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エコノミカルコメディー

笑いが全てのエネルギーを生み出すようになった世界。
人々のお金は全て笑いにのみ支払われる。
自ら払うのではなく、笑ったら自動的に支払われる。
そんな世界で、絶対に笑うことのない男がいた。
彼は今まで一度もわらったことがない。
彼は世界一ケチな男と言われた。
しかし彼自身、笑いを我慢しているわけではなかった。
笑いたい時には笑いたかった。
けれど、笑いたいと思った時に、自分の貯金と未来のことを考えてしまい、緊張感で笑えなくなる。
彼はそんな男だった。
今日もまた笑いのショーがあちこちで行われている。
みなが自分の人生をかけて人を笑わす。
中には本当に体を張っているものもいる。
男はそれを見るたびに苦しくなり余計に笑えなかった。
ある日男は小鳥と出会う。
男が小鳥に話しかけると、小鳥はオウムのように同じ言葉を返した。
男は小鳥に色々な言葉を教えた。
ある日小鳥は今まで男が喋った言葉を繋ぎ合わせて喋り始めた。
オレハ、ウマクワラエナインダ。
それを見た人々がそれを見てわらった。
小鳥はまねして大笑いした。
オレハ、ウマクワラエナインダ、ワッハッハ。
男はそれを見て、初めて笑った。
緊張の糸が切れたように、男は大笑いした。
小鳥もそれを見て大笑いした。
男は更に大笑いした。
小鳥と男はずっと笑った。
それを見て人々も笑った。
誰かが笑うたびに誰かが笑う。
経済は笑いで循環している。

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