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【おすすめ本】話題沸騰!! 今最も注目のマーケティングのフローモデルとは?

『The Art of Marketingマーケティングの技法
-パーセプションフロー・モデル全解説―』
著者:音部大輔
出版社:宣伝会議
初版:2021/12/1
ページ数:302ページ

マーケティングのおもしろさをおすすめの本を通して初心者でもわかりやすく紹介していく「マーケティングの本棚」。Kindle unlimitedでも読めるものを選書し、手に取りやすく、なるべく身になるポイントを抽出していきます。まずは新刊からということで2021年12月初版発行の『The Art of Marketingマーケティングの技法-パーセプションフロー®・モデル全解説―』を紹介します。本書は、音部さんが考案し命名したパーセプションフロー®・モデルについて解説する初めての書籍と謳われています。

■著者プロフィール 
音部大輔さんはP&Gマーケティング出身

音部大輔さんはP&Gマーケティング在籍時に、アリエールやファブリーズのブランドマネージャーやマーケティングディレクターとしてブランドマネジメントを担当。両ブランドを現在の確固たる地位へと築き上げた方です。

■1章のポイント 
マーケティングの現在がわかる濃密な内容

 1章では、音部さんがP&G時代、アリエールやファブリーズがトップブランドへと成長していく過程をマーケティングの手法から理解できるようになっています。ここを読むだけで、P&G流のマーケティングやブランディングのテクニックを時系列や体系的に理解することができるはずです。それに当時の状況についてリアリティを感じられる内容になっており、さまざまな部署との折衝やブラッシュアップされていくさまがわかるので、とても読み応えがあります。
 本書は、もともと原稿が60万字を超えていたそうで、それから15万字ほどに編集され凝縮・濃密作となっているのがうなずける内容です。

■2章のポイント 
パーセプションフロー®・モデルとは?

 2章では、パーセプションフロー®・モデルの概要が説明されています。音部さんはこう定義づけています。

“パーセプションフロー®・モデルは、消費者の認識(パーセプション)”変化を中心としたマーケティング活動の全体設計図です。マーケティングの4P、すなわち製品、価格、流通・店頭、施策などの全活動を図示するので、各活動が的確に配置され、連携し、全体最適を実現するのに有効です。(中略)パーセプションフロー®・モデルは製品や流通経路、販売の視点から「どのように売るか」という旧来型のアプローチではなく、消費者の視点から「どのように欲しくなり、満足するか」を考え、可視化します”

 1億総中流社会と言われた70年代から時が経ち、価値観は大きく変化しました。ダイバーシティと言われるように、ライフスタイルも多様となっています。現在小さいコミュニティでのビジネスが盛んになってきているように、細分化された消費者をターゲットにする上でもパーセプションフロー®・モデルは活用することができそうです。
 消費者のパーセプションということでいうと想起されるのは、AIDMAの法則です。
 AIDMAは最初の2項目でAttention(注目)→Interest(関心)となりますが、パーセプションフロー®・モデルはInterest(関心)→Attention(注目)となります。インターネットなどの情報氾濫による社会では、関心がないものは注目されません。たしかに欲しい情報にたどり着くことが簡単にできることで、関心事以外に注目する機会はすくなくなっています。
パーセプションフロー®・モデルは、そのような現代ならではの消費者行動をターゲットにする仕組みであり、市場を創造し未来の消費者を生み出すことに長けていると著されています。
 ちなみに当社では、マーケティングに関してオリジナルでDIANA(Desire→Inspire→Attention→Navigation→Action)の法則を取り入れることがあります。AIDMAの派生は多くあるので、それぞれの企業によってアプローチ方法は異なります。


■3章のポイント 
見える化と仕組み化

 音部さんはP&G時代、上司から「成功例も失敗例もその手続きを可視化できるような仕組みをつくったほうがよい」とアドバイスされたそうです。
まず、消費者の視点と満足を目指すことをメンバーで共有するには、見える化と仕組み化が必要であると説きます。たしかにメンバーでプロジェクトを進行する場合、意見の相違はつきものです。しかし、関係者が目的を明確にすることで意思疎通がしやすくなり、お互いの齟齬が少なくなります。
さらに、案件の成功失敗問わず可視化することで、チームの共有財産となり、経験を活かすことができます。
 当社でも、業務内容の見る化と仕組み化という点では積極的に活用をしています。消費者の視点と満足を共有する上で、メンバーのコミュニケーションは欠かせません。リモートワーク主体の現在でも活発な意見交換ができるよう仕組みをつくり、目的を見失わないことはとても大切だと考えています。

■4章~6章のポイント 
強いブランドのつくりかた

 4章では部門の担当者別にパーセプションフロー®・モデルの使い方が書かれており、どのように活用することがよいか明確に理解することができるはずです。
 5章のパーセプションフロー®・モデルのつくり方の中で特に印象に残ったのが強いブランドについての説明です。

“強いブランドは、個人と直接結びついているのではなく、大事な誰かとの間に存在している”


 好きなブランドというものは、好きな著名人が着ていたり、友人との思い出といった、何かの出来事や記憶が介在しているものです。当社の代表は心理学の研究者なのですが、このことについて、「よく心理学では”認知的不協和理論”やハロー効果”で説明できる現象」と解説してくれました。
また、強いブランドになるには、特別な満足というよりブランド体験が消費者の期待値を少し超えることが重要だといいます。
 高級レストランより、コスパがよく愛想のいいマスターの洋食屋さんに足が向く身としては、ブランド力というものを改めて気づかされる言葉となりました。
 6章では、パーセプションフロー®・モデルの検証方法が書かれていますので、実際に導入した際にはこの章が役立つようになっています。

■コラム 
初心者こそおすすめの理由とは

 巻末にはコラムがあり、本書で使用されたマーケティング用語をより理解しやすいように詳しくまとめられていて、初心者にも配慮された編集がなされています。
 さらに本書がマーケティング初心者におすすめの理由は、音部さんがこれまでに読んだ本の中の印象的なフレーズを論拠や思考の一例として挙げているところです。『マーケティング22の法則』、『戦争の世界史』、『孫子』、『開高健電子全集』などジャンルはマーケティングの名著から軍事、哲学、エッセイなど幅広くあります。マーケティング関連の本では、軍事や哲学本からの引用はよくあります。本書では、引用部分を比喩表現のように効果的に用いているのが特徴で、とても印象に残りやすく、ジャンルもエッセイまで網羅している点が興味深かったです。
 それらのエッセンスを覚えることで、マーケティングだけではなく、アイデアやビジネスにも使える知識が身につきそうです。

■まとめ

最後にまとめです。
・パーセプションフロー®・モデルは、消費者の認識(パーセプション)を中心としたマーケティング活動の全体設計図。
・「どのように欲しくなり、満足するか」を考え、可視化する仕組み。
・強いブランドは人と人の間に存在する。
・ブランド体験が消費者の期待値を少し超えたときに起きる。
などが理解できます。
 パーセプションフロー®・モデルは数多くの企業や業種を問わず使用され、D2CやBtoBでも活用されるほど汎用性の高いものとなっているようです。使用方法は本書に詳しく書いてありますので、読んだ中でのポイントを紹介しました。マーケティングの手法としてパーセプションフロー®・モデルはさらに注目されていくことだと思いますので、ぜひご一読ください。
よろしければ下記もご覧ください!
https://www.j-messe.co.jp/

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