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「予算配分」から考える、 Web制作会社のビジネスモデル。M-HANDの工数の算出方法。

エムハンドの山手です。
今回はWeb制作会社の「予算配分」について書きます。弊社の予算配分や作業工数の算出の方法などもご紹介したいと思います。Web制作の現場でスケジュール管理してる方や、見積もりを作る方などの参考になればと思います。

今、日本では物価が上がらないデフレの状態が続いていますが、ホームページ制作の費用も同様にデフレになっていると思っています。前回もお話しましたが、Web制作会社では年々、ケアしなければいけないことや、対応しなければならない作業が増えています。これまでと同じ制作費用にもかかわらず、高いクオリティーと作業レベルが求められるので、単価が下がっているのと同じことです。

「だったら、クオリティーを上げる分、単価も上げればいいじゃないか」と思われるかもしれませんが、他社と相見積もりで競わなければならないなかで、簡単に価格転嫁はできません。

また、どこの制作会社でもいいものを作っているので、ホームページ制作自体がコモディティ化(一般化)している現状もあります。つまり、「どこで作っても同じ」と考えられてしまう恐れがあるということです。

一方で、スタッフの働く時間はどんどん短くなってきています。

これらはWeb制作業界全体にいえることですが、利幅が減って、体力がどんどん削られている状況が続いていると思います。そんな状況なので変化に対応できる予算配分の基本的な考えを持っておくことが重要だと思います。

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1. 予算配分はビジネスモデルだと考える

時代の変化や労働市場が激しく変化する中で、会社が存続していくには、コンスタントに利益を出す必要があります。そのためには、予算配分を明確にしておくことが大事です。
予算管理とは、案件をいくらで受注して、どれぐらいの時間と人数をかけて仕上げるのかということです。ここがWeb制作会社の「ビジネスモデル」になる部分です。

いくらで受注して、どこにどれぐらいの時間をかけて作るかということが明確になってないと、バンバン受注してるけど、利益が出ないとか、場当たり的に作業工数を決めて、制作者たちのモチベーションを下げたり、明確な基準がないと正解のない判断をしないといけなくなります。

2. 弊社が収益構造の大切さに気づくまでの経緯

創業当初、弊社の収益構造はあいまいなもので、予算配分や原価に対する考え、制作工数に対する明確な基準はありませんでした。案件を受注したら、その都度デザイナーに「これ、どれぐらい工数かかる?」と尋ね、「10日ぐらいですかね」と回答を得たら、「じゃそれでよろしく」という感じで、いわば感覚的にスケジューリングしていました。

ところが、会社の成長と共に大きな案件がポツポツと増えてきたころ。いざ制作に取りかかってみると、いつまで経っても完成しないのです。

その理由は「クライアントからの要望が多い」「要求レベルや難易度が高い」などさまざまでしたが、フタを開けてみれば、受注金額とそれに掛ける工数がまったく見合っていませんでした。かかった時間や費用を考えると本当は倍ぐらいの金額で獲るべき案件なのに、破格の金額で提示したから受注できただけだったのです。

これは今から15年以上前のことですが、当時は制作フローも確立されておらず、見積金額もなんとなくクライアントの顔色をうかがいながら的な感じでしたので、予想以上に早く終わる案件、いつまでたっても終わらない案件、制作にかける工数もかなりどんぶり勘定でしたので、これではダメだと思い、「正当な対価を得るには、受注額と工数に対する基準を作るべきだ」と、予算配分の明確化を強く意識するようになりました。

3. Web制作会社の収益構造の主軸は予算配分

先ほどもお話したとおり、Web制作会社の収益構造とは予算配分です。なぜかというと、「いいものを作ること」と「利益を出すこと」を両立させるためには、前もって予算配分の方針を決めておくことが重要だからです。

予算配分には、原価や原価率が関わってきます。また、“いいもの”を作るには、工数を適切に設定する必要があります。このことを踏まえて、原価や原価率、工数などについて順番にお話していきます。


4. 制作費用は原価と原価率から算出できる

ホームページの制作費用は、原価と原価率から算出できます。原価・原価率というと、少しとっつきにくいかもしれないので、身近な例から見ていきます。

レストランで、1枚1000円で仕入れたステーキ肉を1200円で提供した場合、顧客満足度は非常に高くなると思いますが、お店としては赤字です。この値段設定では、人件費や光熱費、家賃などの費用・経費がほとんどまかなえず、利益もゼロ。というかマイナスです。
「飲食店の原価率は30%が目安」といわれているので、1200円で売りたいなら原価360円で仕入れないといけません。

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Web制作会社にとって原価にあたるのはほぼディレクター、デザイナー、エンジニア人件費です。弊社では、原価率80%に設定してます。一般的なホームページ制作の場合、「会社20%、ディレクション30%、デザイン25%、コーディング25%」の割合で予算配分しています。

5. 予算配分の割合から見えること

予算配分は会社の組織構造で異なりますが、理解しやすいように、弊社の予算配分の内訳を具体例として話を進めていきます。

▼領域(職種)ごとの予算と原価率
弊社の場合、「会社20%、ディレクション30%、デザイン25%、コーディング25%」の割合で予算配分しますので、制作費用が100万円であれば、会社20万、ディレクター30万、デザイナー25万、エンジニア25万が予算として割り当てられることが一目で把握できます。大型案件や小規模な案件も基本的な制作においてはこの分配で作業します。

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また、会社視点では原価率80%(=ディレクション30%+デザイン25%+コーディング25%)、ディレクター視点では原価率50%(=デザイン25%+コーディング25%)であることがわかります。ディレクターにも原価が明確になりますので、責任と権限が明確になります。

▼会社経営の状況
会社への配分が20%ということは、「制作費用(受注額)の総額×20%」を予算として経営していることを意味します。つまり弊社では、バックオフィスの人件費などをその予算内でやりくりしているということになります。

このように、予算配分の割合を決めてスタッフにも公開しておけば、誰でも簡単に数字で把握することができ、予算感覚が身につきやすくなると思っています。

6. 弊社が実践している制作時間の割り出し方

次に各作業に割り振る原価率をどのように工数(時間)に変換してるかをご説明します。
弊社では簡単な計算式を使用しています。

制作費用 ÷ 5000 = 時間(制作にかけられる時間)

100万の案件の場合は、「1,000,000(円)÷ 5,000 =200(時間)」。
ディレクターがデザイナーやエンジニアの工数として使える時間が最大で200時間となり、
弊社ではデザイナーとエンジニアの時間配分を半々としているので、単純に、デザイナー100時間、エンジニア100時間で、100万の制作物の作業をすべて終わらせなければならないということになります。

ちなみに、一般的なWeb制作会社で働く人の給与の場合、5000の部分を6000にしてもらえたら原価率は40%ぐらいの時間が算出できると思います。

7. 予算配分などのルールを定めるメリット

これまでお話してきた予算配分や原価率、工数算出の計算式を明確に決めるメリットは、以下に挙げる3点だと考えています。


①費用面でのベクトルが合わせやすくなる

原価率や制作費用の分配ルールを定めておくことで、「クライアントと制作会社」「会社とスタッフ」の間で、費用に対するベクトルが合わせやすくなります。

クライアントは1円でも安く発注したいし、制作会社は1円でも高く受注したい。社内に目を向けると、会社としては1秒でも工数を削減して原価率を下げたいし、スタッフは1秒でもたくさんの時間をかけていいものを作りたい。

このように、利益相反の関係性の中で、予算の使い方が見える化され、分配のルール化されていれば、クライアントからもスタッフからも理解や納得を得やすくなり、「三方よし」の状態に近づけるはずです。少なくともエムハンドは、そのように考えてこれまでやってきました。

さらに社内でいえば、上限を決めずに原資を奪い合うより、枠を決めて予算を分け合い、それぞれの範囲で高いパフォーマンスを発揮することをめざしたほうが得策です。チーム一丸となって作り上げた高品質の制作物を提供することで、クライアントの満足度はより一層高まると思います。

②評価基準の指標として役立つ

予算配分を明確にすることで、評価基準としても利用できます。クリエイティブ面の評価が不明瞭になる理由のひとつに、「適性な時間の線引きが難しい」が挙げられますが、基準があることで、その範囲内でクリエイティブの良し悪しが判断しやすくなります。逆に評価基準が明確でなければ、クリエイターたちに対する評価は非常に曖昧なものになってしまいます。

ちなみに、弊社では以下の3つを制作物の判断基準にしています。

1 -クライアントが喜んでいる
2 -プロとしての提案ができている
3 -適切な工数で納品できた

予算配分からの工数算出の計算式を決めておくことで、3つめの「適切な工数」を評価できるようになります。

③会社の成長や案件の難易度に応じて設定を変更できる

予算配分のルールや原価率などは、一度決めたら変えてはいけないものではありません。会社の成長に伴う組織構成の変更に応じて、適切な予算配分にチューニングできます。

前回もお話しましたが、制作会社として成長していくほど、クライアントから依頼される案件の難易度が上がります。ディレクター、デザイナー、エンジニアといずれの負担も大きくなっていきますが、取り巻く環境や状況などに合わせて、設定を適宜変更できるのはメリットだと思います。

冒頭でもお話しましたが、環境の変化が激しい昨今は、予算配分はWeb制作会社のビジネスモデルとなる重要な部分です。ぜひこの記事を参考にしてみてください。




▼前回の記事はこちら

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