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学生たちの間で、SDGsがこれほどまでに認知されているのはワケがある -身近な社会問題に興味を持つ若者たち-

最近よく耳にするSDGsという言葉。7月15日~20日の間に、MERYのアプリ内で実施した「興味関心に関するアンケート」によると、どうやらMERY世代の若い女子たちの間でも、SDGsを身近に感じている人が増えている様子だ。現代の若者たちはSDGsについて何を思い、どう考えているのか……。U25世代の意識を考察する。

SDGsの認知度は社会人よりも大学生・高校生の方が高い!

SDGsとは、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」の略称で、国連が提唱する全世界の未来に向けた大きな目標のこと。「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現に向け、2030年を年限とし、17の開発目標と169のターゲット、232の指標が定められています。

そんなSDGsに関して、MERYではアンケートを実施。今回のアンケートには、中学生38人、高校生91人、大学生・専門学生94人、会社員・公務員116人と、計339人の女性たちから回答が寄せられました。

まず、「SDGsという言葉を知っていますか?」という質問をしたところ、「知っている」「聞いたことはある」と回答した人は、会社員・公務員では37.9%、大学生・専門学生では54.3%、高校生では60.4%、中学生では18.4%という割合に。社会人よりも大学生・高校生の認知度が高いという、興味深い結果が得られました。

●SDGs認知度(n.=339)

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また、知っていると回答した人に、その関心度についても質問したところ、以下のような結果に。

●SDGsを知っていると回答した人はそのことをどう思って(感じて)いるか

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どの世代においても、「最近身近に感じることが増えて興味が出てきた」という回答が一番多くなりました。

実は先日、国内・海外の最新ファッション&ビューティトレンド情報を発信するWWD BEAUTYとMERYがコラボレーションし、ビューティイベントを開催しました。SDGsという言葉は、そのイベントで紹介したトレンドワードの一つにもなっていたのです。このことからも、SDGsは若者の間で非常に身近な存在であることが伝わってきます。

国連が提唱する全世界一丸となって取り組むべき目標と聞くと、スケールが大き過ぎて、個人の生活には関係のないもののようにも思えるものですが、なぜ若者世代はこんなにも身近に感じているのでしょうか。

SDGsを知ったきっかけは──学校、SNS、広告

では実際のところ、MERY世代の若者たちは、SDGsをどんなきっかけで知ることになったのでしょうか。SDGsの認知経路について質問をしたところ、以下のような回答結果が得られました。

●SDGsを知った経緯

結果を見ると、SDGsの認知度が高い、大学生や高校生の場合、まず一番のきっかけになっているのは、学校であることがわかりました。

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というのも、2020年度から文部科学省が提示する学習指導要領が改訂されたことに伴い、各教科において教科書の様々な箇所でSDGsについて触れられています。それを受け、教育現場では、SDGsの理解を深めるためのコンテンツやプログラムの導入が進められています。カードゲームを使って、現在から2030年までの道のりを体験するゲームプログラムなども登場し、親しみを持ちながらSDGsについて学ぶことができるようです。若者がSDGsをより身近に感じている一因であるといえるでしょう。

社会人の場合は、「インターネットで知った」という回答が多くなっています。これには、現代の若者はスマホを見る時間が多く、様々なニュースや情報に触れる機会が多いことが影響していると考えられます。また、所属する会社で推進しているという声も多く寄せられました。

「会社で推進している」(社会人)
「会社でも方針の一つとして打ち出しています」(社会人)
「職場の研修で習った」(社会人)

SDGsの目標達成につながる製品やサービスを開発することは、新規市場開拓や事業機会創出につながる可能性も秘めており、取り組む企業が増えています。また、SDGsに取り組んでいることは、投資家からの評価を高め、顧客にも良いイメージを与えることができます。つまり、SDGsは企業の姿勢をはかるアイコンにもなりつつあり、今後、取り組む企業がより一層増えると予測されるのです。その結果、若者世代におけるSDGsの認知度はさらに高まる可能性もあると、MERYでは考えています。

また、上記以外に、普段の生活を送っている中で知ったという人も多いようです。

「街中の広告で見た」(社会人)
「ファッションブランドのサイトで」(大学生)
「雑誌」(高校生)
「雑誌で知った」(中学生)

近年、アパレル業界では”サステナビリティ””エシカル”といった取り組みが数多く取り上げられています。エコを前面に打ち出すことは、ブランドのイメージアップにつながるという狙いもあってのことです。そのため、H&MやZARA、ユニクロといった、若者のファンも多いファッションブランド勢が、雑誌や自社サイト、広告などで大々的に宣伝するようになっているのです。

ファッションブランドの広告等においても、サステナビリティやエシカルに向けての意識を表現したものが増えていることが、彼らへのアプローチになっていることがわかります。SDGsについては、大量生産や供給過多などの問題を抱えがちであるファッション業界にとっても他人事ではなく、取り組むべき課題であるなか、エコに注目が集まり、ヨーロッパを皮切りに、最近では日本においてもサステナブルやエシカルな取り組みを始めるブランドが増えてきています。

このように、ファッションブランドの広告や雑誌を通して、若者たちの目に多く留まるようになったことも、SDGsを身近に感じられる要因といえるかもしれません。

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自分ごととして捉えられる身近な社会問題に興味を持つ若者たち

最後に、数あるSDGsの目標の中でも、若者世代が一番興味を持っている項目について探るべく、「社会的問題で身近に感じることを教えてください」という質問もしてみました。調査を実施した時期がコロナ禍であったことも影響し、コロナ関連の回答が多く寄せられましたが、地球環境について心配する声も多く見受けられました。

「地球温暖化」(社会人)
「地球温暖化が進み、異常気象が増えていること。災害が多い!」(社会人)
「異常気象」(大学生)
「地球温暖化のせいで、天気がおかしくなってること」(中学生)

地球温暖化が原因の一つと考えられる記録的な猛暑やゲリラ豪雨などの異常気象、そして、それらによる災害のニュースがメディアで報じられています。自分の身にも危険を感じることが多くなった分、地球環境について意識するのは当然のことといえるでしょう。

また、国内のスターバックス全店で2020年1月から紙製のストローを段階的に導入していることや、2020年7月1日よりレジ袋の有料化がスタートしたことなど、身近なところでも明らかな変化が起きています。そのことをきっかけに、プラスチックごみの問題やエコを意識し始めた人も多いようです。

「ゴミの問題、環境問題 エコバッグやマイストロー、再生可能な資源を積極的に取り入れようとする動き」(社会人)
「プラスチックのゴミを減らすために、7月からレジ袋が有料化したこと」(大学生)
「ゴミ、環境保護」(大学生)
「最近は学校含め、窓を開けてエアコンを強めにつけている場所によくいるのでそこから出る二酸化炭素排出量が心配です。また街で沢山の自動販売機を見るのですが、これを通してどれだけのプラスチックが使われているのかなと不安になります」(高校生)
「プラスチックごみ問題」(高校生)

以上のように、SDGsの中でも、より自分たちに身近な環境問題やエコについて興味を持っている若者が多いことがわかりました。それは、U25世代が多いMERYのライターたちの間でも同じ。最近ではMERY内でも、「コスメでエコを考える時代!環境問題に取り組みつつお得なメリット◎な4ブランド」、「今密かに話題の“エシカルスイーツ”ってご存知?地球・社会・人に優しい甘味品たち」、「レジ袋ないところが多いから。突然のおつかいもOKな#エコバッグがある生活」、「SDGsが注目されつつある今、私は何ができる?準備したい“マイバッグ”&環境のコト」など、 エコに関する記事が増えてきており、多くの関心が寄せられています。

若者代表の一人としてインタビューした早稲田大学文化構想学部 大須賀亮祐さんは同じように話しています。

「今までの環境問題における指標は“CO2の排出量を削減する”のように巨大なスケールで語られてきました。それがSDGsでは、目標を簡潔にわかりやすい言葉で示すことによって、誰もが日常で意識できる指標になりました」

やはり、環境問題を自分の生活における様々な振る舞いに置き換えることができるようになったことが、SDGsが若者に受け入れられた要因であると言えそうです。

一方で、環境先進国であるスウェーデンのように、「環境に良いものなら多少高くても買う」というところまでは、まだ至っていないようにも感じられます。しかしながら、商品を包装なしで購入すると割引があるといったように自分にもメリットがある場合、エコバッグを取り入れるなど、自分たちでも簡単にできること、自分ごととして捉えられる取り組みには興味を持ち始めています。企業としては、そこを押さえた上でSDGsの取り組みをアピールしていくことがポイントとなるといえるでしょう。

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また、企業がSDGsの取り組みを行う場合、既存のビジネスをいかにSDGsを踏まえた事業へ転換していくかを考える必要があります。それに対して若者は、SDGsを前提とした事業やプロジェクトをゼロから作り上げていくことができます。

大須賀さんによると、実際に持続可能な社会に向けての取り組みを日常に見出し、実践する団体も多く見られるそうです。その一つが『早稲田大学環境NPO 環境ロドリゲス』。新入生をサークルに勧誘するために配布するチラシが、毎年膨大な紙ごみの発生につながっていることに注目し、それらをリサイクル業者に買い取ってもらうというプロジェクトです。

廃棄処理されてしまう服からトートバッグを生産している『carutena』というブランドも、学生によって作られたもの。バッグの販売の他、サステナブル×ファッションに関する情報を日々発信しています。

以上のように、SDGsの観点に立つと、若者は大人以上に効果的なサービスを生み出す可能性を秘めています。SDGsの達成目標年でもある2030年には、今の若者たちが社会を支えるという大きな役割を担う。そんな若者たちの心を「今からつかんでおく」ことは、持続可能な社会づくりのための大きな推進力になるかもしれません。

本コラムはMERY LabがForbesJAPANに寄稿したものです。https://forbesjapan.com/articles/detail/37254

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