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ウイルス性胃腸炎によって、しかばねとなった家族を救った「笑い」

2021年初っ端から「ウイルス性胃腸炎」にかかった。noteを更新中も我が家はウイルスに汚染され、地獄絵図と化していた。そんな状況下を救ってくれたのが「笑い」だった。

※そのときの記録を書いたものです。嘔吐の話が頻発します。苦手な方は、別の記事をご覧いただけたら嬉しいです。

【家族の感染状況】

12/31 息子3歳 発症
 1/2 23時頃 娘5歳、わたし 同時に発症
 1/3 4時頃 夫 発症 

感染経路は、恐らく息子3歳。未だ指しゃぶりをしているので、指に付着したウイルスが体内へと侵入した模様。
娘5歳とわたしは、ほぼ同時に発症し、同時多発テロ勃発。あっちでもオエ。こっちでもオエ。
その数時間後、夫も発症。

終わつた。オワツタ…。

我が家も一家で、めでたく感染だ。

娘5歳は今まで嘔吐したことが一度しかない、脅威の胃袋を持ち合わせていた。しかし、このたびのウイルスには打ち勝てなかったのだ。30分に1回のペースで桶に顔をつっこんでいた。

わたしはというと、生牡蠣が大好きで、お酒も大好きなもので、嘔吐には慣れていた。(自慢にならない)。それでもやっぱりしんどかった。何度も天を仰ぐくらいキツかった。だから、お子たちはもっとキツかったに違いない。ほんとによく耐え抜いてくれたと思う。
トイレの便器を眺めながら、あとどれくらい自分の体から「奴ら」が流れていけば楽になるのか、ということばかり考えていた。奴らはめちゃくちゃしぶとかったから。

早々にギブアップしたわたしの横では、夫が大活躍してくれた。子どもたちを介抱する夫。おー頼もしい!と思って安心して任せていた。

数時間後、ふと気づくと、夫がいない。あれ?と思っていると、トイレの方から「オレもやられた…。」いまにも息絶えそうな声が聞こえてきた。夫もあっけなくしかばねとなった。最後の砦がやられた瞬間だった。

夫はいままでインフルエンザにも胃腸炎にも、かかったことがなかった。(そんな人いるの?!と思っていたけれど、本当)。お酒も強いので、トイレに駆け込んでいる姿を一度しか見たことがない。(もうかれこれ一緒に住んで、12年にもなるのに)。だからこそ、今回の胃腸炎はかなりこたえたようだった。

何か話かけても、「…すん。」としか返ってこない。
「大丈夫?生きてる?」
「…すん。」
うん、全然大丈夫ではないな。邪道な質問してごめん。

そしてこの後、わたしたち夫婦を窮地に追いやったのは「奴ら」ではなく、息子3歳だったのだ。(決して息子を責めているわけではない)。

息子は他人にうつすと、あっという間に回復し、わたしたちがオエオエしているころには、部屋中をキックボードで走り回っていた。狭いリビングに3人のしかばね。うまく避けてくれるはずもなく、誰かの足に当たったり、壁に激突したり、どんなに怒っても、いまは自分の方が優勢だと理解した息子はやりたい放題だった。

「ママー、ホットケーキ作りたい。」「ウルトラマンタイタスどこー?」めちゃくちゃ甘えだしたのだ。わかるよ。わかる。具合悪いとき、「ママ…大丈夫って言って…。」と、何度も言っていた息子3歳。辛かったよね。うん、うん。元気になったから、遊びたいよね。

でも、母はしかばね。父もしかばね。姉もしかばね。いまは遊べない。遊びたくても、遊べないんだ。すまん、息子よ。もうしばし、我慢してくれ。

そんなことを言っても3歳に理解は難しい。わかってはいたけれど、もう限界。嘔吐が落ち着くと、今度は追い討ちをかけるように発熱。体はガタガタ震えまくってる。もう、限界。

ああ、神よ。(無宗教だけど、すぐ弱音を吐くわたし)お助けください。

そう思ったときだった。夫がむくっと体を起こし、久しぶりに口を開いた。

「もう、おならもできない…。」

要するに、トイレに行っても上からも下からも、水のようなものしか出なくなっていた夫。ちょっと油断すると、トイレまで間に合わない深刻な状況になっていたらしい。

「ぶ、ぶ、ぶはははは。」

わたしは、笑いを堪えようとしたけれど、我慢できなかった。もう、色々とまらなかった。涙を流しながら笑った。なにがそんなにおかしかったのか、今考えるとよくわからない。笑ってはいけない状況ほど、笑いがとまらなくなることがある。ソレだった。
わたしの笑い声を聞いて、息子3歳もケラケラ笑いだした。それにつられて、娘5歳も、身動きが取れなかったのに、ニヤっとかすかに笑った。

しまいには、夫までも「…すん。」と笑っていた。(たぶん、笑っていたと思う)。

おおみそかは、ダウンタウンのガキ使を見られる状況ではなかったが、結局はどんな状況でも、人間って「笑い」に救われるんだ、と改めて実感した年末年始だった。


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