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まいこ・ザ・ジャンパー 3

最初から
承前

実際のレイアウトは様々だが、基本的に言えばアーキタイプの中心に”玉座”と呼ばれるチャイルドの専用の空間がある。そこを起点として船殻が生成され、チャイルドはそこで生まれ、そこで死ぬとされている。観念的な話だ。
「管理局、風切順也です。【チャイルド】に接見しに参りました」
二度目のその言葉を俺が発した先にはチャイルドと……そのお母様お父様。
「これはご丁寧にありがとうございます」「まーあー」「まいこです」
順番に母舞香さん、本人舞心ちゃん、父順大さんである。
「憚りながら、おいくつで?」
「26です」「1歳です」
順大さんありがとう。舞香さんは天然だな?

『一歳ですか。珍しいですね』
「うん、最年長に近いね。あ、こちらサポートのマルシャです」
「そうなんですか? 赤ちゃんの頃に発現すると聞いてはいますが」
舞心ちゃんをあやしながら、舞香さんが答える。
「一般的には……と言ってもまだまだサンプル数は少ないですが……生後三ヶ月から半年といったところですね。発現したアーキタイプも前例なく巨大ですから、関係があるかもしれませんが」
後半は半分自分に向けての考察だ。
「首が座ったり意思が出る頃ですね」
と言う順大さんの言葉は大体の見解と一致している。鋭い方だ。

「それで……その……」
そしてしばらく、名前や住所の登録と、簡易的な検査(視聴覚、脈拍などだ。それは一切一般人と変わらない)をしていると、こわごわと父母どちらからともなく尋ねごとを切り出してきた。
「この子は、どうなるんでしょうか。政府に監視されたり……預かられたり?」
当然の疑問だ。
「監視は、つきます。ただそれは、舞心ちゃんのためでもあります。そして……しかし……一方的に親子の関係を切り離されたりということは……国家を代表して、”無い”ことを保証いたします」
そう俺が言った瞬間、二人は脱力し、心底安心した様子で舞心ちゃんを挟んで溶け合うように抱き合った。

「チャイルドは人類の財産です。さればこそ、人権は無視できませんから」
繰り返すように、監視というのもチャイルド側を見張るのではなく、逆に……
BANG!!
「動くな! チャイルドをよこせ!」
こういう、バカが現れないようにするためなのだから。

【続く】

資料費(書籍購入、映像鑑賞、旅費)に使います。