見出し画像

m.aboutがコロナ禍にあえてポップアップショップにチャレンジした理由

はじめまして。MERY社が運営する韓国ファッションECサイト「m.about(エムドットアバウト)」のチームリーダーをしている森です。
新型コロナの第5波が押し寄せる少し前の2021年6月23日〜29日。私たちは「m.about」のポップアップストアを、渋谷スペイン坂にあるD to C体験スペース「no-ma(ノーマ)」に出店しました。ECサイトを運営する私たちにとって、リアルなSHOPは必ずしも必要なものではありません。特にコロナ禍という特殊な状況において、対面での接客が必要となるポップアップを開催することに首をかしげる人もいるでしょう。
では、なぜm.aboutはポップアップを開催したのか? アドタイさんの取材では触れなかった私自身のパーソナルな想いを中心にまとめてみました。

流行りのスタイルが消滅した街で

長年ファッション雑誌の編集者をやっていた私にとって、街はトレンドの流れを探る場所。目に入る人々のファッション、メイク、バッグ、靴、ショッパーを何気なく見ていると、不思議と共通項が見つけられ「今、何が流行っているか?」が見えてきます。雑誌『nuts』や『Popteen』で編集長を務めていた頃は、月に2回は渋谷や原宿の街に立ち、道行く人を眺めるのが習慣でした。雑誌の編集を離れ4年ほど経った今でも、その時のクセは抜けず空いた時間があると街ゆく人をぼんやり眺めては、世の中の流れを感じ取っています。

そんな感じで街を眺め続けて20年ぐらいが経つのですが、ここ最近、大きな変化を感じています。街の中に「流行のスタイル」がない。

流行りのファッションアイテムはあります。2020年の夏でいえばZARAのフレアワンピースを、あっちで見かけ、こっちで見かけ、大ヒットしているんだなと思いました。ですが「今このスタイルが流行ってる」って思えるものは最近まったく見かけない。

画像1

弊社社長の大西が『CanCam』で仕掛けたような「エビOL、優OL、もえカジ」が街を席巻し、ちょっと目を引く女の子はこのどれかのカテゴリーに属してそうな雰囲気とか。『S Cawaii!』がSLYをフックアップして流行らせた大人ギャル。『Popteen』が益若つばさを中心に展開した姫ギャルスタイルなど、その時代に合ったビッグトレンドが生まれ、街がそのスタイルに染まっていくという現象がありました。私が『Popteen』時代に藤田ニコルをアイコンに当時は原宿の小さなSHOPだったBUBBLESと組んで仕掛けた、韓国っぽいカラフルスタイルもそのひとつでした。

ですが、今は「これが流行っている」というスタイルがない。街を何かで形容しようとするなら「インスタっぽい」なんです。インスタの中で見られるのは、いくつかのファッションスタイルの集合体。韓国系、古着系、坂道系、地雷系、量産型etc…。系統には分けられるものの、これが今の流行っていうわけじゃなく、女の子たちがそれぞれ自分たちが気に入ったものを選択していくようなイメージ。雑誌には新しいトレンドを生み出す力があると私は思っていますが、今はそんな新しい提案よりも既存のスタイルから自分に合うものを選択する方が心地良い。そんな時代の空気感を街から感じます。

SNSではじまりECで終わる世界への一抹のさびしさ

基本的なトレンドや新しい情報はSNSを通じて得られ、私たちが運営する「m.about」をはじめとしたECサイトでお洋服を購入する。売る立場の私たちは「韓国ファッション」にエンゲージメントがあるユーザーをターゲティングして広告を流せば、それなりにお洋服は売れていく。すべてを最適化して無駄のないオペレーションを構築していけば、その分コストを削減することができるので、他社よりも有利な価格で商品を販売できる。それはそれでビジネスとしては大事なことである一方、なんだか寂しいなと思ってしまったのが今回ポップアップを開催した大きな理由です。

では、何を寂しいと思ってしまったのか? それは新しいお洋服を手にとって、新しい自分と出会える予感にワクワクしているお客様の顔を見ることができないこと。

自分たちのサービスが、誰に対して、どんな価値を提供しているのか? それを自分たちの目で確かめることで、新しい方向性を見出していけるかもしれない。そんなことを思いながらポップアップの開催を計画しました。

コロナ禍という特殊な状況。1週間とはいえリアルショップを展開することに社内から反対の声があったのも事実です。ですので、ポップアップの開催はギリギリ1週間前までコロナの感染状況を見たうえで決めました。逆を言えば準備にかけることのできた時間は1週間しかありませんでした。

ポップアップのコンセプトは、推しのいる5人の女の子

コンセプトを決めたのも開催の2週間ぐらい前。「推しのいる5人の女の子たちが住んでいるアパート」という切り口でショップ名は「m.apartment」としました。それぞれの推しカラーに染まった部屋をイメージして空間を作り込み、カラー別にお洋服を展開。プロップスタイリストに依頼する時間もなかったので、チームメンバーの中にオシャレな部屋作りが好きな子がいたので作り込みは任せました。

画像3

架空のアパートですが、それぞれのキャラクターを設定。

BTSのテテが好きなソヨンの推しカラーは「ブルー」。トレンドに敏感で、友達に自分が見つけた可愛いものをプレゼントすることもしばしば。

画像5

画像10

ITZYのチェリョンが好きなウメコの推しカラーは「イエロー」。ヘアメイクアーティストのアシスタントをしていて、コスメなど美容アイテム大好き。

画像2

画像13

TWICEのサナが好きなメグの推しカラーは「ラベンダー」。インスタのフォロワーが多くて、韓国セレクトのD2Cショップを運営している。

iOS の画像

画像11

BLACKPINKのジスが好きなエリーの推しカラーは「ピンク」。アート系の専門学校に通っていて、大好きなものに囲まれながら自分らしく生きてる。

iOS の画像 (1)

画像9

Red Velvetのジョイが好きなリンの推しカラーは「グリーン」。旅好きのイラストレーターで世界中の可愛いものを描き出すのがライフワーク。

画像7


画像13

このようなかたちで人物のイメージをチーム内で共有することで、ショップ内の世界観を作り込んでいきました。

韓国から洋服が届かないピンチを乗りこえて

準備期間が短いことで起きるイレギュラーも多く、韓国に手配したショップに置くためのお洋服が前日になっても届かない、というアクシデントもありました。ポップアップショップなのに、主役となるお洋服がない…。聞けば税関が混み合っていて、いつもなら届くはずのタイミングなのに空港で止まっていることが判明。運送会社さんにご協力いただき、最短で届けていただきましたが、商品が届いたのは実はショップオープンの数時間前。大急ぎで段ボールからお洋服を取り出し、タグをつけて、ラックにかけていきました。ショップがオープンしてからもお洋服にアイロンをかけていたのは、ここだけの秘密です笑。

準備に苦労した反面、ショップをオープンしてからは想定していたよりも多くのお客様に来ていただき売上も好調でした。「お手ごろな値段だけど、オシャレで可愛く他の人とかぶりにくい」というのが特徴なので、チームメンバーのアイデアでショップの外からもお洋服の値段がわかるようにラックを設置。ポップアップのイメージビジュアルもハングルにして「韓国の商品を扱っているショップ」というのをわかりやすく表現しました。

画像9

冒頭でも触れたとおり世の中の空気感として「提案型」ではなく「寄り添い型」の方が成功するだろう、という仮説でしたので不特定多数をターゲットにはせず「韓国カルチャー好き」もしくは「韓国に興味がある方」がわかれば良い。その代わり「年齢の壁はもうけない」というロジックでショップでの体験を作っていったことが、何の知見もない私たちでもポップアップが成功した大きな要因だったと思います。

「韓国好き」でつながったお客様との楽しい時間

そして何より良かったのは「好き」を共有したお客様と「韓国カルチャー」や「推し」の話で盛り上がれたこと。

接客の最初にm.aboutが韓国ブランドの商品を取り扱っているECであることを伝え、カラー別になっている理由を「推し」がいる5人の女の子をイメージしていることを話す。ショップのコンセプトを簡単に説明しているだけなんですが、「推し」というキーワードからお客様との会話が広がっていく。とくに『プデュ2(PRODUCE 101 SEASON2)※韓国で社会現象となったサバイバル式デビュー番組の日本版』が終わったばかりだったこともあり「誰を応援していました?」みたいなところで会話が盛り上がり、お客様というよりは韓国好きでつながった友人と話すような感覚で接客することができました。

そのおかげで素人接客にもかかわらず入店された方の購入率は25%で、ご来店された4人に1人が商品を購入していってくださいました。ご購入された方の中には何度も韓国に行ったことのある方もいらっしゃれば、まだ韓国に行ったことはないが、『プデュ2』や韓国ドラマ、K-POPなどを通じて韓国に興味を持ちはじめたばかりの方などさまざまでした。m.aboutは韓国ファッション初心者の方でも取り入れやすい、シンプルで着やすい服も多いので、年齢に関係なく韓国ファッションを楽しむことができる。そのせいか若いコだけじゃなく、幅広い年齢層の方にご購入いただけたのも嬉しかったです。

韓国メイクばっちりで着こなす韓国ファッションも素敵ですが、私はより多くの方に気軽に、楽しく、韓国カルチャーを楽しんでほしい。韓国の服がもたらす「自分革命」を体験してほしい、という想いがあります。

「好き」から広がる世界への冒険は毎日を楽しくしてくれます。そんな冒険のはじまりの場所に私たちが開催したポップアップ「m.apartment」があるとしたら、こんなに嬉しいことはない。そしていつか、韓国のどこかやK-POPアイドルのライブなどで知らず知らずのうちの再会を果たしている。そのときにお互いが着ているお洋服が「m.about」のものだったら? そんな日がいつか来ることを願って。

m.aboutでは韓国のファッションに加えてネイルやコスメも人気です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?