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ケーキの舞

ある市民体育館でケーキの舞というものが開催されているらしいことを聞いた。
なんでも、ケーキを取り囲んでみんなで踊るらしい。
参加するつもりはなかったが、怖いもの見たさで見に行くことにした。
そこでは、老若男女がケーキの準備をしていた。
そのケーキは、今まで見たことがないほど大きく、お城の形をしていた。
しばらくして準備が整うと、人々はケーキを取り囲んで音楽をかけた。
聞いたこともないような不気味な曲だった。
なにやら不気味な呪文を唱え、ケーキの周りを踊り出した。
踊り中に一人が端っこで見ている僕を見つけ、曲と踊りを止めた。
踊っている人たちは踊りをやめ、僕を見てひそひそと話し始めた。
そのうち一人が僕の前に来て、すごい表情で聞き取れない言葉を話した。
彼は目から血を流していた。
僕は市民体育館から追い出されてしまった。
体育館前にあるパンフレットを見ると、このケーキの舞の団体名は、ケーキを契機にみんなで革命会であった。
どうやら彼らは、フランス史に残る発言、パンがなければケーキを食べれば、というものに対しいまだに恨みを抱き、今の社会の仕組みと照らし合わせ、国家転覆を引き起こそうとする集団であった。
市民体育館から悲鳴が上がった。
見に行くと血涙を流した人々が、普通の人たちを襲っている。
パン屋を営んでいる僕は、パンを取りに戻り、大量のパンを持って彼らの元に向かった。
僕は理性なく暴れている彼らの口にパンを突っ込んで回った。
すると、彼らの目は正常に戻っていき、ひと段落ついた。
歴史は繰り返す。
事件が起きてからでも、過去から学んで対処することは可能だ。

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