Back To The Futureの魅惑の深海パーティーに出席したい
「This is a blues riff in B. Watch me for the changes and try and keep up, okay?」
──ブルースのリフをBのコードで弾くけんが、あとは俺を見てコードがかわるとこはついてきてくれんね。よか?
映画Back To The Future マーティのセリフ
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私が一番好きな映画は、Back To The Future。
私のことを知っているならわかるだろう、もちろん私が好きなのはダンスパーティーのライブシーン。
そう、ジョニービーグッド誕生の瞬間。
マーティの演奏でダンスパーティーは大盛り上がり。パーティーバンドから『もう一曲やろうぜ』と誘われる。『ホットにいこうぜ』と。
少し悩んでマーティはもう一度ギターを抱え直してこう言う。
『ここでオールディを一曲。……あ、いや、僕のいた所ではオールディです。』
そして演奏される。
このダンスパーティーから三年後にリリースされる、ロックンロールの名曲としてヒットする、ジョニービーグッド!
この演奏を聞いて興奮したチャックベリーのいとこのマービンとやらが、『チャック!新しいサウンドが欲しいんだろ?聞きなよ!』とチャックベリーに電話で聞かせる。
ロックの名曲、ジョニービーグッド誕生の瞬間である。
演奏の直前、マーティは客に背を向けて、パーティバンドに指示を出す。
日本語字幕では『リズムはブルース、Bで入って合わせてくれ』と出るが、何だこの訳。
正しい台詞は冒頭に引用したものである。
ブルースは基本的に3つのコードで構成される。だから、初めて会ったもん同士でも、その場ですぐセッションできる。
「This is a blues riff in B. Watch me for the changes and try and keep up, okay?」
このセリフで、パーティーバンドは『よっしゃブルースな。Bってことは残りのコードはあれとあれな。オッケーオッケー』ってことで、あんな風にいきなり演奏できるわけだ。
そして触れるのだ。チャックベリーのロックンロールのビートに。演奏しながらどんどん興奮してくる。お客さんも大興奮。
初めてロックンロールに触れたときの驚きと興奮。この時代の人だから感じることができたこの興奮。私は生まれた時には既にロックンロールはやりつくされていて、当たり前に存在していたから、この興奮は感じることができなかった。
小説やインタビューで文章としては読んだことがある。人が初めてロックに出会った瞬間の感動を。
川上健一著の青春小説『翼はいつまでも』では、主人公がビートルズのプリーズプリーズミーを初めて聞いた瞬間のことを、こう表現していた。
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ぼくのドアを勢いよく押し開けてドカドカと入りこみ、もうろうとした頭の中に雷鳴を轟かせた。ぼくはその曲に心も身体もむんずとつかまれて激しくゆさぶられた。こいつはいいぞ!身体のすみずみから歓喜と興奮がわきあがった。♪カモン・カモン、カモン・カモン、カモン・カモン、カモン・カモン!プリーズ・プリーズ・ミー・オー・イエー…「すげえ……!」皮膚が縮みあがってひきつるのをおぼえた。腕に鳥肌が立っていた。ビートルズ!プリーズ・プリーズ・ミー!
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浜田省吾の"初恋"では、『ラジオから流れてきたビートルズに一瞬で恋におちた。俺の初恋はロックンロール』と歌っている。
何度もこんな文章を読んで、『うっわ、いいなあ、この出会い方』とヨダレを垂らしてきた。
そんな、人がロックで出会う瞬間の驚きと感動と興奮を、映像として私に初めて見せてくれるのが、この映画のこのシーンなのだ。
全てはこのセリフで始まる。
私がこの映画で一番好きなセリフだ。
「This is a blues riff in B. Watch me for the changes and try and keep up, okay?」
それがよ、それがですよ!!!
昨日の金曜ロードショーではカットですよ!!
『懐かしのオールディを一曲』からばっさりカットですよ!!!!!!
う そ だ ろ !
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