ita > -ie-
答える : vaššata* > vašš- + ua- > vaštua-
警戒する: varata > vara- + ja- > varaja-
掃除する : šiivota > šiiv- + uo- > šiivuo-
叫ぶ: huhuta > huh- + uo- > huhuo-
取りかかる : ruveta* > ruv- + ie- > rupie-
~する時間がある:keritä* > kerk + ie- > kerkie-
*印がついているものは、子音階程交替が生じています。
子音交替が発生する語に関しては、第14回 子音交替と母音交替の項目を復習しておきましょう。
-ita で終わっている語の多くは、下で説明するタイプ⑤に分類されます。
タイプ④に分類される -ita 動詞は、出会った順に覚えていけばOKです。
タイプ⑤の動詞と語幹の作り方
タイプ⑤の動詞:
不定詞の最後が -ita/itä で終わっている動詞
語幹の作り方:
まず -ita/itä をとり、代わりに -iče- という音を付け加えます。
必要とする :tarvita > tarv + iče- > tarviče-
タイプ⑥の動詞と語幹の作り方
タイプ⑥の動詞:
不定詞の最後が主に -eta で終わっている動詞
語幹の作り方:
-ta/tä をとり、代わりに -ne- という音を付け加えます。
軽くなる:kevetä* > kepe- + -ne- > kepene-
ただし、-ta/täの前の母音が -e- 以外のものも稀にあります。
これも出会った順に覚えていきましょう。
逃亡する:puata* > pake- + ne- > pakene-
この動詞には、二重母音にも変化が生じていますね。
タイプ⑥の動詞の多くが、形容詞が「だんだん~になる」比較の意味合いをもって動詞化したものです。例にあげた kevetä であれば、kepie(軽い)という形容詞が動詞化したものですね。
3人称複数の語幹
さて、タイプ②~⑥における基本的な語幹の作り方を確認してきました。
しかし、タイプ①の動詞(第7回 参照)と同じく、3人称複数の語幹だけは作り方が異なります。
タイプ①では基本的な語幹に、-ta/tä をつけることで3人称複数の語幹をつくることができました。
タイプ②~⑥に関しては、動詞の不定詞=3人称複数語幹となります。
特別な変化をさせる必要もないので、楽チンですね。
タイプ②~⑥の動詞の人称変化
語幹ができたら、主語に合わせて人称語尾をつけるだけです。
人称語尾は第7回の冒頭でも紹介していますので、自信のない方は復習しておきましょう。
それではタイプ②~⑥の動詞を人称変化させましょう。
一覧でそれぞれの変化を確認してください。
動詞 nähä の人称変化
nähä(見る, 見える)という動詞は、-hä で終わっているのでタイプ②に属しますが、その語幹の作り方、人称変化はイレギュラーです。よく使う動詞なので、そのまま覚えてしまいましょう。
タイプ②の動詞の3人称単数形
上にあるタイプ②~⑥の動詞の人称変化表を見てみると、タイプ②の動詞の3人称単数形がふたつ記載されています。
じつはタイプ②の動詞の3人称単数形は、通常通り語幹に -u/y をつけた形と、さらに -pi をつけた形のどちらもが使われています。
飲む: juuvva > juo- > juou / juopi
食べる:syyvvä > syö- > syöy / syöpi
どちらの形もよく使われるので、まずは通常の規則通りに覚えてから -pi をつけた形を覚えましょうかね。
ただし、käyvä, voija という2つの動詞に関しては -pi をつけた形が使われます。この動詞に関しては、3人称単数の人称語尾 -u/y ではなく、2人称単数と同じく -t で終わる形が3人称単数として使われることもあります。
行く(往復): käyvä > käy- > käypi / käyt
できる(状況的に):voija > voi- > voipi / voit
謎ですね・・・が、よく使う動詞なので、早めに覚えてしまうしかありません。
タイプ③の動詞のイレギュラー変化 (olla, paissa, juošša)
すでに学んだ olla に加え、paissa(話す)、juošša(走る)という動詞は、特別な変化をするので覚える必要があります。
学習後のつぶやき
色々と覚えることも多いですが、これでようやく一通りの動詞の人称変化(現在形)ができるようになりました。
現在肯定形だけでこの複雑さ・・・過去形、受動形などの用法はもっと複雑な変化をともなうので、しっかりおさえておかないとです。
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