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まいこ・ザ・ジャンパー 4

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堰を切ったように市民達が逃げる。それに対してグレートバカ……人さらい三人組のリーダー格が「動くな! 動くな!」と空へ向けて小銃を発砲する。が、日本人が銃撃事件になど慣れているはずもなく、あっという間に出入口がパンクし悲鳴と怒号の響く身動きできない修羅場が発生した。
これが無差別殺傷を目的としていたら最悪な事態を引き起こすところだが、不幸中の幸い、彼らはそれをする気はないようで……声を上げたリーダー格以外のスーパーバカとハイパーバカは見るだにオロオロと銃口を彷徨わせている。
彼らは半端にプロ過ぎたし、ここの市民はあまりに素人過ぎた。
「くそっ、いいからチャイルドだ!」
数秒の逡巡の末、バカ共は改めてこちらに向き直り、銃口を突きつける。そんな長物、うちの国じゃ伝統的にご禁制品だぜ。

「管理AI! 起きているなら仕事だぞ!」
俺は舞心ちゃんらの盾になるようにバカ共との間に身を滑り込ませ、虚空のアーキタイプに叫ぶ。
《諒解》
シンプルに俺の情報端末の画面にそう浮かぶ。メッセージングシステムなど組んでないので当たり前のようにハッキングだが、今は気にしている場合ではない。
クゥゥゥン……と玄妙なる音がして玉座ごと家族三人が下降し、思い出したようにリボン状の防護シールドが彼女らを覆うようにドーム展開する。
まあ、俺はそれに入れてもらえなかったわけだが。
「かっ、風切さん!」
振り返ると、順大さんが慌てたようにこちらに手を伸ばすが、最後のリボンの一条がそれを遮った。
「「「わァっ!」」」
同時に、再度振り返って前方。市民たちがごった返す出入口とバカ共の間にリボンが垂直に突き立ち、境界の市民らを向こうに巻き込む形で防護壁が設立される。
テンパったハイパーバカが衝動的にそれに銃撃を浴びせるが、表面には傷の一つもつかずに弾き返した。フルオートかよ。

そして、銃撃の残響が止む。
《エリアの齟齬です》
わかる。わかるよ。ここ、広間っぽいもんな。

俺はバカ共と4人きりになった。

【続く】

資料費(書籍購入、映像鑑賞、旅費)に使います。