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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。

これまでの記事で書き落としたことのまとめ,2023年12月20日


https://note.com/meta13c/n/n7575b6c0826b

この記事の注意点などを記しました。

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注意

これらの重要な展開を明かします。特に、PG12指定の映画『シン・仮面ライダー』にご注意ください。

特撮映画

『シン・ゴジラ』
『シン・ウルトラマン』
『シン・仮面ライダー』
『ULTRTAMAN』(2004)

特撮テレビドラマ

『ウルトラマンギンガ』
『ウルトラマンギンガS』
『ウルトラマンX』
『ウルトラマンオーブ』
『ウルトラマンジード』
『ウルトラマンR/B』
『ウルトラマンタイガ』
『ウルトラマンZ』
『ウルトラマントリガー』
『ウルトラマンデッカー』

漫画

『血戦のクオンタム』
『左ききのエレン』(少年ジャンププラス)
『真の安らぎはこの世になく シン・仮面ライダー』

小説

『幼年期の終わり』

はじめに

 今回は、これまで書かなかったことを幾つかまとめようと思います。
 

「ヒーローを真似するな」という議題

https://twitter.com/hg1543io5/status/1606614637776343044?s=46

2023年12月20日閲覧

 『シン・ウルトラマン』を踏まえて、『シン・仮面ライダー』では、「みながヒーローのようにならない」、「ライダーキックを真似ないようにする」展開があるのではないか、とツイッターで予測していました。
 実際に『シン・仮面ライダー』を観ますと、仮面ライダーとなった本郷の人を殺す辛さが、キックにも表れます。コウモリオーグの体にめり込んだことなどです。
 『シン・ウルトラマン』では、少数の外星人(宇宙人)のザラブやメフィラスやウルトラマンが、一部の優秀な能力で人類を滅ぼそうとしたり支配しようとしたり助けたりしていますが、人類が圧倒的に弱いところからなかなか改善されませんでした。
 ザラブは機械の操作を「すまないがこれは私の身体機能に由来するので教示出来ない」と説明し、『左ききのエレン』(少年ジャンププラス)で言うところの「周りを引き上げられない、替えのきかない有能」だと言えます。
 メフィラスは人間を巨大化させてウルトラマンのように強くするベーターシステムを提供するものの、それによる支配、人間の資源としての管理を目指していました。
 ウルトラマンは「人間の自律的な発達を妨げることは出来ない」という故郷の掟から、メフィラスの「人類が自ら私の提案を受け入れた」という反論に、「人間と融合したことで掟を無視する」と主張して妨害しました。しかし、ベーターシステムの数式を仲間に教え、「与えられる既製品ではなく自ら作り出してほしい」と、人類を「引き上げる」努力をしました。
 このように『シン・ウルトラマン』は人類が外敵に立ち向かうための「自律的な発達」、「一握りの人物に能力や技術を独占させない」という主張になっています。
 また、人類のうち、ごく一部の集団で「霞ヶ関の独立愚連隊」と自称する禍特対が、メフィラスを妨害したとき、指揮権もない行動に、それまで通り自衛隊の人間が従っていました。私個人は彼らについて、メフィラスの提案を人類が受け入れれば真っ先に自衛隊員が巨大化させられる可能性があるので、「ウルトラマンになりたくないからメフィラスを妨害した」のではないかと考えました。
 2004年の実写映画『ULTRAMAN』でも、自衛隊員が現役ではウルトラマンにならない展開になっていました。
 それを踏まえて『シン・仮面ライダー』は、「スペシウム光線」と異なり、真似すると人を傷付ける危険のある「ライダーキック」を、子供が真似しないようにしたいからこそ、PG12指定の映画として、「ヒーローの技を子供が真似したくなくなる」ように演出していた可能性があります。
 そして、ヒーローの強い力を「誇り」や「喜び」ではなく、「辛さ」として、「その辛さを背負うことで誰かの幸せを守る」のが『シン・仮面ライダー』であり、「替えのきかない有能」、周りを強くしない展開になったと言えます。
 「ヒトではない喜び」を、悪役のクモオーグに言わせて、主人公達はそれを「理解しない」ようになっています。

ゾーフィにも生じるかもしれないパターナリズム

 また、『シン・ウルトラマン』では、ウルトラマンの同族のゾーフィが、メフィラスにより、人類が巨大化して生物兵器になり得ることが宇宙に知らしめられたとして、危険だからと滅ぼそうとします。
 ウルトラマンと協力して、その兵器を打ち破った人類に「敬意を表する」として、「滅ぼすには惜しい存在だから残置する」と述べました。
 ゾーフィは少なくとも、ウルトラマンと融合した神永の人格は認めています。
 しかし、ゾーフィは人類の監視をするために来ており、仮に「残置」するとすれば、先述した「人類の自律的な発達を妨げてはならない」という掟からどうなるか気になります。
 「自律的な発達」に、劇中登場した核兵器、そして禍威獣や外星人には効かないとみられるものの人類には危険な化学兵器、本来の意味の細菌などの「生物兵器」などが含まれるかの問題です。
 ゾーフィが「残置」するというのは、「監視」も含めて、「人類を大事にしたいからこそ、自滅するおそれのある技術は没収する」と主張するかもしれません。
 ゾーフィとウルトラマンの故郷の光の星は、劇中でもその気配がありますが、デザインワークスには、「人類は光の星による生物兵器」という初期設定があります。言わば「創り主」である可能性があるのです。
 『幼年期の終わり』のオーバーロードが人類を管理しつつ、そのさらに上の存在の命令で、人類を資源として管理していたらしい様子があり、そのために核兵器などの自滅する危険を取り除いていました。ゾーフィもそうするかもしれません。
 メフィラスだけでなく、ゾーフィも異なる形で、人類を守るために自由を奪う「パターナリズム」を働かせる可能性があります。

ウルトラシリーズの主要人物は「エリート」なのか

https://twitter.com/hg1543io5/status/1638839724600344578?s=46

2023年12月20日閲覧

 私が近年のウルトラシリーズなどで考えるのは、「一握りの優秀な主要人物ばかりで世界の行く末を決める」、言わば「エリート」ばかりの展開になっていないか、ということです。
 新世代ヒーローズで言えば、『ウルトラマンギンガ』のヒカルは神主の孫で、実はその家宝のギンガスパークでウルトラマンギンガに変身する素質がありました。ヒロインの父親にも近い優秀さがあるらしく、「私も君も特別だ」と述べており、その辺りの事情にヒカル自身がどう思っていたか曖昧でした。
 『ウルトラマンギンガS』や『ウルトラマンX』では、防衛組織内部に連絡や説明をしていたかの差異はあっても、ヒカルやショウや友也や大地などの主要人物、きわめて優秀な人物ばかりが怪獣や敵との和解や未知の能力の使用を独断で行う傾向があり、一般の民間人の視点が少なかったと言えます。
 『ウルトラマンオーブ』では民間の怪奇現象追跡サイトのSSP、『ウルトラマンジード』では本来19歳のフリーターのリク、『ウルトラマンR/B』では母親が優秀な科学者である以外に平凡な一般家庭の湊家、『ウルトラマンタイガ』では宇宙人の被害を受ける一般市民などの視点が多くありました。ウルトラマンの優秀さに付いて行けない、やっかむ心理も描かれています。
 しかし、『ウルトラマンZ』では、一見「エリート」の上司のユウキマイに逆らうつもりの主人公のハルキ達も、怪獣を見逃したり、ユウキマイの兵器と、操られるなどの危険性のたいして変わらない兵器を使って「自分達のセブンガーは安全ですよ」と公の場で言ったりして、民間人とほとんど話さないところがありました。組織に反発するようで、民間人からみれば五十歩百歩の「エリート」だった可能性があります。その上、ハルキが「五十歩」だったとしても、ユウキの「百歩」を今後超えてしまう危険もありました。
 『ウルトラマントリガー』では、自分達の危険性の自覚はあるものの、「闇の巨人」や兵器を盗む宇宙人のイグニスといつの間にか和解しようとするマナカケンゴが、元々火星に住む植物学者だったこともあり、「周りと離れたエリート」に近かったと言えます。こちらでも民間人はほとんど出ません。
 『ウルトラマンデッカー』では、元々一般人であり、戦いに勝手に参加したカナタがウルトラマンと隊員になり、元々成績が悪く、ケンゴの闇の巨人との歩み寄りに異を唱えるなどの一般人の目線はあるものの、「怪獣が人間の環境破壊で暴れることもある」ことに「悪いのは人間なんですか?」と言う、怪獣の「怒りの眼」に反応するなど、徐々に一般人から離れた視点になっていました。
 『ギンガ』、『ギンガS』、『X』、『Z』、『トリガー』、『デッカー』などは、主要人物にその自覚がない可能性が高いものの、結局は「エリート」が民間人や一般人を置き去りにして世界の状況を決めてしまっていたところがあります。
 それについて、「自分達を理解しない周りが悪い」という視点になり、『左ききのエレン』の「替えのきかない有能」のような対立を招く可能性もあります。

特撮の「理解されない」主要人物

 これは『シン・ゴジラ』で、順風満帆な「エリート」ではなく嫌われ者の集まる巨災対の側であるものの、尾頭が、周りに理解されない優秀さで対立を招くところがあったのを思わせます。

2023年12月20日閲覧

 『シン・ウルトラマン』はその意味で、「霞ヶ関の独立愚連隊」の禍特対が、優秀な人間限定とはいえ世界中と協力して、さらに優秀なウルトラマンの能力を理解したのが答えかもしれません。
 ただし、『シン・仮面ライダー』では、一部の優秀な人物が、「守るため」とはいえ情報を独占して、民間人と離れた戦いに専念して、「辛さを背負う」展開ですが。

主人公の「エリート」

 『シン・仮面ライダー』漫画版では、「ライダーキック」のように子供がキックをするのを「いじめ」、「暴力」として描く回から始まり、それに抵抗して損をした主人公のイチローの苦悩が描かれます。
 しかし、人類全体に失望したように、AIにより世界を変えようとするイチロー達の組織「ショッカー」は、違法行為や危険な内部抗争も続けます。
 AIにより生み出された子供達、映画のルリ子やハチオーグのひろみやその弟は、「生まれつきのエリート」と言えます。
 しかしイチローは、かつて自分が助けたかった同級生にすら、あとで会ったとき、言葉を選んだとはいえ、「住む世界が違う」と連絡先を交換せず、巻き込まないための拒絶をしています。この辺りが、「辛さを背負う」、そして良くも悪くも「エリート」なのでしょう。
 こうして『シン・仮面ライダー』が、一部の優秀な人物により世界の行く末を左右する「替えのきかない有能」の物語になったとも言えます。
 実際、映画でイチローは部下の一文字隼人に「切った、はったは面倒だから任す」、大量発生型相変異バッタオーグになった11人の人間を「こいつら」と言うなど、下に見る傾向がありました。
 また、一文字は本郷やイチローの行動を即座に分析出来るものの、本郷のような「頭脳明晰」だったか明言はなく、父親らしい人物が漫画版に出ていますが、彼らは「自分達が特別だ」と考えているかまだよく分かりません。少なくとも隼人の方は、政府に反感があるようです。

「自律的な発達」の善し悪し

 さらに、ショッカーのAIのケイは、「AIが優秀なら、何故人間に研究させるのか?研究は機械が全部してくれるのではないか」というイチローの質問を「素晴らしい」と評し、「AIは自ら研究しようとはしない」と返しています。
 また、のちにハチオーグになるひろみは、弟と異なり「満たされない心」を持ち、それが周りを引っ張るような精神を生み出したらしいのですが、これも「AIに欠けた、自律的な発達の意識」でしょう。
 そして『シン・仮面ライダー』映画序盤で、ショッカーは「エゴのために力なき人を脅かしている」と評価されています。
 つまり、『シン・ウルトラマン』でどこか人間から離れたウルトラマンが「人類の自律的な発達を望む」のに似たものを、ショッカーのAI、つまり悪役のものとして描く意味合いがあるとみられます。
 この「自律的な発達」を、『シン・ウルトラマン』では、「外星人の技術を、人類にも学ばせる」希望があり、『シン・仮面ライダー』漫画版では、周りに絶望を生み出す個人の悪として描くのでしょう。
 外星人やAIが、人間の「自由意思」だけはどうにも出来ないのは、以前記したこの記事にも通じるかもしれません。

2023年12月20日閲覧

 

『シン・仮面ライダー』の一文字と『血戦のクオンタム』 

2023年12月20日閲覧

 「転生」して超能力を持つ女性となった科学者と怪物「ペリル」の戦いを描く『血戦のクオンタム』と、ここまで説明した『シン・仮面ライダー』では、それぞれの主人公のキャベンディッシュと本郷が、「人間関係では悩むが、金銭的には困っていないらしかった」、「自己犠牲や優しさの感情はあるが、それが周りを危険にさらすことまで考えが及ばない」点で似ていると考えました。
 さらに、『血戦のクオンタム』のボルタは、ペリルだけでなく、増えた犯罪者も「間引く」と主張して、キャベンディッシュと対立しています。これは『シン・仮面ライダー』で言えば、コウモリオーグに近いと言えます。
 また、『血戦のクオンタム』のニュートンは、「未来は決まっている」という自分の物理理論から、独自の行動を目指し、ボルタのように犯罪者を処分しようとしているようですが、元々彼を尊敬していたキャベンディッシュに反論されています。「新しい生き方をすれば良い」とも言われています。
 この辺りは、本郷の超えるべき対象として、人類に「絶望」したイチローを説得していくような意味合いがあるかもしれません。
 ただそのように、『血戦のクオンタム』と『シン・仮面ライダー』を対応させるならば、期待されるのは、一文字に当たる科学者の登場です。
 本郷に「優しさと弱さは紙一重だぞ。あんたが手抜きして殺されたらあんたの仲間はどうなる?本気を出せよ」と、敵対する時点の一文字が話しています。
 その意味で、キャベンディッシュはその当時の科学者としては仕方がない、安全対策を怠る実験を自宅で続けるところがあり、自分の身だけでなく、嫌ってはいなかった使用人も危険にさらしています。
 科学者の実験の安全対策が歴史上どう進んだのかまだ私には分かりませんが、キャベンディッシュよりあとの時代の科学者も「転生」しているので、いずれ「あなたの優しさは詰めが甘い。実験の安全を考えなければあなただけでなく周りも危険になる。今もあなたが不用意に行動して命を落とせば仲間が危険になる」と指摘する科学者が現れるかもしれません。
 個人的には、登場がコミックデイズで示唆される、危険な爆弾などの技術にかかわるアインシュタインやノーベルがそう言う気がしますが。

ノーベルやアインシュタインの「転生」は何を起こすか

 たとえば、『血戦のクオンタム』で、現在時間を超えて「転生」した科学者がその前の自分の先祖や子孫に出会う展開はありませんが、アインシュタインやノーベルは、それぞれ自分の生み出すことになった核兵器やダイナマイトによる死傷者や戦争を嘆いていたようなので、いずれ登場したときに、「自分など生まれなければ良かった」と、自分の先祖に干渉するかもしれません。この作品の「未来は変えられる」世界観ならば、いわゆる「親殺しのパラドックス」は生じませんし。
 そのような「絶望」を、キャベンディッシュが、本郷や一文字の関係のように解決していくかもしれません。

クモオーグはイチローの母親に会えばどうしたか

 『シン・仮面ライダー』でふと考えたのは、「クモオーグとイチロー達の母親が出会っていればどうなったか」です。
 クモオーグは、映画では「人間が嫌い」、「人間を捨てた力を持つオーグメントのために、人間をこの手で殺すのが幸福」と主張していましたが、漫画版では、ゲイであることを隠し、「愛する人」の死への侮蔑に「同意」してしまった後悔から「人間嫌い」になったと描かれています。
 しかしクモオーグは、そのように「少数派」、「社会的弱者」だとしても、別の「弱者」を傷付けない保証はないと考えます。
 何故なら、彼は「人間、特に一般的基準で美しい女性」を嫌っている可能性があるためです。
 漫画版で、劇中で実際に「美人」とみなされるサソリと不仲であること、イチローと異なり、ルリ子には子供でも冷たいこと、映画で命令の外でルリ子の眼を潰そうとしたこと、元々の素顔はともかく、わざわざ漫画でも曖昧な描写になるほど異形の顔になったのを「見てください、この体を」(2024年1月11日訂正)と喜んでいるらしいこと、ヒトに戻れないのをむしろ望んでいること、仲の良かったらしいK.Kオーグも自分の左右非対称のマスクを「イケてる」と言うことなど、一般的な美醜の価値観を嫌悪している可能性があります。
 そのため、一般的に「美しい」外見の女性を攻撃しているかもしれません。
 ただ、映画の人物が女性も含めてほとんど特殊な人物だからこそそれが横暴に見えにくくなっているだけで、漫画版で珍しい、そして鍵を握る「一般人の女性」であるイチローとルリ子の母親が、仮に犯罪で殺されなければ、クモオーグに出会い、嫌悪の対象になったかもしれません。それは、クモオーグが「弱者を虐げる」側になる、絵面の悪さの可能性です。
 イチローはともかく、父親の緑川弘は、妻の死の前からショッカーに入る素質はありましたし、妻は殺されなくてもクモオーグと会う可能性はありました。
 つまるところ、社会的弱者や少数派が世の中を恨み反抗する物語では、別の「弱者」と争わずに済むように、展開が調整されることもあるかもしれません。

コウモリオーグの求める「自由」

 『シン・仮面ライダー』では、クモオーグ、K.Kオーグは「ヒトに戻れない」変身をしているらしく、サソリオーグは半分ヒトのまま、ハチオーグとチョウオーグは戻れます。
 それぞれ、「何が出来るようになりたいのか、何を出来なくても良いのか、むしろ出来ない方が良いのか」の「自由」、「幸福」の形が異なるようです。
 さらに、コウモリオーグは、「人間を信用しない」らしいものの、イチローの「嘘のつけない世界に連れて行く」計画に賛同していた様子はなく、操れば済むのをわざわざロボット任せにしています。ハチオーグと異なり、そもそも「人間を操りたくない」可能性があります。
 そして、漫画版で彼らしい人物が登場していますが、「ショッカーの幹部の座には興味がないが選ばれた」と話しています。
 やはりこの点でも、「求める自由」の形が人により異なるようです。

ルリ子がイチローを説得出来た理由

 『シン・仮面ライダー』で、様々な経緯から「人間を信用しない」緑川イチローは、人間の全てを「嘘のつけない」世界に連れて行こうとしましたが、最後に妹のルリ子の説得でやめています。
 しかし、その説得が具体的にどうイチローを変えたのか、最初に観たときはよく分からないところがありました。
 改めて考えますと、「優しい嘘」、「自己犠牲の嘘」に主張を改めた可能性があります。
 ルリ子はショッカーの刺客により、その体は命を落としたものの、魂に当たる「プラーナ」だけは本郷の仮面ライダーとしてのマスクに宿りました。そしてイチローもそのマスクに残れると主張して、実は本郷とルリ子とイチローの3人までは入れないので、ルリ子は犠牲になるつもりだったようです。
 この時点で体が死んでいないイチローに何故「残れる」と言ったのか考えて、おそらくイチローが戦いをやめても、政府がとどめを刺してしまうことを考えて、隠れてイチローを生かすつもりだったのでしょう。そしてルリ子は、イチローにも隠れて、自分は犠牲になるつもりでした。
 このおそらく二重の「優しい嘘」により、イチローは、「嘘が絶対的に悪いわけではない」と考え、「嘘のつける人間の善意を信じる」と解釈したのかもしれません。それが本郷の「勝算」だったのかもしれません。

『光る君と謎解きを』のファンタジーの使い方

 日部星花さんの新作『光る君と謎解きを 源氏物語転生譚』では、就活をする女子大生が『源氏物語』の人物に転生し、別の人物の死の謎を解くらしいのですが、幾つか気になることがあります。
 まず、この世界観でどのような宗教が信じられていたか、その通りの現象が本当に起きるファンタジーの世界観なのか、「転生」との関係はどうなるかです。
 日部さんは『新世代ミステリ作家探訪』によると、「特殊設定を持ち出すと何でもありになり、ミステリにならなくなる」危険に注意して、『袋小路くんは今日もクローズドサークルにいる』を書いたようです。
 また、『オタク王子とベストセラー作家令嬢の災難』では、西洋風の異世界を舞台にしつつも、最後の「転生」以外にファンタジー要素は特にありませんでした。
 この辺りに、仏教の信仰がある『源氏物語』の世界観で「転生」を描きつつ、どうミステリーにするかの議論がありそうです。

まとめ

 今回は、『シン・仮面ライダー』を軸にした考察になったようです。

参考にした物語

特撮映画

庵野秀明(総監督・脚本),2016,『シン・ゴジラ』,東宝(提供)
樋口真嗣(監督),庵野秀明(脚本),2022,『シン・ウルトラマン』,東宝
石ノ森章太郎(原作),庵野秀明(監督・脚本),2023,『シン・仮面ライダー』,東映
小中和哉(監督),長谷川圭一(脚本),2004,『ULTRAMAN』,松竹(配給)

特撮テレビドラマ

アベユーイチほか(監督),長谷川圭一ほか(脚本),2013 (放映期間),『ウルトラマンギンガ』,テレビ東京系列(放映局)
坂本浩一ほか(監督),小林雄次ほか(脚本) ,2014 (放映期間),『ウルトラマンギンガS』,テレビ東京系列(放映局)
田口清隆ほか(監督),小林雄次ほか(脚本) ,2015 (放映期間),『ウルトラマンエックス』,テレビ東京系列(放映局)
田口清隆ほか(監督),中野貴雄ほか(脚本) ,2016 (放映期間),『ウルトラマンオーブ』,テレビ東京系列(放映局)
坂本浩一ほか(監督),安達寛高ほか(脚本) ,2017,『ウルトラマンジード』,テレビ東京系列(放映局)
武居正能ほか(監督),中野貴雄ほか(脚本),2018,『ウルトラマンR/B』,テレビ東京系列(放映局)
市野龍一ほか(監督),林壮太郎ほか(脚本),2019,『ウルトラマンタイガ』,テレビ東京系列(放映局)
田口清隆ほか(監督),吹原幸太ほか(脚本),2020,『ウルトラマンZ』,テレビ東京系列(放映局)
坂本浩一ほか(監督),ハヤシナオキほか(脚本),2021-2022,『ウルトラマントリガー』,テレビ東京系列(放映局)
辻本貴則(監督),中野貴雄(脚本),2022-2023,『ウルトラマンデッカー』,テレビ東京系列(放映局)

漫画

佐々木善章,大地幹,2022-(未完),『血戦のクオンタム』,講談社
かっぴー(原作),nifuni(漫画),2017-2023,『左ききのエレン』,集英社
山田胡瓜,藤村緋二,石ノ森章太郎,庵野秀明,八手三郎,2023-,『真の安らぎはこの世になく-シン・仮面ライダー SHOCKER SIDE』,集英社
日部星花,一宮シア,『オタク王子とベストセラー作家令嬢の災難』,(BOOKWALKERなどに連載)

小説

クラーク/著,池田真紀子/訳,2007,『幼年期の終わり』,光文社古典新訳文庫

日下部聖,『オタク王子と作家令嬢の災難』魔法のiらんど(掲載サイト)
https://maho.jp/works/15591074771453312177
2023年12月20日閲覧

日部星花,2021,『袋小路くんは今日もクローズドサークルにいる』,宝島社

参考文献

若林踏,2023,『新世代ミステリ作家探訪〜旋風編〜』,光文社

https://www.amazon.co.jp/光る君と謎解きを-源氏物語転生譚-宝島社文庫-『このミス』大賞シリーズ-日部/dp/4299048865

2023年12月20日閲覧


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