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第14回カレリア語【ヴィエナ方言】 独学記録 - 子音交替と母音交替

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カレリア語のうち、本カレリア方言-ヴィエナ方言を学ぶページです。
方言分類に関してはこちらの記事をご参照ください。
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子音交替と母音交替

カレリア語の名詞を格変化させる際、あるいは動詞を人称変化させる際、語幹の中の k, t, p, č の音が変化することがあります。この現象を「子音階程交替」と呼びますが、すべての語に発生するわけではありません。
この子音交替により、語幹が「強階程」と「弱階程」とに区分されます

子音交替の変化のパターンは20種以上!ありますので、しっかりと覚える必要があります。基本的には名詞、動詞に起こる交替のパターンは同じです。

また、特定の格、人称形に変化させる際に、語幹中の母音にも変化が起こる場合があります。これを「母音交替」と呼びます。
母音交替が発生する格や人称形・時制等の用法は限られていますので、詳細は各文法項目の説明時に確認することにします。

名詞の子音交替

名詞の子音交替のパターンは以下のとおり。

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いっぱいありますね…(涙)。
フィンランド語は15パターンですが、それよりはるかに多いです。
またフィンランド語と同様、逆向きの交替が発生する可能性もありそうですが、事例をあまり確認できていません。追々確認していきます。

č の交替は一種のみですが、č はそもそも [ts] という音なので、t の交替の一種と捉えてよさそうです。

名詞の母音交替

上述のとおり、母音交替が発生するのは特定の格に限られます。
名詞の母音交替は主に単数分格、複数語幹ですので、それらに伴う母音交替は各文法項目説明時のお楽しみ。

ただし2音節で終わる語で、最初の音節の母音が次にあてはまる場合、特別な変化が生じます。さらに、これらの語の2音節目では子音交替で k,p,t の音が消失する場合がほとんどです。

        主格    語幹
a > ua- : laki  > lua- 天井, 屋根裏
ä > iä-  : hätä > hiä- 災難, 不幸, ピンチ
e > ie-  : reki  > rie- ソリ
o > oi- : koti  > koi- 家

これらの語は注意が必要ですね。。

また、第12回 単数語幹と名詞のタイプで紹介しているとおり、そもそも語幹をつくる際にも多くの母音変化が生じていますので、あわせて確認しておきましょう。

動詞の子音交替

動詞の子音交替パターンも、基本的には名詞と同様です。

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薄くグレイがついているパターンは例が見つかりませんでしたが、もしこの先の学習中に出会ったら、表も更新していきます。

動詞の場合、タイプ③(のうち-llAで終わる語)、④の動詞の一部で起こる子音交替は逆向きに、つまり、不定詞では弱階程、語幹で強階程が発生します。この場合、語幹は強弱に分かれることはなく、強階程のみが使われます。(⑥の動詞の一部も含まれる可能性があります。今後要確認。)

動詞の母音交替

動詞においても、母音交替が発生するのは特定の形に限られます。
代表例は過去形で、過去の印である -i- が引き起こす変化は、フィンランド語でも学習者泣かせでした。このあたりは各文法項目時に説明します。

もっとも基本的な、動詞の現在語幹における母音交替について触れておきます。
現在語幹の最後の母音が e  の場合、3人称単数形でのみ、その母音は e → o/ö に変化します。

[例] 
itkie 泣く
語幹:ite-/itkö-
mie iten   myö itemmä
šie   itet    työ  itettä
hiän itköy   hyö  itetäh

kulkie 歩いて行く, ぷらぷら歩く
語幹:kule-/kulko-
mie kulen     myö  kulemma
šie   kuet    työ   kuletta
hiän kulkou  hyö   kuletah

またタイプ①の動詞では、語幹の最後の母音が  a/ä の場合、3人称複数形でのみ、その母音は a/ä → e に変化します。

[例] 
laulua 歌う
語幹:laula-
mie   laulan  myö  laulamma
šie  laulat   työ    laulatta
hiän  laulau  hyö   lauletah

muistua 覚える, 思い出す
語幹:muissa-/muista-
mie   muissan  myö  muissamma
šie     muissat  työ    muissatta
hiän  muistau  hyö   muissetah

カレリア語の動詞は3人称で色々と注意が必要ですね。混乱してきそうです。

また、語幹中の二重母音が短母音、あるいは別の二重母音に変化することも多くあります。タイプ②の動詞の語幹の作り方などが良い例ですね。語幹(の最後)に二重母音がある場合は、要注意です。

学習後のつぶやき

ようやく子音交替の話に触れることができました。子音交替についてまとめている最中、フィンランドではあまり(単独の文法事項としては)意識していなかった母音交替に関しても注意する必要があることが分かり、あわせて説明をすることにしましたが、この辺りは全容がまだ見えていません。引き続き、苦労しつつも探っていくことにします。

次はタイプ②以降の動詞の人称変化あたりかな。

>> カレリア語【ヴィエナ方言】 独学記録 - もくじ

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